●「子どもに読んであげてほしい…」思いのこもったデザインのヒミツ
───『おしゃべりさん』『もういっかい おしゃべりさん』『しつもん おしゃべりさん』そして、『おかしな おかしな おかしのはなし』。これはどれも新聞連載を1冊の絵本にまとめたものですよね。
はい。連載当初は本にするおはなしはどこの出版社さんからもなかったのですが、私の中では「本にしてもらうぞ!」と思っていたので、原画も絵本に対応できるよう大きく描いていました(笑)。そして、最初の『おしゃべりさん』のときにアドバイスをいただいたリーブルさんで出版してもらうことになりました。
───リーブルさんで出版するときに新聞とは変えた部分や、追加したものなどはありますか?
───たしかに、少し長めのおはなしも、2段にして絵を大きく載せていますね。
絵はできる限り大きくしたいと思って、そこから本の形を考えたら2段にするという方法に行きつきました。出版社の方は「文字が小さすぎるのでは?」と心配されましたが、新聞連載のときの文字の方が小さいけれど、子どもはしっかり読んでくれていたのを知っているので、「大丈夫です」と通しました。それよりも文字を大きくして絵を小さくする方が子どもは読まないと思っていたんです。
───それはさいとうさんが、学童や手作りえほんサークルで長年子どもたちを見てきた経験でしょうか?
そうですね。絵本は好きだけど、読み物が嫌いという子はとても多いんですよ。それが悩みというお母さんも多いと思います。読み物が嫌いな子どもたちにとって、何が苦手かと聞くと、文字ばかりで絵が少ないことだと言うんですよね。いくら字を大きくして、読みやすくしても、絵が少ないと子どもは苦手な勉強や教科書を思い出して、敬遠してしまいます。
───1ページで終わる作品なら、忙しいお母さんたちも読んであげようって思いやすいですし、1話読んだら、続きも絶対読みたくなりますよね。実際に、絵本として出版したときの読者の反応はいかがでしたか?
「読み物は読まないのですが『おしゃべりさん』はすごくお気に入りの作品で読みます」という感想をたくさんいただきました。中には、「1日1話のはずが、30話一気に読まされました…」という感想もあって(笑)。ずっと、絵本から読み物に移行する橋渡しになるものがあれば…と思っていたので、『おしゃべりさん』がその役割をしてくれたようで嬉しく思います。
───さいとうさんご自身は息子さんに読み物の読み聞かせをしたりしていますか?
今は中学生になっているので、もう読まなくなりました。それまでは毎日欠かさず続けてきました。息子にせがまれて佐藤さとるさんの「コロボックルシリーズ」や「リンの谷のローワンシリーズ」(作: エミリー・ロッダ 訳: さくま ゆみこ、絵:佐竹 美保、出版社:あすなろ書房)など長編児童文学を読み聞かせていました。そのおかげか、うちの子は物語を読むのはすごく好きですね。
───長いおはなしでも、毎日少しずつ読むことで、物語の世界をイメージする力や、続きを想像する力が付きそうですね。そのためには「おしゃべりさん」のような短いおはなしを読んで、親子で慣れていくのも大切だと感じました。「おしゃべりさん」シリーズ、まだまだ続きそうですが、新たな連載のおはなしなどは来ているのでしょうか?
───ファンとしては是非、3作目を一番に描いてほしいです!(笑)。
最後に、絵本ナビユーザーへ「おしゃべりさん」シリーズをこんな風に楽しんでほしいというメッセージをお願いします。
絵本ナビさんを利用される方は子育て中の方が多いと思いますが、絵本が好きな方や子育てが終わられて、読み聞かせの活動をされている方も多いと思います。「おしゃべりさん」はちょっと長めのおはなしですが、子どもが楽しみやすいように絵を大きくして作っていますし、1日1話読み聞かせをするのにもちょうどいい長さだと思います。今は、色んな世代の方が絵本を楽しまれていますし、子どもと絵本を繋げてくれる人も多くいると思うので、あまり対象年齢を気にせず、楽しんでもらえたら嬉しいです。
───ありがとうございました!!