●こたえのもとは、順序立てて考え直して問題をひもといていく仏教の教え
───今のお話で、私にも素朴な疑問が浮かんできました。「おしえて!コロ和尚 こどものどうとく」シリーズの釈さんのこたえのもととなった「仏教」とは、お釈迦さまが言い残したことや、実践していたことなんでしょうか?
釈:仏教は本当によくできていて、2500年以上にわたって鍛錬されてきた、「人類の知恵の結晶」みたいなところがあるんです。その、人間の「心」と「体」のメカニズムに基づいて構築された部分は、別に仏教を信じていなくても活用できるんですよ。特に「心と体のしくみ」に関するところは。それはお釈迦様も、仏教を信仰しなくてもよいけれども、自分の教えに耳を傾けて実践していけと、おっしゃっているんです。そして、最終的には「仏教も捨てろ」と言う。仏教は、苦しみの川を渡るいかだなのだから、川を渡ったら不要だと。
───信仰を捨ててしまっていいんですか!?
───なんとなくわかります! すごい特技を持っている人や自己PRがうまい人が、現実世界だけでなく、SNSの世界でも力を発揮しているのを見ると、「すごいなぁ。自分はできないな」と思ってしまいますし、できない自分が嫌になることもあります。
───つまり仏教の教えは、苦しみを乗り越えるために、考えの方向を少し変えてみたら? といった、人生の先輩からのアドバイスみたいなものなんですね。たしかに、現代人のなやみを解決する助けになってくれそうです。
釈: 考えの方向、視点を変えるという意味では、『みんなのルールが守れる⼦になる!』に出てくる、「だれにもめいわくかけないなら、ルールはまもらなくてもいい?」のこたえが、わかりやすいと思います。
■答えの出しにくい道徳の問題に、「ほとけの教え」で回答します! 本シリーズは、仏教の教えを元に、子どもの道徳観を育む絵本です。本書は、ゆうひ公園に駆け込んでくる子どもたちが普段疑問に思う、世の中のルールやしきたりなどについて、犬のコロ和尚がやさしく答えてくれます。コロ和尚の言葉は、監修者の釈徹宗僧侶の言葉です。仏教の教えをやさしく、子どもたちでもわかるように諭し、物事の本質について、親子で一緒に考える本です。
───「ボール遊びは危ないから禁止」なら、「人がいなければやってもいい」になるんじゃないの?という、とても子どもらしいなやみですね。
───子どもにとって、「小さい子がいたら危ない」は、園や学校の生活の中でも出てくる問題なので、そこまでは考えが至ると思いますが、さらに近所の家のことや事故に遭うことまでは、なかなか考えられないと思います。そういう意味で、いろんな視点を持つことや、視点が広がるようなこたえだなと感じました。
釈:そうなんですよ。私が子どもに返すこたえは、「その子の時間を延ばす」というイメージなんですね。
───考える時間を長く取る、みたいなことですか?
───なるほど。今、自分が公園にいるこの瞬間だけではなくて、自分がいないときの時間や、別の日のことも、考えてみようということですね。
───子どもが「大人だったらそう言うと思った」と言われないようなこたえ、ということですね。
───男の子たちの表情も、「そうだったのか」とびっくりしているように見えますね。
釈:だから、「そりゃあそうかな」「こんな考えかたもあるのかな」というふうに、意外と違和感なく受け止めてもらえそうなところが、この本の良さだと思います。
次のページでは、仏教の教えを、子どもにも受け入れやすくしてくれた、絵本の大切なキャラクターの誕生秘話に迫ります!