
モリスくんには好きなものがたくさんあります。ゆっくり朝ごはんを食べる日曜日も、学校がある月曜日も好き。絵を描いたり、パズルをしたり、歌をうたうのも好き。そしてこれまでで一番わくわくしたのは、リサイクル・コーナーでオレンジ色のドレスを見つけたこと!
その色は、大好きなトラやお日さまやママの髪の毛と同じ。靴と合わせて着て歩けば、シュッシュッシュッ、カサコソカサコソ、タンタタタンと聞こえてくる。なんて優しくて軽やかな音なのでしょう。ところがモリスくんがドレスを着ていくと、学校ではみんながひどくからかいます。
「こんなの、きちゃだめ! おとこでしょ!」
悲しい気持ちになったモリスくん。だけどやっぱり……。
この絵本は「ドレスを着るのが好きな男の子」の物語。けれどその内容は、「男の子」や「女の子」などの垣根をこえて、一人の繊細な感性をもつ主人公モリスくんの心情を丁寧に描きだしたもの。彼の目にうつっているのはどんな世界なのでしょう。色鮮やかに表現された絵を見れば、その喜びや感情が伝わってきます。
実際の教育の現場から生まれたというこの絵本。子どもの心を誠実に見つめてきた作者だからこそ、その真心のこもったあたたかい視線から希望を感じることができるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

<ジェンダー絵本? いいえ、これはモリスくんのおはなし>
「ドレスを着るのが好きな男の子のおはなし」と聞くと、簡単に「ジェンダー絵本」とくくられてしまうかもしれませんが、本書は一味違います。繊細な感性をもつ主人公、モリスくんの勇気と喜びを丁寧に描き出しており、「男の子」や「女の子」などの垣根を超えた「モリスくんらしさ」があふれる一冊です。
〈あらすじ〉 モリスくんは、すきなものがたくさんある男の子。 ときめく色や音があります。
ある日、モリスくんはすばらしいドレスをみつけました。 それは、だいすきなものを思い出すとびきりのオレンジいろ。 着てみると、なんだかやさしい音も聞こえてきます。
あんまり素敵だったので、ドレスを着て外に出てみたら、 みんなにひどくからかわれてしまって・・・・・・
主人公を「ドレスを着た男の子」だけにとどめず、 素晴らしい個性の持ち主として描き出した秀作。
●様々な賞にノミネート! 海外で高く評価されている作品
「ジェンダーやアイデンティティについて声高に伝えるのではなく、 主人公をドレスを着るのが好きなだけにとどまらない豊かな個性の持ち主として描き、 文学的にも楽しめる作品となっている。」(児童書センター機関誌書評抜粋)
「バルダチーノは、いじめや主人公の孤独を正直に語り、 マランファンはモリスの感情の起伏を繊細かつ豊かに描き出している。」 (パブリッシャーズ・ウィークリー書評抜粋)
●実際の教育現場から生まれた、子どもの心を繊細に表現した作品
このおはなしは、実際の教育現場から生まれました。作者のクリスティーン・バルダチーノが、小学校の教員をしていたときに、男の子がドレスを着たせいで母親に叱られているのを見たのをきっかけにこのおはなしを書いたのです。
イザベル・マランファンの絵も、モリスのか弱さや感情の起伏を丁寧に描きあげたことが好評を博し、本作で数々の賞にノミネートされました。まえざわ あきえの訳からは、作者たちが紡いだモリスくんがつくりだす世界観や心情が、色とりどりにあふれ出します。
子どもの心を誠実に見つめてきた著者たちが、真心こめて紡いだあたたかい一冊です。

自分を認める
この絵本から、自分を認める大切さを教わりました。
学校のリサイクル・コーナーでオレンジ色のドレスを手に入れたモリスは、それを着て校庭に出ました。
そうしたら、みんなにからかわれてしまいました。
そしてそれは、徐々にエスカレートしていったのです。
その時にママの対応が良いですね。
根掘り葉掘り聞くことをせずに、包み込むように受け入れてくれる。
それがあったから、モリスは自分を認めることができたのでしょう。
ラストでのベッキーにからかわれたモリスの言葉は、とても勇気があって素敵だと思いました。 (めむたんさん 40代・ママ 男の子22歳)
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