
絵本作家・長田真作が、祖父・りゅういちさんから聞いた実話に基づく作品。 りゅういちさんは1945年7月1日から2日にかけて呉で空襲に遭い、友人を失います。 8月には広島に入市しますが、そこで見たものは、誰にも語ることがありませんでした。

新しい世代がつなげてくれた
今年(2025年)は「戦後80年」ということで、出版界でも多くの関連本が刊行されています。
それは新書であったり人文系の書籍に限ったわけでもなく、
長田真作さんのこの『赤い日 じいちゃんの見た戦争』のように
絵本でもあの戦争を振り返る作品が出版されたりしています。
長田さんは1989年生まれですから、もちろん先の太平洋戦争のことは知らない世代です。
その戦争を、そして長田さんの出身地である広島・呉市を襲った空襲を経験したのは、
副題にあるように長田さんの祖父です。
あの戦争を体験した世代から、すでに次の、さらに次の世代になっていることに
少し驚きすら感じますが、
そんな若い世代がちゃんと祖父の話を聞き、それを記憶し、こうして絵を描き、文を綴る。
こういう若い人がいることを心強く思います。
長田さんの祖父は病気で入院していた頃、まだ少年だった長田さんに、
「お前が聞かんかったら、話すつもりはなかったんじゃがのう」と言いつつ、
軍港都市であった呉を襲った空襲での悲惨な体験を話し始めます。
おそらく、日本全国であの戦争での話を語ることなく亡くなっていった多くの無名の人たちがいたでしょう。
そういった語られなかった声も含め、もっとあの時代の話に耳を澄ませるべきだと、
この絵本は教えてくれています。 (夏の雨さん 70代以上・パパ )
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