
5歳から6歳までの「とっちゃん」のお話。みんなと一緒のことができない子供たち、そしてそんな子供時代を過ごした全ての大人たちに、マイペースなとっちゃんが教えてくれる大事なこと。

藤野千夜さんの児童文学
『団地のふたり』や『じい散歩』で人気が高まる藤野千夜さんが
2025年5月に出した『ばく、バカじゃないよ』は、ちょっとホロッとする児童文学。
藤野さんと児童文学の取り合わせは意外な感じでしたが、
そういえば藤野さんの文体はやさしいから、子供たちにもわかりやすいのではないだろうか。
物語の主人公は5歳の男の子、とっちゃん。
とっちゃんはお父さんとお母さんと弟の3歳のひーくんと暮らしています。
とっちゃんは家ではとっても強いのですが、外の世界とはなかなかなじめない、
そんな不器用な子供です。
お母さんは時にとっちゃんに怒ることもありますが、それでもやさしいお母さんだし、
お父さんもとっちゃんには甘い。
時々とっちゃんの家に来るおばあちゃんはいつも「とっちゃんは、かしこいね」とほめてくれます。
そんなとっちゃんですが、ある時幼稚園で「バカ」といわれてしまいます。
とっちゃんは幼稚園でもなかなか挨拶もできないし、なかなかみんなと遊ぶこともできないので、
そんなふうにいわれてしまうのです。
それで、とっちゃんはお母さんに「ぼく、バカなの?」と訊いてしまいます。
きっとお母さんはとっても悲しかったでしょう。
人を傷つける言葉は、その人だけでなく、その人を愛する周りの人たちも悲しくさせます。
おばあちゃんはそんなとっちゃんに「とっちゃんはかしこい」といいます。
そして、できない時には人に助けてもらえばいいと教えてあげます。
子供たちにも読んでもらいたい一冊です。 (夏の雨さん 70代以上・パパ )
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