●手を動かし続けた1年間
<原画を見せていただきました!>
───たくさんのどんぐり、圧巻です!とてもあたたかい質感の絵ですが、画材は何を使われているのですか?
さきほどパネルシアターの話が出ましたが、紙はPペーパーという、パネルシアターで使う摩擦で布につく紙を使っています。ずっとおはなし会で使っていた画材なので、使いやすかったのが理由です。水彩と色鉛筆とペンを使って色をつけています。「語りかけ絵本」シリーズ3冊は、この方法で絵を描いています。
───あたたかい雰囲気だけれど存在感のあるリアルなどんぐり。たくさんの種類が並んでいるとうっとりしますね。帽子を取った部分もとても美しいです。
『どんぐり』のおはなしが決まってから、この展開だと、リアルなどんぐりの雰囲気が必要だね、ということになりました。たくさんのどんぐりを拾って描いたり、落ちてくるのを待って積もるか試したり……。積み重なった様子は紙粘土でも作りました。
當田:打ち合わせをするたび、どんぐりの数が増えていきましたね(笑)。
1年間手を動かし続けてとにかくどんぐりを描きました。どんぐりの質感が伝わるか、お母さんと赤ちゃんにもずいぶん見てもらったんですよ。 Pペーパーでは、どんぐりの「つるつる」の魅力が出せないので、最後まで紙に描くかPペーパーに描くか悩んだのですが、紙に描いたものとPペーパーのものを両方見てもらったお母さんたちが、「こっちのほうがあったかくて、私はこっちが好きです」とPぺーパーのほうを選んでくれたので、覚悟が決まりました。 最後の場面は山盛りになるので、自然に見えるか設計図を描いて確認しながら制作しています。
───山盛りどんぐりは、どんぐりのパーツが重なっているので、原画は分厚くて立体感がありますね!迫力!
絵本を見て、「ずいぶん立体的に見えますね」と言われるんですが、いやいや、原画も本当に立体的なんです(笑)。
貼るのはボンドで、楊枝を使って貼りつけているんですが、今回、思い出したことがあるんです。子育て中に、「シャドーボックス」が流行っていて、箱の中に同じ絵の紙を重ねてシリコンで立体感を出すのにはまっていた時期があったんです。その技術がここに活きました(笑)。
───『いちご』の食べた断面も瑞々しくてとてもおいしそうです。『ひよこ』のたまごの色合いなどは、『どんぐり』のリアルな雰囲気とはまた違って、ふんわりと優しい雰囲気ですね。
『いちご』の食べる場面は、はじめはヘタだけが残るように描いていたのですが、ヘタだけだとさびしくて、少し果肉を残すことで画面が楽しくなりました。食べた断面を描くのに何度もいちごを買って食べて観察しては描きなおし、今の断面になるまで何度も作り直したんですよ。
『ひよこ』は水をたくさん含ませて、たくさん描いて試しました。ひよこを描くのはとても楽しい作業でした。
それと比べてどんぐりはなんと苦しかったこと(笑)。
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