ラチは世界でいちばんの弱虫です。なんたって、犬をみると逃げ出すし、隣の暗い部屋にも怖くて入れません。これでは「飛行士」になりたい夢だって、かないそうにありません。友だちさえ、怖いのです。
泣いてばかりいたラチのところに、ある日小さな赤いライオンがやってきました。彼は可愛らしい風貌とは裏腹に、とっても強いのです。そして言うのです。
「君も強くなりたいなら、ぼくが強くしてやるよ」
それは特別なことではありません。体を動かし、外へ出て、前に一歩だけ踏み出す勇気を持つことです。ポケットにライオンがいれば、ラチの心は不思議と少しずつ強くなるのです。そしてすっかり自信がついてきた頃、ライオンは手紙を残して……。
1960年代にハンガリーからやって来たこの愛らしい絵本は、日本の子どもたちと大人の心をすっかり掴み、今でも変わらず愛され続けています。それは、ラチの心の中にいる弱虫が、どんな子どもの心の中にも多かれ少なかれ住んでいる共通した「気持ち」であるからなのでしょう。それこそ些細な悩みに見えたとしても、本人と家族にとっては切実な思いがあるのです。
「ぼくには、ライオンがいる」 「我が子にはライオンがいる」
そのことが、図らずも多くの親子を勇気づけてきたのかもしれません。弱虫だっていう子にも、そうでない子にも。一度は読んでみてもらいたい、魅力的な絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ラチは世界でいちばん弱虫です。犬をみると逃げ出しますし、暗い部屋には入ることができません。そんなラチのところに小さな強いライオンがやってきました。ラチはライオンがそばにいてくれることで少しずつ強くなっていきます。ある日、友だちのボールをとったのっぽの男の子をラチは夢中でおいかけボールを取り返します。ふときがつくとライオンの姿はありません……。あわてたラチが家にもどると、ライオンからの素敵な手紙が残されていました。
文章が素敵
絵も雰囲気もさることながら、私はこの絵本の何が好きって文章が好きです。
ラチが世界で一番弱虫なこと。
だから夢はかなわないであろうこと。
それをはっきりと言い切ります。
自信をつけて勇気を振り絞れたラチ、そこにはもう頼っていたライオンの姿がなかったと気づいた時の「ばんざい」というシンプルな表現は秀逸です。
何だかもっと詳しく、もっと仲良くなりたかったなぁと思わせるライオンとの別れですが、最後に堂々と「だからきっとラチの夢はかなうでしょう」と、勇気が出たからもう大丈夫!と無責任にも言い切ってしまう、それくらいの力強さが文章に込められているこの絵本が私は大好きです。 (☆A☆さん 20代・ママ 男の子6歳、女の子2歳)
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