小さなみいちゃんが、手に百円玉を二つにぎりしめ、道を歩いていきます。あれれ、ちょっと緊張しているみたい? そう。ママにおつかいを頼まれて牛乳を買いに行くのです。しかもひとりで!
「車に気を付けること、お釣りを忘れないこと」
ママとの約束を思い出しながら、みいちゃんが向かうのは、坂のてっぺんにあるお店。いつもママと公園に行く時に通る場所だけれど、自転車のベルに驚いたり、坂道で転んでお金を落としてしまったり、ドキドキとハプニングの連続です。やっとお店に着くと、今度は誰もいません。深く息を吸い込んでから、「ぎゅうにゅう くださあい」と叫ぶみいちゃんだけれども……!?
みいちゃんと一緒になって手に汗をかき、不安な気持ちになっているのは子どもも大人も一緒。だって、「はじめて」っていうのは、子ども時代に誰もが経験することですから。それはどんなに日常のささいなことであったとしても、子どもたちにとっては一大事。丁寧に描かれたみいちゃんの表情ひとつひとつから伝わってきます。いつもの道がこんなに遠く感じたり、優しいはずの大人がこんなに大きく見えてきたり、ほっとしてぽろりと涙がおっこってしまったり。
後に『あさえとちいさいいもうと』『いもうとのにゅういん』『とん ことり』などなど、名作を次々に生み出してきた筒井頼子さんと林明子さんの黄金コンビのはじめての作品が、この『はじめてのおつかい』なのだそう! 素朴な雰囲気はあるけれど、ダイナミックな構図や臨場感あふれる人物の動き、味わい深く隅々まで描かれたお店の小道具たち。何より愛情深く描かれるみいちゃんとそれを見守る大人たち。今見ても、長く読み継がれていく要素がたっぷり詰まっていることを感じずにはいられません。
今まで、どれだけの子どもたちがこの作品に励まされ、勇気をもらってきたのでしょう。そして、これからもきっと、ずっと。これこそ「小さな子どもたちの心に寄りそう絵本」なのでしょうね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
みいちゃんはママに頼まれて牛乳を買いに出かけます。自転車にベルを鳴らされてどきんとしたり、坂道で転んでしまったり、ひとりで歩く道は緊張の連続です。坂をあがると、お店につきました。お店にはだれもいません。みいちゃんは深呼吸をして、「ぎゅうにゅうください」と言いました。でも、小さな声しかでません。お店の人は、小さいみいちゃんには気がつかないみたい……。小さな女の子の心の動きを鮮やかに描いた絵本です。
どきどきのおつかい
みいちゃんはママに頼まれて牛乳を買いに出かけます。
それははじめてのおつかい。ちゃんと牛乳が買ってこられるかな…。
この本を読むと、どの子も本当に真剣に聞いてくれますね。
聞いているというよりも、自分も同じ気持ちになって絵本の中に入りこんでいるような感じです。
ひとりでおつかいに行くという、責任感とどきどき感と不安。そんな気持ちで、みいちゃんと一緒におつかいに出かけているのです。
読み手も母の気持ちで読んでしまうので、みいちゃんのがんばりに
ほろりときます。こうやってひとつずついろんな経験をして子どもは心も身体も大きくなっていくのですね。
この絵本、いまさらいうこともありませんが内容はもちろん素晴らしく、そして林明子さんの絵がそれをもっと素晴らしいものにしてくれています。みいちゃんの心情もよく表現されているし、周りの背景、その後のエピソードなども上手く描かれているので本当に楽しめる本だと思います。 (あいうえおさんぽさん 30代・ママ 男の子11歳、男の子8歳)
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