●「語りかけ」はどうしていいの?
───「語りかけ絵本」シリーズを読んで驚いたのが、文章を口に出すと、自然に誰かの目を見てしゃべりかけようとしてしまうこと。言葉につられて反応を見たくなるんですね。
それは大成功です。そうあってほしいです。語りかけ絵本は、相手が何も発さなくても自然に対話になるようになっています。絵本は本当は子どもたちのものなんですけれど、子どもたちのことをもっと好きになってもらう、お父さんお母さんのものでもあると、私は思っているんです。
───子どもたちの反応を見て、大人が「ああ、かわいい!」と思うためにあるんですね。
それがすごく大事です。たぶんそういうところに私の作品づくりのテーマがあるように思います。
───0歳からの語りかけが大事だというのは、そこにも理由があるのでしょうか。
はい。たとえば、お母さんだったら、お母さんになるのに積み重ねが必要だと思うんです。産んだらみんなお母さんになると思われて母性を求められます。もちろんそういう部分もあるけれど、やっぱり初めからではなくて、「なっていく」んだと思うんです。愛着を持つことから始まるんですよね。赤ちゃんが自分のことを見てくれたり、微笑み返してくれたらうれしいし、かわいい!と思う。その気持ちがお母さんをお母さんにしていくんです。だからお母さんも子どもが0歳のときからそういう環境を築くのが大事なんだと思っています。
それから赤ちゃんというのは、生まれて2歳くらいまでの間に自分はここにいていいんだ、愛されているなと無意識に体で受け止められると、今度は他人のことを見ることができるようになると言われています。
赤ちゃんのうちにそうやって人として準備をすることが必要なんですね。
───愛情を感じるための大事な時期なんですね。
目に見えないことですが、そういった大事なものを築いていくのが1歳までだと思うので、やっぱりいっぱい言葉をかけて、語りかけてあげてほしいんです。 誰かと誰かが一緒にいて何かを発見するツール。それが語りかけなのかもしれません。
───なるほど。
よくお話するんですが、赤ちゃんのお母さんも、最近「対面読み」をする方が多いです。面と向かって絵本を読むと、目が合いやすいという利点はありますが、赤ちゃんはお母さんをじーっと見るから「うちの子、絵本見ないんです!」となってしまう。お母さんは真剣ですから焦ってしまうのですが、「お母さん、これでいいの。絵本が必要なわけじゃなくて、赤ちゃんがお母さんのことをニコニコ見ている。それが1番大事なんだよ」と言いたいです。
───今の言葉でほっとするパパママがいるのでは。
きっといっぱいいますよね。これでいいんだと思って赤ちゃんとお昼寝でもしてくれれば、その日はいい1日じゃないですか。
───そうですね! ありがとうございます。最後に、絵本ナビユーザーへメッセージをお願いします。
お母さんと赤ちゃんでも、お父さんと赤ちゃんでも、極端にいえば大人同士でも。絵本が真ん中にあることで、触れ合うことを楽しんでほしいです。
子育てって時間じゃないと思います。一緒に過ごせる時間が少なくてもその時間が濃縮されていればいいので、苦しくならないでほしいんです。子育ての時間はあっという間です。その時間は楽しく過ぎたほうがいいし、後できっといい思い出になるので、子どもと一緒に楽しもうと思ってください。私は絵本を描いているので、それが絵本でできたらいいなと思うけれど、絵本じゃなくても、例えば歌でもなんでも好きなものを共有できるのがすごく良いことだと思います。ぜひ、語りかけを楽しんでみてください。
───ありがとうございました!
●こがようこさん 『語りかけ絵本 どんぐり』よみきかせ動画公開中!
絵本を読み終わったあとに、「おおきい いちごを見せるよ〜」といって本の背にある大きないちごを見せると、子どもたちは大喜びするんだそうです。かわいい!
それぞれの巻で、最後に大きな絵を見せてあげたいですね。
インタビュー・文:掛川晶子(絵本ナビ編集部)