新刊
きみとぼく

きみとぼく(文溪堂)

谷口智則さん最新刊 全然違う「きみ」と「ぼく」の物語

絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  絵本と児童文学の橋渡しに!鈴木出版の幼年童話「おはなしのくに」編集者インタビュー

濱野:6月末には新作『スプーン王子のぼうけん』が発売になります。文章は「おてつだいねこ」シリーズ(金の星社)や「黒ねこサンゴロウ」シリーズ(偕成社)など幼年童話から児童文学まで幅広い作品を発表している竹下文子さん。絵は『おひるねけん』(教育画劇)や『トイレたんけんたい』(フレーベル館)のこばようこさんにお願いしました。

スプーン王子のぼうけん
作:竹下 文子
絵:こばようこ
出版社:鈴木出版

森の妖精たちから、誕生のお祝いに特別なスプーンを贈られた王子さま。食いしん坊で、知りたがりやな男の子に育った王子さまは何不自由なく暮らしていましたが、ある日、悪い竜を退治するため、お城を飛び出して、冒険の旅に出ます。森に一歩足を踏み入れると、不気味な音がしてきて…。男の子も女の子も楽しめる愉快なお話です。

───発売前の作品を読ませていただいたのですが、ある国の王子を主人公に、妖精や竜が登場する王道のファンタジーでありながら、王子様がちょっと食いしん坊だったり、竜はちょっと間が抜けていたりと、すごく子どもの目線や感覚に近い作品だと感じました。

濱野:西洋に、赤ちゃんに銀のスプーンをプレゼントするという風習があって、実際に竹下さんもお子さんが生まれたときのお祝いに銀のスプーンを頂いたそうなんです。それが心の中に種として残っていて、このおはなしが生まれたのだそうです。

───「おはなしのくに」シリーズの中では長めのおはなしですが、途中で退屈することが全くなく、次の章が気になる作品でした。どこの国か分からないところも作品の雰囲気を盛り上げてくれるのですが、スプーン王子の冒険に出かける装備が、鎧の代わりにレインコートを着て、兜の代わりにバケツを逆さまにかぶって、槍の代わりにスキーのストックを持つという、子どもたちの身近にある物を使っているところなど、読者である子どもたちが楽しさを感じるのでは、と思いました。

濱野:この作品は、生まれてからずっと愛され大事にされ、すくすくと育った王子さまが主人公。「竜を退治する」と勇ましく出かけますが、物語は最初から最後まであたたかい愛情とユーモアに包まれています。小さいお子さんが最初に出会うファンタジー作品としてもオススメだと思います。

───今後、発売する予定の作品についても少し教えていただけますか?

濱野:11月には「おはなしのくに」シリーズの中でも人気の高い「ダンゴムシだんごろう」の3冊目が発売されます。タイトルは『ダンゴムシだんごろう3 〜たびのおわり〜』。

───たびのおわり?!…ということは、ついにだんごろうはダンゴムシの天国にたどりつくのでしょうか…?

濱野:それはぜひ読んで確認していただければと思います。でも、完結編では今まで以上の冒険がだんごろうに迫ってくる予定です。

───それは、気になります!「ダンゴムシだんごろう」シリーズは、いろんな虫が登場するのが男の子にはたまらない作品だと思いました。山村浩二さんの描くキャラクターが虫の特徴をよくとらえていて、虫眼鏡で見たら本当に着物姿なのかもしれない…と思ってしまいますよね。

ダンゴムシだんごろう
ダンゴムシだんごろうの試し読みができます!
作:みおちづる
絵:山村 浩二
出版社:鈴木出版

だんごろうは、ダンゴムシ。貧しい村で、大勢の家族と暮らしています。ある日だんごろうは、いつも腹をすかせている家族のために、ダンゴムシ天国を探す旅に出ることを決意。だんごろうの行く手には、さまざまな事件が…。だんごろうの大活躍が愉快な旅日記!

ダンゴムシだんごろう(2)〜たびの空〜
ダンゴムシだんごろう(2)〜たびの空〜の試し読みができます!
作:みおちづる
絵:山村 浩二
出版社:鈴木出版

ダンゴムシのだんごろうは貧しい家族におなかいっぱい食べさせるために、おいしい腐れ落ち葉がたくさんあるというダンゴムシ天国を目指して旅に出ました…。道中、だんごろうがいろいろな事件に巻き込まれる旅日記の続編です。 旅路をカタツムリにたすけてもらった道すがらに起こるハプニングがドキドキの「しんせつなカタツムリのまき」 こんがらがったミミズを助けて、揉め事に巻き込まれてしまう「こんがらがったミミズのまき」 と、二つのお話が収録されています。

濱野:山村さんの挿し絵は、構図が素晴らしくて、ページをめくるたびに、だんごろうが旅をしている様子をしっかりと感じることができるんです。例えば、おっかさんと別れてダンゴムシ天国を目指す場面。だんごろうとおっかさんというシンプルな挿し絵なのですが、落ち葉が1枚舞っているんです。この落ち葉によって作品の奥行きがグッとでて、別れの寂しさやだんごろうの世界の広さを感じることができる…さすがアニメーション作家さんだなと感じました。


だんごろうはおっかさんと別れて、ダンゴムシ天国へ向かいます。

───シリーズを楽しみにしている読者としては、3巻で終わってしまうのが、少しさみしい気持ちもありますが、だんごろうの最後の旅を楽しみたいと思います。ところで、文章を書かれた、みおちづるさんはどんな方なのでしょうか。

濱野:作者のみおちづるさんは「少女海賊ユーリ」シリーズ(童心社)など、長編ファンタジーを得意とする作家さんなので、本当はもっとたくさんだんごろうの冒険を見ていたいのですが、幼年童話が小学校低学年を対象にしているジャンルなので、あまり長いシリーズにしてしまうと、どんどん読者が成長してしまうんです。1年生で出会った子が、3年生で最終話を読んで、次の中学年向けの読み物に進んでもらえたら理想ですね。

波賀:「ダンゴムシだんごろう」は「おはなしのくに」が目指す、冒険ものを十二分に味わえる作品です。義理人情の股旅物なので、お父さんにも好きになってもらえると思います。もちろん、虫好きな男の子にもオススメです。

───ここまでいろいろおはなしを伺ってきましたが、「おはなしのくに」シリーズとして15冊もラインナップがあると、「どのおはなしが子どもに合っているのか迷ってしまう…」という親御さんも多いと思うんです。でも、そんな悩みを解消する素敵なアイテムも用意されていますよね。

濱野:今の自分が何を読みたいのか、2択の質問に答えていくと、自分にぴったりの読み物に出会える、フローチャートを作りました。

波賀:「おはなしのくに」シリーズといっても、1冊1冊は別のおはなしですから、シリーズとして順番に読んでもらうように薦めるよりも、どこからでも何か手にとってみようと思うきっかけになればと思って作りました。


楽しい質問に答えていくと、自分に合ったお話にたどり着けるフローチャート!シリーズ全ての本に挟み込みでついています。

───私は『こぶたのぶうくん』になりました。小沢正さんの文章に、井上洋介さんの絵は『目をさませトラゴロウ』 (理論社)を楽しんだ世代としては、絶対に面白いという確信がありました。

こぶたのぶうくん
作:小沢正
絵:井上 洋介
出版社:鈴木出版

元気いっぱいのこぶたのぶうくんのお話を2編収録。「おふろのきらいなぶうくん」ある日、お風呂の嫌いなぶうくんは、はだかんぼのままお風呂場から逃げ出しました。すると、セッケンやタオルがおいかけてきます。どんどこどんどこ逃げた先は、なんとおおかみの家。ぶうくんはいったいどうなるのでしょう?「ぶうくんのおばけたいじ」ぶうくんの家のそばにある森に、おばけが出るといううわさが立ちました。みんなこわくて近寄れません。そこでぶうくんとうさぎくんは、おばけたいじに出かけました。そこで出会ったおばけとは…?

濱野:チャートで「こぶたのぶうくん」シリーズに行く子は意外と多かったです。「こぶたのぶうくん」も復刊ものなのですが、復刊とは思えないくらい、ぶうくんのキャラクターが確立されていて、人気も高いです。

───このチャートで面白い本と出会った子が、次に「今日はいつもと違う回答を選んで、新しい作品を読んでみよう」と言って本と出会うこと自体を楽しんでくれるのも良いですよね。おはなしを伺って、「おはなしのくに」シリーズが絵本と児童文学を繋ぐ、とても大切な思いを持って作られていることに感動しました。 あらためて、幼年童話の魅力はどんなところにあるとお考えか、お聞かせいただけるでしょうか。

濱野:現実の世界では、戦争や災害や事故など不条理なこともたくさん起きますが、それでもなお、子どもの本の世界って、「善」を目指していると思うんです。作り手である大人たちが、「人間としてこうありたい」「こんな世の中であってほしい」という願いや希望を、本の中に込めて子どもたちに届けようとしている。子どもたちをあたたかで安心な世界で育てたいという思いで、本を作っている。だから子どもの本は、とても愛情に満ちたアートです。幼年童話は、特にそんな要素がたっぷりつまっています。この世界にはこんな面白いおはなしがある!本ってなんだかあたたかくて面白いなあと、どんな子でも思えるのが幼年童話の魅力です。

波賀:ぼくは、現実ではなかなかできないことが、おはなしの中でできることが幼年童話の魅力だと思います。子どもでも普段生活している中で、辛いことや悲しいことってあると思うんです。でも、好きな物語の世界に入れば、一瞬現実を忘れてワクワクできる。そういう世界があることが子どもにとって「救い」になってくれたら嬉しいですね。

───最後に、絵本ナビのユーザーの方に「おはなしのくに」シリーズをどのように楽しんでいただきたいか、メッセージをお願いします。

濱野:お子さんに絵本だけでなく、長いおはなしの本を読んであげてください。小学校に入ると、毎日とても忙しくなりますし、もう自分で読めるからと、今までは寝る前に絵本を読んでいた家庭でも読み聞かせをしなくなってしまうことがあります。それは、とてももったいない! 「耳でおはなしを聴く」というのと「自分で読む」というのはけっこう違いますから。耳で聴いて、たくさん自分の中で想像して…、それはこの時期にしかできない本当に宝物のような親子の思い出になります。そのうち「自分で読むから、もう読まなくていいよ」と言われるときが来ますから、それまで親子で物語を共有する時間を楽しんでいただけたらと思います。そのスタートとして、幼年童話はぴったりの内容なので、ぜひご活用ください!

波賀:1冊の本の中にはものすごいワクワク感が入っているということを、どの本でもいいから読んで感じ取ってほしいです。ワクワク感を子どもたちに伝えることのできる幼年童話をこれからもたくさん作っていきたいと思っています。

───ありがとうございました。もうすぐ夏休み。一学期を頑張った子どもたちに、ぜひ幼年童話をお勧めしたいと思います。

インタビュー: 秋山朋恵(絵本ナビ編集部)
文・構成: 木村春子(絵本ナビライター)
撮影:所靖子

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作品紹介

スプーン王子のぼうけん
作:竹下 文子
絵:こばようこ
出版社:鈴木出版
ねこのたからさがし
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作:さえぐさ ひろこ
絵:はた こうしろう
出版社:鈴木出版
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作:西本 鶏介
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作:舟崎 克彦
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ふしぎなトラのトランク
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作:風木 一人
絵:斎藤 雨梟
出版社:鈴木出版
こぶたのぶうくん
作:小沢正
絵:井上 洋介
出版社:鈴木出版
こぶたのぶうくんと しりとり
作:小沢正
絵:井上 洋介
出版社:鈴木出版
ダンゴムシだんごろう
ダンゴムシだんごろうの試し読みができます!
作:みおちづる
絵:山村 浩二
出版社:鈴木出版
ダンゴムシだんごろう(2)〜たびの空〜
ダンゴムシだんごろう(2)〜たびの空〜の試し読みができます!
作:みおちづる
絵:山村 浩二
出版社:鈴木出版
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絵:荒井 良二
出版社:鈴木出版
えんぴつ太郎のぼうけん
作:佐藤 さとる
絵:岡本 順
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