
「バラクラバってなに?」――そんなふうに思った人も多いのではないでしょうか。
「バラクラバ」とは、頭から顔、首までをすっぽりと覆う防寒具のこと。日本語では「目出し帽」とも呼ばれ、名前のとおり目だけが見える帽子です。表紙に描かれている赤とオレンジの横じまの帽子をかぶった子、見つけられますか?
この帽子をかぶっているのは、転入生のトミー。 ある日、四年生のドゥーガルとドゥミサニ(表紙中央のふたりの男の子)のクラスにやってきました。 最初に彼の姿を見た時、クラスのみんなはびっくり! なぜ彼は目出し帽をかぶっているのか? その理由が知りたくて、みんなの好奇心はもう止まりません。
「ねえ、どうしてそんなものかぶってるの?」 そう素直に聞ければいいのに、その一言がなかなか言えないドゥーガルとドゥミサニ。なんとか「バラクラバ」の中のトミーの顔を見るために、あれこれとユニークな作戦を練り始めます。 けれど、クラスの優等生チェリーズは言います。「それはトミーの個人的なことで、校長先生も許可しているんだから、首をつっこむべきじゃない」と。
チェリーズの言うことはもっとも。でも、やっぱり気になる。 トミーが「バラクラバ」をかぶる理由は何なのか? どうしても知りたくて、ページをめくる手が止まらなくなります。子どもたちにとっても、「どうして?」「いつ分かるの?」という気持ちがまるで謎解きのようで、夢中になって読み進めてしまうことでしょう。
しかし、彼らの好奇心は、ある事件をきっかけに一変します。なんと、五年生のいじめっ子たちがトミーに絡み、「バラクラバ」を無理やり脱がせようとしたのです。この出来事を目の当たりにした四年生たちの行動は、大きく変わります。知りたい気持ちはあっても、卑怯なやり方は許せない。いつの間にか、トミーの味方になっていた彼らは、トミーが納得する形で、自然にその答えを聞きたいと願うようになるのです。
そこでドゥーガルとドゥミサニが考えた最もユニークな作戦に注目です。この作戦ではクラスの中で目立たなかったクラスメイトたちにも思わぬ日の目が当たるのですが、はたしてトミーの気持ちを動かすことはできるのでしょうか?
南アフリカ共和国の作家、ジェニー・ロブソンが贈るこの物語では、純粋な好奇心から、やがて相手を尊重する深い思いやりへと変化していく子どもたちの心の動きを丁寧に描いています。「第71回青少年読書感想文全国コンクール」(2025年)の課題図書、小学校中学年の部にも選ばれている本書を通して、「知りたい気持ち」と「思いやる気持ち」のバランスについて考えてみませんか。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)

バラクラバ帽をかぶった転入生のトミーがやってきた。 なぜトミーは帽子をかぶってるの? あの帽子の下には何がかくされている? ぼくとドゥミサニのたいくつな日々は、「バラクラバ・ボーイ」によって大きく変わったんだ。

バラクラバは目だし帽のこと
この夏の第71回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」の「小学校中学年の部」に選ばれた1冊。
「課題図書」に選ばれた「選定理由」によると「転校生を迎える、という身近な体験を描いており、意外な転校生へのクラスの驚きから笑顔になるまでの構成、学校生活の面白さ、文化の違い、世界で共通する友情等を知ることができる。」とあります。
作者のジェニー・ロブソンさんは南アフリカ共和国で生まれて教師として働きながら執筆活動とした人だということですから、この物語に登場する小学4年生の子供たちの姿などは色濃く反映されているのでしょう。
だから、どの子も生き生きとしています。
ある日、小学4年のクラスに転校生がやってきます。
ところが、この子、何故かバラクラバをかぶって顔がわかりません。
実はこの本のタイトル『バラクラバ・ボーイ』にもある「バラクラバ」ってあまり馴染みがないので説明がいるかもしれません。
本では黒須高嶺さんのさし絵がついていますから、その形状はわかるかと思います。
文章で書くと、「頭から顔、首までを覆う防寒具」のことで、一般的には「目だし帽」と呼ばれるそうです。
なので、タイトルを日本語訳すれば「目だし帽少年」かな。
さすがに転校生が「目だし帽」をかぶったままだと、クラスの子供たちは大騒ぎします。帽子の中はどうなっているの、どうして学校はそれを認めているの、子供たちがその謎を解くためにあれやこれやしていきます。
そして、いつの間にこの謎の転校生とも仲良くなっていく物語。
自分たちの世界に入ってきた異なるものをどう受け止めるか、これはみんなで考えてみたい一冊です。 (夏の雨さん 70代以上・パパ )
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