●子どもたちが大はしゃぎ!? 撮影秘話を大公開。
───『にっぽんの図鑑』のときも、撮影や取材など1冊ができあがるまでに、色々な現場に立ち会っていることを伺いましたが、今回の『せかいの図鑑』でも、やはり取材へ行かれたのでしょうか?
もちろん! 今までの「プレNEO」シリーズ同様、できるだけ現場に行ったり、料理を作ったりして、体験した感動も読者の方に伝わる様にしています。……ただ、今回はなかなか外国へは行くことができず……。そのかわり、海外の撮影取材で活躍されているカメラマンにご協力いただきました。そのカメラマンの方は海外で暮らす方たちと交流して写真を撮ることを基本としているので、撮影した土地の文化や風習、子どもたちの様子を聞いて、本のなかにも反映しました。彼はこの本の発売時にはもう西アフリカに発ちましたよ。
───海外で暮らす子どもたちの様子がとても生き生きとリラックスして見えるのは、カメラマンさんが現地の子どもたちと交流できているからなんですね。
海外の写真はカメラマンさんやフォトエージェンシーから借りることが多かったですが、国内で撮影したものは、なるべく取材に同行して、現場の様子を見てきました。
───特に印象に残っている撮影を教えていただけますか。

子どもたちと一緒の撮影は、どれも印象深いですね。特に布1枚をまとって服にする「ぬの1まいで すてきな ふく」の撮影では、実際に現地の人々が使っている布を取り寄せたのですが、5m近い長さの布に子どもたちが大興奮! せっかくアイロンをかけてきれいにした布の上を飛びこえて遊んでいて、私もスタイリストさんもみんな、「飛ばないで〜〜」とヒヤヒヤしました。
───布1枚が、ターバンやスカート、さらにズボンにまでなってしまうなんて…とても不思議でした。
同じページに「ワンピースのまきかた」を紹介しているので、ぜひ、お家で試してもらいたいですね。それと、各章の扉の撮影も印象に残っていますね。
───気球に乗っている子どもたちのページですね。その写真を見せていただいているのですが……撮影で使った気球って意外と大きいんですね!

大きいビニールボールを上から吊るして、撮影しています。照明の位置によって、ボールに光が反射してしまうので、それを抑えるためにスプレーをかけたり、人形の位置を調整したり、何度も撮影しました。
───各章の扉も印象的ですが、見返しの民族衣装を着ている子どもたちの人形もかわいいです!
この人形は10cmくらいの小さなものなのです。民族衣装は、大阪の国立民俗博物館の学芸員の方に、現地の人がお祭りのときなどに着て目にすることのできる衣装を選んでもらい、その中から特に華やかで、印象に残る衣装を厳選しました。

───スウェーデンやメキシコなど普段見ることの少ない民族衣装を見ることができるのも嬉しいですね。後ろの見返しでは、日本で暮らす海外の子どもたちの絵が載っています。どの絵もとても上手ですが、どことなくモチーフや色使いに海外の雰囲気を感じました。

実際に子どもたちの言葉や絵で、好きな食べ物や得意なもの、動物について紹介されると、その子の国のことをもっと知りたいと思いますよね。子どもたちに日本以外の国のことを身近に感じてほしいという思いを込めたページでもあります
───スタジオでの撮影以外にも、外に出かけた撮影もあったのでしょうか?

もちろん、ありました。印象深いのは、2章「せかいからようこそ」のペンギンの場面。あの水族館のペンギンの撮影は、夏に撮りました。暑い中屋外で、ペンギンがいい方向を向いてくれるまでずっと待っていて……とても大変でした。でも、水族館で暮らすペンギンがどのように日本に来て暮らしているか、とても分かりやすく説明できていると思います。
───今回、青山さんの特にオススメのページを3つ、教えていただけますでしょうか。
そうですね……やはり大変だったけれど、面白いページができたと思うのは「せかいはっけん! えちず」のページですね。このイラストですが、イラストレーターさんに1つずつ約300点ほど描いてもらい、それをデザインで別に書いた絵地図の上に載せているんです。なので、大きさや全体のバランスの調整などをひとつひとつしなければならず、確認作業にとても苦労しました。
───地図に載っているイラストがひとつひとつが個別の絵だなんて、編集作業がとても大変ですね……。ほかにオススメのページは?

色々ありますが、国によって満月の模様がウサギに見えたり、ロバに見えたりと、見えるものが変わって伝わっていることを紹介する「なにに みえる?」のページは家族で月の表面が何に見えるか話し合うことができるので、オススメです。それと、ケニアで動物を助ける仕事をしている神戸俊平さん、車いすで世界139カ国を旅した経験を生かして、世界のバリアフリー事情について執筆や講演活動を行っている、木島英登さんを紹介したコラム「ほんとうに あった おはなし」もオススメです。
───日本人の活躍といえば、私たちになじみ深い「しあわせなら てを たたこう」という歌が、木村利人さんがフィリピンの子どもたちから聞いて、日本語の歌詞をつけたという話も感動しました。
しかも、元の歌はスペインの民謡ですからね。スペイン、フィリピン、日本が1つの歌によってつながっているというのも、とても面白いと思います。車いすで世界を回られた木島さんのはなしを載せたのは、『せかいの図鑑』で世界の多様性を知ってほしいという思いと共に、色々なバリアフリーについても気づいてもらえたらとの思いを込めています。このおはなしページ以外にも、あるページには、車いすに乗っている子どもが、ほかの子どもたちと一緒にサッカーをやっている場面を載せたりしました。
世界を知ることが、日本と外国という捉え方以外に、いろいろな意味を感じてもらって、いろんな人種、いろんな言語、いろんな環境で暮らしている人々がいることを知ってもらい、そこからさらに子どもたちの世界が豊かに広がっていってもらえたら嬉しいと思います。
───『せかいの図鑑』について、たくさんおはなしを聞くことができました。ありがとうございます。最後に絵本ナビのユーザーに向けてメッセージをお願いします。

今まで、日本は島国だから民族や言語などの多様性はそれほどないと思っていた方も多いと思います。でも、改めて身の回りを見てみると、実はいろんな国の人が身近に暮らしていたり、外国のものが日本に入ってきていることを実感することができます。『せかいの図鑑』を通して、少しでも世界のことに興味を持ってくれたら嬉しいです。これから学ぶ英語に対しても、きっとやる気が起こるし、もしかしたら、世界の歴史にも関心が高まるかもしれませんね。
───ありがとうございました。
●編集後記

今回、おはなしを伺った青山明子さんが編集した『たんけん絵本 東京駅』(作画: 濱 美由紀)は、赤レンガ駅舎の全景がパノラマで載っていたり、東京駅の全番線とJR電車が見開きで並んでいたり、東京駅ならではの33のヒミツが随所に隠されていたり。東京駅のことが全てつまった大充実の絵本です。大人から子どもまで、全国の鉄道ファンイチオシ。もちろん、東京駅の本屋さんにも売っています! 春休みのお出かけ、東京駅の「たんけん」にどうぞ。

インタビュー・文: 木村春子
撮影:所靖子