
1922年に新潟で生まれた完司少年は、外国へのあこがれから満州で働くことを選びます。しかし、楽しかった満州でのくらしは、召集令状によって終わりをつげました。釜山から出発し、戦地であるグアムへ行くことになったのです。到着直後の攻撃で左足を失ったあと、米軍の上陸により、完司さんはジャングルの中でひとり生きていかなければなりませんでした。 食料をなんとかして手に入れ、切りっぱなしの足を川や海で洗い、這いずるようにして移動する生活がはじまりました。持ち前のポジティブさと聡明さを生かし、ジャングルの中で生き抜いていく姿は、まるで冒険記のようです。
そんなサバイバル生活やその後の捕虜生活のことを、楽しかったこともあったと、ひょうひょうと語る完司さん。でも、戦争に行って帰ってくるまでの時間は自分にとって「この世にない時代」だったといい、最後にふと、こうもらします。 「戦争は、あの若い、いちばんいい時期を奪ってしまったのですよ。今ほしいものがあるとしたら、若さです。あの体力と機敏さがあったら、あれもこれもするのに、と思いますよ。」 好むと好まざるとにかかわらず、不条理にみながまきこまれる。そんな戦争の時代を生き抜いた、ひとりの青年のお話です。

すべての子どもに読んでほしい。
苔の取材に行ったお宅に立派なシダがありました。
そこにいらっしゃった高齢の男性に、
「シダがお好きなんですか?」と聞くと、
「シダに命を救われたから」と話し始めます。
第二次世界大戦中、
一兵卒としてグアムに連れていかれた完司さんが目にし、
体験したことが、
漫画を交えながら読みやすい文章で書かれています。
何もわからないまま戦場に送り込まれた一市民が
戦場でどのような状況に追い込まれたのか。
太平洋戦争を歴史として学んだあとに、
戦争は、市民をこんなふうに巻き込んでいくってことを、
将来を担う子どもたちに、
知っておいてほしいです。
戦争文学には、
大人でも読み進めるのがつらい残酷な描写がつきものですが、
この本には、
そこまで残酷な表現はないので、
戦争文学の読み始めにおすすめです。
高学年向け。 (Tamiさん 40代・ママ 男の子11歳)
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