三びきのやぎ、名前はどれも「がらがらどん」。 山へ草を食べに行く途中、谷川が流れているので、小さなやぎから順番に橋を渡ることにしましたが、橋の下には恐ろしい化け物の「トロル」がいます。 やぎが橋を渡ろうとすると、「ひとのみにしてやろう」とおそいかかりますが……。
本作を語る上でまず外せないのは、化け物「トロル」の恐ろしさです。巨大な顔にはぐりぐりと大きな目が光り、天狗より長く太い鼻がそびえたっています。ぽっかりと空けた口にはするどい牙が見え、毛の生えた大きな手がこちらに向かってくる……! 赤茶色と黒がベースになった色合いもまた恐ろしく、目をそむけたり泣き出してしまうお子さんも多いことでしょう。 そんな恐ろしい化け物を迎え撃ったのは、小さなやぎたちの機転と、大きなやぎの強さと勇敢さ。まるで親子が力を合わせて、大きな困難に打ち勝ったように思いませんか? さわやかな草場で三びきが仲良く草を食べるラストシーンが、その絆を一層深めてくれることでしょう。
そして、1965年に翻訳出版された本作では、古典の翻訳絵本ならではの表現も楽しむことができます。 例えば 「あるとき、やまの くさばで ふとろうと、やまへ のぼっていきました」 という一文。 この後も「やまへ ふとりに いくことろです」という表現が出てきて、「食べにいく」という意味だというのはわかりますが、これを敢えて「ふとりにいく」と表現するその直接的な手法に、古典作品の力を感じます。他にも「古典作品ならでは」と感じる表現を、ぜひ探してみて下さいね。
チョキン、パチン、ストン。 はなしは おしまい。
(洪愛舜 編集者・ライター)
山の草をたべて太ろうとする3匹のヤギと、谷川でまちうけるトロル(おに)との対決の物語。物語の構成、リズム、さらに北欧の自然を見事に再現したブラウンの絵、完璧な昔話絵本です。
【金柿パパ】 「もういっかい!」が止まらないおはなし。出会った頃はまったく理解不能だったけど、楽しいとかドキドキとかって理屈じゃないんだなってわかります。難しく考えずに親も一緒に楽しんじゃいましょう!
絵本の力を知った本
20年以上前だが、息子が2〜3歳のときに、何度も何度も読んでと持ってきた絵本。結局何回読んだのだろうか?今となっては分からないが…
なぜ、それほど息子をひきつけたのか、20年、さまざまな昔話を子どもたちに語る経験をつんで、やっと分かってきた気がする。
人生への肯定感、困難を乗り越える勇気、力強く生きることへの憧れ、など、この昔話の根底にあるメッセージが、日々成長しようとしている子どもの心にマッチしていたのだということが。
それも、作者、訳者の、昔話の持つ力への理解、高い芸術性、なにより、子どもたちへの深い愛情があったからこそ、できたことだろう。
息子は、昔話の励ましのメッセージを、ちゃんと受け取っていたのだと思う。 (ピンピンさん 50代・その他の方 )
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