忙しいお母さんと、まだ甘えたい年頃の女の子。すれ違ったり、反発したり、心を通わせたり…。
和菓子屋「はごろも堂」を切り盛りする結衣のかあさんは朝から晩まで大忙し。お店の目玉はふっくらした塩大福と豆大福。大なべで練ったあんこを、ゴムべらでボウルに移すかあさんの姿はたくましい!けれども、娘の結衣が学校から帰ってきて「ねぇ、かあさん」と声をかけても返事がないし、きらいなお風呂そうじは頼まれるし、夕飯も一人・・・。まだ二年生の結衣はさみしくて仕方がありません。寝る前に、学校の発表会でやることになった「しろぎつねのおんがえし」の民話を読んでいると、キツネに飲みこまれて体をのっとられてしまったおかみさんが出てきました。そのお話を読んだ後、お風呂そうじのことでかあさんにこわい顔でおこられた結衣は、本物のかあさんはきっとキツネに食べられてしまって、目の前のかあさんはキツネが化けているに違いないと思い込みます。そしてなんとかキツネのしっぽをつかもうとするのですが…。
物語と現実の間で揺れる子どもの心情がよく表されていて、ぐっとひきこまれます。大人でもそうなのですから、子ども達が読んだらもっとひきこまれて、結衣と同じようにかあさんがキツネなのではないかと、ハラハラすることでしょう。
お話を書かれたのは、子どもたちや大学生、お年寄りの方などさまざまな年齢の方と絵本を読みあい、大学でも絵本を介したコミュニケーションを研究されている児童文学作家の村中李衣さん。本作品も、村中さんならではの、子どもの心の動きや気持ちの揺れが丁寧に描かれ、読めば読むほど深みが増す作品です。さらに、藤原ヒロコさんのさし絵も魅力たっぷりで、とくに子ども達の表情やしぐさが生き生きと描かれ、結衣の気持ちが1つ1つ手に取るように伝わってきます。
さて、結衣とかあさんは、離れかけた心をどんな風に通い合わせるのでしょうか? その通わせ方には、ことばを超えた深い母子のつながりを感じます。同時に、かあさんがもつ大きな愛情に圧倒されてしまいました。
絵本から読みものへの架け橋となる低学年向けシリーズ「おはなしいちばん星」の第5弾。ぜひ親子で読んで、お子さんと感想を交流してみてほしい作品です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
和菓子屋を切り盛りしていそがしいかあさんと、結衣はゆっくりはなす時間もありません。 それどころか、今日は苦手な五右衛門風呂の掃除を言いつけられ、結衣はいやで仕方ありません。 手抜きでささっと仕上げたのですが、かあさんに見抜かれてしまいます。 こわーい怒り顔のかあさんを見ていると、かあさんの顔がキツネにみえました。 もしかしたら、学校でやる民話ミュージカルのように、かあさんはキツネに食べられたのかも、と思い始め……。 いそがしいかあさんと結衣とのすれちがいとふれあいを、あたたかく、ユーモラスに描いていた低学年向き読み物です。
わたしのお母さんもキツネかな?
結衣がお母さんに「ハイは1回」と言われるのは
わたしと同じかなと思いました。
結衣はたくさんおてつだいしててえらいなと思いました。
なぜかというと、わたしはおふろあらいしかしないからです。
結衣がつかっているおふろは、ごえもんぶろなので
ゆぶねのまわりにあたるとアチッとなってかわいそうでした。
でも、少しだけごえもんぶろに入ってみたいです。
結衣は甘美の子どもやくがやだといっていたけれど
わたしはコンコンダンスをおどってみたいです。
わたしのお母さんもキツネだったらどうしようと思いました。 (はっしゅぱぴーさん 30代・ママ )
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