●保育雑誌で連載していた経験を生かして、子どもたちを生き生きと描きました。
───先ほど、制作にかかわるお話を伺いましたが、内容をコミックにすることは、最初から決まっていたのですか?
伊賀:幼稚園・保育園のお子さんがいるような若い方から読んでほしいと思ったので、難しいことを書いてある文章よりもビジュアルで伝えた方が分かりやすいと、かなり早い段階からマンガで解説することは決まっていました。そして、編集者の方のアドバイスもあって、イラストレーターの福井さんにお願いすることにしたんです。
───福井さんへは、どのような形でマンガの依頼が行ったのでしょうか?
福井: Q&Aの文章をいただいて、それを見開きのマンガで説明していきました。
───え? Q&Aの文章だけだったのですか? 設定とか、要望とかは何かあったのですか?
福井:いいえ、なにも(笑)。マンガを描くときは、色弱に関する資料を読みながら、Q&Aには書かれていないことも、マンガの中で知ってもらえるようにしようと工夫しながら描きました。あまり深刻な展開は入れず、明るく感じてもらえるよう気をつけました。

イラストレーターの福井若恵さん
───岡部さんと伊賀さんは、マンガを見てどう感じましたか?
伊賀:完成した段階で見せていただいたのですが、ぼくたちが伝えたいと思っていた重要なところを、バシッととらえてくださっていて、しかも、ちゃんとオチまでついていて、本当にすごいなと感心しました。
岡部:子どもが犬や人の顔の色を黄緑色に塗ってしまったとき、お母さんが「あれ? また!」っていうんですよ。これが本当にあるあるで……(笑)。お母さんの心情をよく捉えているなあと思いました。

福井:以前、育児雑誌で連載をしていたことがあったので、そのときのことを思い出しながら、わが子のことを心配するお母さんを描きました。ただ、不安を抱えているだけですと、内容がとても重くなってしまうので、なるべくポジティブに考えて対応できるお母さん像を描こうと思いました。
───質問をしているお母さんたちもアドバイスを受けて、いい方向に変えていこうという前向きなお母さんで、読んでいてとても爽快に感じました。それと、回答者のみなさん、岡部さんと伊賀さんが登場していますが、そっくりに描かれていますね(笑)。
福井:ありがとうございます。

───質問に対していろいろな方からアドバイスを受けている感じがして、すごく伝わりやすかったです。
岡部:ぼく自身、色弱で苦労したことや大変だったことは今までにたくさんあります。でも、それをどう乗り越えるかは、色弱者自身のバイタリティとアイディア次第だと思うんです。ここに出てきている回答は、あくまでも、ぼくらカラーユニバーサルデザイン機構のスタッフが体験したことをベースにしていますが、あくまでも一例でしかありません。お子さんの性格や色弱のタイプによって、対応は大きく変わってい
●チャレンジしようとする気持ちでなく、やりたいことをやってみることが大事です。
───岡部さんは色弱でありながら、普段は東京慈恵医科大学で解剖学の教鞭を取られていますよね。ご自身はいつ、色弱であることを認識されたのですか?
岡部:私は3歳のときに、母親が気づいたんです。きっかけはお菓子のパッケージ。本に出てきたお菓子のエピソードはまさに僕のことなんです。
───そのとき、お母さんの対応はどうでしたか?
岡部:母の父、つまり私の祖父が色弱だったので、「出た!」と思ったそうです。ただ、私の祖父は母が小さいころに亡くなっていて、母から見た色弱のお父さんは非常に美化されていたようで、「お父さんのようになるなら心配ない」と思ったと言っていました。
───とてもおおらかに考えられていたんですね。
岡部:ただ、学校では担任と理科、図工の先生に配慮してほしいとお願いをしてくれました。学校や友達など周りの協力もあり、学校生活はあまり苦労することなく過ごすことができたんです。
───伊賀さんは、色弱でありながら、一番色に詳しい「1級カラーコーディネーター」の資格をお持ちですよね。
伊賀:はい。Q7にも出ていますが、「色弱」だと就けない職業がいくつかあります。例えば警察官、自衛官、消防士、パイロット、航海士、電車運転士などです。ぼく自身が色弱だと気づいたのは高校生くらいですが、当時、いろいろな情報を見ると悲観的なことばかりが書かれていました。でも、色の捉え方って本当に人それぞれで、ぼくと岡部さんも違うし、一般的な人の中にだってそれぞれ見え方に差があるはずなんです。カラーコーディネーターを取るときに勉強する色彩学では、個人差のある色を言葉で説明する学問だった。それが面白かったのと、さっき話した色弱だと就けない職業の中でも、カラーコーディネーターは最たるものだと思ったので、チャレンジしてみようと思ったんです。

───すごいチャレンジ精神ですね。
伊賀:ぼくらの団体の中には、船の免許を持っている人もいますし、カメラマンもいます。岡部さんはお医者さんですしね。「色弱の人はなれない」と言われている職業に就いている人が周りにいるので、あまりチャレンジしている感覚はないんです(笑)。
岡部:ぼくも、チャレンジしている感覚はないですね。私たちは「普通の人」なんですよ。ただ、目だけが違うだけなんです。
伊賀:つまり、色弱と分かったときに、自分の将来は閉ざされたと思考停止しないで、やりたいと思ったことはチャレンジしてみることが大事です。Q7の回答にもありますが、現在ではほとんどの職業で制限はなくなっていますし、お子さんが大きくなったときに、制限がなくなる職業もきっとあると思いますから。
───お話を伺って、色弱について新しい発見がたくさんあったように思います。ありがとうございました。最後に、絵本ナビユーザーに向けてメッセージをお願いします。
岡部:『色弱の子どもが分かる本』は色弱の子が抱えている困難と、そこで求められている配慮を紹介する本です。まずは色弱の子とお母さん、お父さん、そして子どもたちの教育に当たっている先生たちに読んでいただきたいと思います。また、普通に社会生活をしている人であれば、どんな人でも色弱の人に接しているはずです。そのとき、思わぬ齟齬が生まれないように、今まで色弱について知らなかったという人にもぜひ手に取っていただきたいです。
福井:絵本ナビにいらっしゃる方は、お子さんに絵本を読んであげるママさんが多いと思います。一緒に絵本を楽しんでいるわが子と色の見え方が違うという場合、驚きと共に不安を感じることも多いでしょう。そのときに、この本が少しでも不安の解消に役立つことができれば嬉しいです。
伊賀:出来上がった本を読んだとき、「自分が子どものころに、この本があればよかった」と心から思いました。色弱で悩んでいる人、その人のご両親、親戚、周りの方々、できるだけ多くの方にこの本を知ってほしいと思います。
───ありがとうございました。









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