4つのいすにひとりずつ小さなくまちゃんがおすわりしました。でも、あとからきた、ちゃいくまちゃんのいすが ありません。美しい色彩、仕草や表情が愛らしい絵本。
───来日されることを聞いたときから、お会いできるのをとても楽しみにしていました。『おすわりくまちゃん』は発売してすぐに日本の子どもたちの友達のような存在になりましたが、そのことはご存知でしたか?
デイヴィッド・ウォーカー(以下:ウォーカー):はい。岩崎書店の方から伺って、すごくびっくりしました。ぼくの住んでいるノースカロライナ州から日本まで、約6000マイル離れているのですが、そんなに離れた国の子どもたちが喜んで読んでくれていることは、作者としてワクワクしています。
───「絵がとてもかわいい!」と、子どもたちだけでなく日本のお母さんたちも「くまちゃんシリーズ」のファンが多いんですよ。ウォーカーさんは絵を担当されていますが、くまちゃんたちの姿や性格などはウォーカーさんが考えられたんですか?
ウォーカー:はじめて『おすわりくまちゃん』の原稿を受け取ったとき、文章の中に「ふわふわくまちゃん」や「きいろいくまちゃん」というように、くまちゃんたちの見た目に関する簡単な説明はありました。ぼくの仕事は、その部分を参考にしながら、くまちゃんたちにひとりひとりのパーソナリティーを決めていくことなんです。
───「ちゃいくまちゃん」と「きいろいくまちゃん」は名前に色が入っていますが、水色に白い水玉模様の「ぽちぽちくまちゃん」やピンクいろの「ふわふわくまちゃん」などとてもカラフルですよね。パステルの色合いが、くまちゃんたちのフワフワな質感を表現していて、ピッタリだと思うのですが、画材や絵のタッチなどにもやはりこだわりがあるのでしょうか?
ウォーカー:このシリーズの最初の作品は『おすわりくまちゃん』なのですが、『おすわりくまちゃん』に出てくるのは、くまちゃんたちと、イスというとてもシンプルな設定なんです。なので、あえて背景を描かず、バックの色も薄いパステル調にして、くまちゃんたちの仕草が引き立つように工夫しました。くまちゃんの色をパステルで描いたのも、作品から感じられる優しい雰囲気を、絵を見ただけで伝わるようにしたかったからです。
───ウォーカーさんがおっしゃるように、くまちゃんたちの仕草がとってもかわいくて、小さい子を見ているような気持ちになりました。ウォーカーさんはくまちゃんを描くとき、なにか参考にされているんですか?
ウォーカー:くまちゃんたちのジェスチャーは、ぼくの子どもたちが小さかったころの動きを参考にして描いています。彼らはすでに10代後半になっているのですが、幼いころの姿や行動は今でも僕の描くキャラクターすべてに影響を与えているんですよ。 「くまちゃんシリーズ」を読んだ子どもたちがくまちゃんたちの仕草を見て、「ぼくみたい!」「私みたい!」と共感してくれるようなキャラクターを生み出すことが、子どもたちに愛される絵本に大切なことだと思っていましたから…。
さあ、おふろの時間。ちゃいくまちゃんがみんなをよんでる。でもね、「おふろはきらい!」くまちゃんたちは、にげちゃった。ちゃいくまちゃんは、どうするのかな?
───『おふろのくまちゃん』では、くまちゃんたちが泥んこになったり、ほこりだらけになったり、汗をびっしょりかいていますよね。あの姿は、小さな子ならどれかに必ず当てはまるエピソードだなって思いました。「くまちゃんシリーズ」の中で、ウォーカーさんが一番共感しているキャラクター、自分に近いと思うキャラクターは誰ですか?
ウォーカー:ぼくは「ちゃいくまちゃん」ですね。それ以外のくまちゃんたちは、ぼくの子どもたちに似ているかな…と思います。
───「ちゃいくまちゃん」は他のくまちゃんより体も大きく、お兄さんのような、パパやママの様な、他のくまちゃんたちとは違う立場なのかな…と思ったのですが、ウォーカーさんはちゃいくまちゃんにどのようなイメージを持って描いていますか?
ウォーカー:この本が愛されている理由のひとつには、ちゃいくまちゃんの存在が大きいと思います。金柿さんがおっしゃるように、ちゃいくまちゃんは他のくまちゃんと少し違いますよね。でも、年上の兄妹なのか、親なのか、先生なのか…どの立場にいるのかを、ぼくもシャーリーも絵本の中で明確にしていないんです。そうするとで、読者が色んな想像をする楽しみが生まれてきます。子どもたちはちゃいくまちゃんを身近にいる色んな人物に当てはめて、自由に楽しむことができるんです。
ベッドが5つ並んでいるよ。もうねるじかん。でも、ちゃいくまちゃんは眠れません・・・。 風の音かな、なんだかこわい! さあ、くまちゃんたちは、どうしたのでしょう?
───『おやすみくまちゃん』では、誰よりも先にちゃいくまちゃんがベッドに入っていますよね。パパやママなら、子どもたちより先になることはないかなと…。ちゃいくまちゃんに対して、色んな憶測が絵本ナビ内でも飛び交っていました (笑)。
ウォーカー:でも、4人の子どもを持つパパやママなら、子どもたちよりも先に寝ちゃうかもしれませんよ…(笑)。
───たしかに…。うーん、ちゃいくまちゃんがますます気になってきました(笑)。
シリーズ40万部突破の大人気絵本『おすわりくまちゃん』の、4つめのおはなしができました!4人の小さいくまちゃん、小麦粉いれて牛乳まぜて、だれのケーキを作るのかな? プレゼントには赤いリボンをかけたよ。ケーキがやけたらクリームをぬって、ろうそくたてて…さあ、たのしいたんじょうび会の始まりです。パステルカラーに愛らしいくまちゃんたちに、思わずにっこりしてしまう絵本です。
───最新作『おめでとうくまちゃん』は、そんなちゃいくまちゃんのお誕生日をお祝いするために、4人のくまちゃんたちがサプライズパーティーを開くストーリー。ウォーカーさんは、文章が来たら、どのように作品作りを行うのでしょうか?
ウォーカー:シャーリーから原稿が届いたら、ぼくはいつも、くまちゃんたちがページの中でどのように動くか、どんな表情をしているか、構図を考えていきます。シャーリーもある程度、枠組みを作ってくれるけれど、文章で書かれている以上におはなしの世界に色を加えていくのがぼくの仕事だと思っています。シリーズも4作になると、今度はどんなところをチャレンジしようか、考えるのが大変した。
───ウォーカーさんのアイディアがプラスされた場面などはありますか?
ウォーカー:ちゃいくまちゃんのプレゼントに、みんなでボールを包もうとしている場面があるのですが、あの部分はぼくが絵を描いてエピソードが追加された部分ですね
───みんなで一生懸命ラッピングをする姿が、とってもカワイイ場面ですね!
ウォーカー:丸いものって包むのが大変なんですよね。その場面を加えることで、くまちゃんたちのちゃいくまちゃんに対する思いがより伝わって、ストーリーがさらに面白くなったと思います。
───『おめでとうくまちゃん』の最後の場面で、くまちゃんたちが遊んでいるゲームがすごく気になったのですが、これはアメリカの子どもたちの遊びなんですか?
ウォーカー:これは「Pin the tail on the donky」という遊びで、目隠しした人がロバのお尻に尻尾をくっつけることができるか…を競うゲームなんです。これを描いたとき、日本の子どもたちは分かるのか…とかなり不安を感じたのですが、ぼくも子どもの頃、誕生会でやったことがある、アメリカの定番ゲームだったので、描きたいと思いました。
───日本にも「ふくわらい」や「スイカ割り」など似ているゲームがあるので、子どもたちもイメージできると思います。
ウォーカー:日本にも似ているゲームがあるんですね! それを聞いて安心しました。