
『風の歌を聴け』で鮮烈なデビューを果たした村上春樹は、『ノルウェイの森』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で青春小説の頂点に達した。その後、傾倒していった『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』などの怪奇な場面を描くダークファンタジーの世界とは何であったのかを徹底究明する。 新作『街とその不確かな壁』の第二部、三部では残虐な暴力性の見られないことに筆者は注目する。その印象は『1Q84』や『騎士団殺し』とも違っており、村上ワールドの変化が見られる。これから彼は何処へ向かおうとするのか、20年の時間を経て問い直す新たなる「村上春樹論」!
【目次】 序章 川本三郎の書評を読む 第一部 文学としての村上春樹 第一章 剽窃とスポンテニアス――村上春樹の方法 第二章 幻視から幻想世界へ ――転換点としての『ダンス・ダンス・ダンス』、『ねじまき鳥クロニクル』へ 第三章 『ノルウェイの森』の系譜 ――源流としての「街と、その不確かな壁」から『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 まで 第二部 エンターテインメントとしての村上春樹 第四章 ダークファンタジーとしての『ねじまき鳥クロニクル』 第五章 『海辺のカフカ』について 終章 結局、村上春樹とはどのような作家なのか ? 川上未映子、大いに粘る ? 源氏物語の作用 ? 文学は可能か 補論 『街とその不確かな壁』が明らかにしたこと ? 第一部 原点に戻る ? 第二部 「私」と通じる子易さん ? 第二部から三部 少年が語る作品の構造
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