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川端誠さん落語絵本シリーズ最新刊発売記念!
「落語絵本 制作のひみつ」ブログ第三回

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新年あけましておめでとうございます。
落語絵本の最新作ひとめあがりは、12月24日に刊行となりましたが、このブログはまだ
「あがり」にならず、2年越しでとなりますが、よろしくおつきあいのほどお願い申し上げます。

● 主人公のおとぼけぶりが、いい味なのです

『ひとめあがり』は縁起のいい、お正月の噺です。
江戸っ子職人の八つぁんは、長屋のひとり住まい。せっかくの正月休みなのにひま〜なもんで、まあ、ご隠居のところへでもいってみるか・・・と、噺がはじまります。
いつもは「がらっ八」やら「八公」なんて呼ばれてるのが、「八五郎さま」とほめられる!? ってんで、柄にもないことをしたばかりに、なんともトンチンカンなことに! 

体格も威勢もいい八つぁんの、ちょっとずれたおとぼけ感が、大笑いさせてくれます。
川端さん、八つぁんのせりふを語りながら、しぐさまで、まねしてくれました!

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▲ 頭に羽根があたろうと気づかず、お悩み中・・・のポーズ


● 原画完成まで、あともうひと息・・・

上の写真でご覧いただけるとおり、まだ描画の途上です。
前回お伝えしたように、はじめは背景色、次に登場人物の顔や着物など同じ色を、その次に一度だけ登場する人物や小道具・・・と、段階的に色を塗っていきます。

右頁の女の子、シリーズ5作目おにのめんのお春です!
これから着物や髪飾り、羽子板に色が入り、お正月らしくなります。
左頁も、女性の帯や帯締、正月飾りが着色され、それは華やかになりますよ。

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▲ 左)資料でもある雑誌の間に、絵の具皿がはさまれています
▲右)全画面塗り終えた色から、晴れてお役ごめんで水の中へ


● 一文字といえども、納得のいくまで

ご隠居さんを皮きりに、大家さん、お寺の和尚さん、大工の棟梁、小唄のお師匠さんと、八つぁん年始まわりをして歩きます。それぞれのお正月を祝う思いが、装いや家のしつらえ、町内のにぎわいのなかに表れています。
それが、今回の見せどころといえます。と同時に、いちばん描くのがむずかしい、苦心どころでもあります。

とくに今作は、画面に描かれた「掛け軸」が要となっています。
次の写真の見事な筆耕に、ご注目!

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▲ 「う」の字に、呻吟あれこれ・・・

気に入った文字を切り貼りし、継ぎはぎで仕上がった書もあります。コピーをしに、日に何度も某コンビニエンスストアに通ったそうです。
そんな苦心の跡も感じさせず、風流な掛け軸となって、絵本中に飾られていますよ。
アンケートにも「川端さんの絵ももちろん、文字が好きです」とありました。
ほんとに味のある字ですよねえ。

● 20年前の中国滞在ノートが役立ちました

掛け軸のひとつに、次の歌が描かれています。
「須弥山も 五岳も富士も
一同に どっとと笑う 春はきにけり」(大田蜀山人)

須弥山は孫悟空の話にも出てくる聖なる山、中国の五大名山、そして日本の富士山も一緒に笑う新春がやってきた・・・という、なんともめでたい歌です。

じつは川端さん、20年前に中国に1ヶ月半滞在したことがあり、五岳のひとつの華山にも訪れたそうです。そのときの取材ノート(大判のスケッチブックに、絵入りの詳細な日記!)が、資料にもなりました。

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▲右頁に華山(公園のようになっているそうです)のチケット

訪れた先、会った人、食事……と、久々に開いた取材ノートをめくりながら、いろんな思い出話もお聞きしました。当時、川端さんは絵の学校の先生で、中国にある姉妹校への研修だったそうです。今回、そのときのおみやげがしまったままだったことも思い出し、20年を経て、晴れて額装にしたとのこと。

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▲意匠も見事で美しい、布製で手刺繍の靴型シート

● 川端さんの「絵本芸」ここにあり!

映画のように、画面に映りこむ背景や小道具にこだわり、その時代の雰囲気をかもし出すのが、川端絵本の特徴でもあります。
落語が噺家による話芸なら、それこそが川端さんの「絵本芸」です。

アンケートにも「時代考証とか、たいへんそう」というお声がたくさんありました。ある方は「家の中や町の様子、服装などもたのしんでいます」と書いてくださいましたが、「よくぞ、気づいて見つけてくれました!」と、川端さん、それはうれしそうでした。
「絵をよく見てくれるのは、子どもたち。大人は、つい文字を追ってしまう・・・。絵を見てもらってこその、絵本なんだけどね」とも。

ここだけの話・・・第3作はつてんじんでは、絵本として発表後に、川端さんが描き忘れた顔のほくろを、読者の子どもさんが発見してくれた、ということもありました。2刷からは、ちゃんと描かれています。1刷をおもちの方は、希少本ですよ!


● 原画の完成! 満面の笑みです


子どもの頃に漫画家になりたい、と思ったこともあったという川端さん。人気漫画家は数人のアシスタントの手を借りて原画(いまはデータということも多いでしょう)を仕上げますが、絵本を描くのはとても孤独な仕事です。なかなか先が見えず、それでもひと筆ひと筆を描いていくのに、もうあきるくらい……と、苦笑をされていました。

ちなみに、シリーズ第10作『たがや』は、花火見物の人・人・人・・・、花火の火花ひとつ一つ・・・と描くものの多さに、お話を伺って想像するだけで、気が遠くなってます。

「はじめれば、いつかはおわる」
川端さんの切実な実感のこもった、けだし名言です。

さあ、『ひとめあがり』も、原画完成のとき!

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▲ 満足がいくものができた! 間に合った! 満面の笑み!!

絵本のなかには、刊行するタイミングがものをいう場合もあります。
とくに今回の『ひとめあがり』は新春の噺だけに、お正月に間に合わなければ、なんとも間抜けになってしまう・・・わけです。
(そんなプレッシャーもかけてしまい、川端さん、恐縮至極です)

● ボーナス映像! 表紙のできるまで

次の写真は、右から左へと、できあがっていきます。
できあがりから、順にさかのぼって見ても、おもしろですよ。

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▲ (左)完成した表紙 (中)描画中 (右)原寸ダミー

この時点で、原画は完成したものの、絵本になるには、まだもう一段階。印刷所との共同作業が待っています。その話は、また次回に。


2009/1/7~1/14の期間中「ひとめあがり」をお買い上げの方から抽選で
「名入れサイン本」
が当たります!
(抽選に当たらなかった方にも川端誠特製『ぽち袋シート』のおまけが付きます!)

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