とってもかわいい表紙が目をひく赤ちゃん絵本の人気シリーズ「あかちゃんとのあそびえほん」(講談社)。4作目の『まてまてさん』の発売を記念して、ご夫婦でいらっしゃる、作者のおーなり由子さんと、はたこうしろうさんにお話を伺いました。おーなりさんにとって、このシリーズは初めての赤ちゃん絵本なのだそう。作品にこめられた思いや、制作のエピソードなど、じっくりお話しくださいました。 お子さんが小さい頃、おふたりがよく遊びにいらしていたというご自宅近くの公園と、ご自宅にもお邪魔して、とても楽しいインタビューになりました。お楽しみください。
はたさん・おーなりさんの子育て体験から生まれたのが、「あかちゃんとのあそびえほん」シリーズです。絵本であかちゃんとのスキンシップの楽しさを伝えたい、という願いのもとに作られました。 一作めの『ぶう ぶう ぶう』は音の絵本。 二作めは親子で「ぎゅう」をする『ぎゅう ぎゅう ぎゅう』。 三作めは、おててあそびの『こちょこちょさん』。 最新刊は、あんよ(靴下さん)が主役の『まてまてさん』。あかちゃんを追いかける「まてまてさん」。どこまでも「まてまてまてまて〜」と追いかけます。やがて追いかけられていたあかちゃんが……、あれあれ? こんどは「まてまてさん」を追いかけて……。
───前作の『こちょこちょさん』は、赤ちゃんとこちょこちょして遊ぶ「手」の絵本でしたが、『まてまてさん』は「まてまて」と追いかけっこするかわいい「足」が出てきますね。どの作品も親子の触れ合いがテーマになっていますが、このシリーズが生まれたきっかけから教えていただけますか?
おーなり:実は、シリーズのうち、最初にラフの文ができたのは、3作目の『こちょこちょさん』なんです。
自分の息子が、こちょこちょが好きで(笑)。こちょこちょすると逃げるのに、そのあと自分から「こちょこちょしてー」って来たり、追いかけるだけで、大喜びするのが、おもしろいなあって思ってました。本を開いたらいっしょに遊ぶきっかけになるような、道具みたいな絵本があったら、と思ったんです。
はたさん・おーなりさんの子育て体験から生まれたのが、「あかちゃんとのあそびえほん」シリーズです。親とあかちゃんのスキンシップの楽しさと大切さを伝えたいという願いがこめられています。 一作めの『ぶう ぶう ぶう』は擬音と息をふきかけるくりかえしのおもしろさをテーマに、二作めは、「ぎゅう」というタイトルどおり、おかあさんとの「ぎゅう」や、だいすきなぬいぐるみへの「ぎゅう」、おふとんへの「ぎゅう」などあかちゃんの身近なものとの「ぎゅう」の楽しさを描いています。待望の三作めは、おててをテーマにこちょこちょしながら、あかちゃんと遊ぶ絵本です。
───実際にお子さんとふとんでこちょこちょして遊んでいて思いつかれたのでしょうか?
おーなり:枕元でラフができた絵本です。いつも枕元にノートが置いてあって、思いついたことを書くようにしているんですが、息子が赤ちゃんの頃、ふとんでいろいろ遊んだあと、一緒にお昼寝をしていたときに、「くるよ、くるよ、こちょこちょさん」という、最初のフレーズが出てきて。息子が寝ている横で「こちょこちょさん」の文ができました。
───もともとは文章だけのラフだったんでしょうか。
おーなり:文字だけのラフができたとき、この本は夫(はたさん)といっしょに作るのも良いなあと思って、夫に見せて、「絵を描く?」と相談していたんですが、答えを聞く前に、いつのまにか編集さんに送っていたんです。夫から、出版することになったと言われて、「えぇ?送ったん?」と、びっくりしました(笑)。
───はたさんはラフを見てすぐ本にしたいと思われたんですね。
はた:そうですね。どこの出版社がいいかなと思って、以前から講談社で「ショコラちゃん」シリーズを担当してくれている編集さんに送りました。気に入ってくれるんじゃないかと。
───出版が決まってから、本ができるまではどのように進行していったのですか?
はた:最初は、ぼくと嫁さん(おーなりさん)ふたりで相談しながらラフの絵を描きます。そのあとは編集さんと3人で打ち合わせをしながら進めていくんです。 ざっくりしたラフスケッチをもとに3人で話し合うんですが、話し合いで構成が大きく変わることもあります。その場で描きなおして、変えたものを編集さんが 読み聞かせしてくれるんです。そうすると客観的に見られるので、また気になるところを変更して・・・・・・という繰り返しで作っていくんです。
───その場で描き直すんですか?! 例えばどんなところを変更されたんでしょうか?
はた:アングルを単純にしたり、赤ちゃんの姿勢とか表情。少し描き直すとガラッと印象が変わるんです。
細 かい部分では、おかあさんの服装ですね。首まわりや、袖の余裕のあり方とか。おかあさんのイメージって、すごく難しいんですよ。襟ぐりが詰まりすぎても空きすぎてもだめだし。普段着 なのでおしゃれすぎないように調整もしました。
───そうなんですね! はたさんが描くおかあさんはいつもおしゃれで、女性を描くのもお手のものというイメージがありました。
はた:なかなかひとりでは難しかったです。女性二人から(編集者も女性)的確な指示をしてもらえるから、ありが たかったです。
───赤ちゃん絵本なので、赤ちゃんにも分かりやすいように背景の描き込みがほぼないですが、ページの背景にどう色をつけるかということも悩まれたとか?
おーなり:そ うですね。毎回、背景に色を入れているページは、そのシーンでふわっと気持ちが明るくなるようなイメージなんです。でも、『まてまてさん』は床のグリーンが、ずっ と同じ位置で見えているので、急に色が入ると、ちょっと気になる。なので、おふとんのシーンと、もう一場面だけに色を使おうということになりました。
はた:構成の部分から細かなことまで、話し合いで絵本としての精度が上がっていく感覚がありました。このシリーズはそうやって作っていった部分が大きいですね。打ち合わせの中で、あ、ここも変えよう、じゃあここも、と、どんどん良くなっていくんです。
───その場で決まったことをすぐに直して反映していくのは、大変ではありませんでしたか?
はた:いや、そのほうが楽でした。目の前で直していくと、集中して、ひとつの作品の世界の中に気持ちが入ったままで作業していられるので、ぼくとしてはやりやすいんです。1回の打ち合わせでも、たくさんのことが決まるので、制作の進みも早いです。
おーなり:普通は絵を描く人と文章の人の間に編集の方が入って、行ったり来たりしながら進めていくんだと思うんですが、夫婦なので、遠慮なく思ったことを言って(笑)。絵が変わったら、その場で文も変えたり。そこに、客観的にバランスをとってくれる編集さんがいるので、どんどん進化していって。なんというか、いつも、ライブ感のある打ち合わせ現場です(笑)。