『まじょのデイジー』作者の植田真さんにお話を伺いました。
静かで透明な空気の漂う風景、そこに繊細に描かれる少女や鳥や植物たち。
植田真さんの描き出す世界はとても上品で愛らしく、
大人のファンの方も多いのではないでしょうか。
▲絵本ナビの為に描き下ろしてくださった自画像です!
植田真さんはイラストレーターとしても挿絵や装画、広告のお仕事など幅広く活躍されています。画面から伝わってくる洗練された雰囲気は当然なのかもしれませんね。
でも、もう一つの魅力は植田さんの紡ぎだす、ささやかながら夢の詰まった優しいストーリー。
繊細で傷つきやすい、だからこそ美しい子ども達の心の声が優しく丁寧に織り込まれ、
それを大きく包み込んでくれるようなファンタジーの世界は、読むものの感覚を子ども時代に戻してくれるようです。
一体どんなイメージをしながら創作されているのでしょう?とっても興味を惹かれますよね。
「まじょのデイジー」 (のら書店) ★みどころはこちら>>>
今回、最新作「まじょのデイジー」の発売を記念しまして、
作者の植田真さんに、新作「まじょのデイジー」について、
また制作時のエピソードなどについてもお伺いしました!
■ 作品がうまれてくるきっかけは・・・
新作「まじょのデイジー」に登場するのは、
魔法はまだまだだけど、天真爛漫で朗らかで素直な小さな女の子デイジー。
一方無愛想で一匹狼、まっくろな翼をもつ鳥ズズー。
とっても対照的な二人なのに、ふとしたきっかけで一瞬のうちに心が通じ合ってしまう・・・
そんな思いがけない場面がとても心に残ります。
「つくっていくうちにストーリーは変化していきました。」とおっしゃる植田さん。
どんな風に作品が生み出されていくのでしょう?
「絵本を作る時は、映画の予告のようにいくつかのイメージが頭に浮かんできます。
例えば今回の『まじょのデイジー』の場合ですと、幼いまじょがホウキで飛んでいる、
ホウキから落っこちてしまう、楽しくなるとまわりで花が咲き始める、など。
最初は、それらのイメージをもとに漠然とした物語が浮かんできます。
しかし、それは本当に漠然としたものなので、進めながらたぐり寄せるように物語を作っていきます。
進めていくと「こっちの道じゃなかった」というようなこともよくあって、
『まじょのデイジー』も一番最初の原稿と最終的な原稿で物語は結構違うものになっています。」
場面のイメージと物語が同時進行で生み出されていくのですね。
もしかしたらデイジーとズズーの関係も、最初はもっと違ったものだったのかもしれません。
■ デイジーの持つ天真爛漫さを物語全体に漂わせて・・・
植田さんの作品の中では、静かで美しい風景の場面というのがとても印象的です。
また、その風景の中で、小さなものが本当に小さく描かれていたり、
逆に思うよりもずっと大きく描かれているものがあったり。
それはまるで登場人物の心象を表しているかの様にも見えます。
色彩表現や風景の描き方など、表現方法についても少しお伺いしてみました。
「主人公の気持ちと密接に関わりがある、というのは意識します。
物語の絵の場合、その物語または文章を読んで、どんな絵、どんな構図または色が、
その場面を一番引き立たせられるかということを意識して描きます。
例えば、ズズーが「ともだちなんかいないやい」という場面では、
「少し寂しそうなズズーの表情」を描くよりも、
「美しい風景の中で美しい羽根の鳥たち」を描く方が、
ズズーの孤独感がより引き立つように思うのです。
という感じで、そこにはどんな空気や感情が存在するのかをまず頭に浮かべ、
何をどのように描けば一番引き立たせられるかと考えています。」
今作品の雰囲気は今までの作品と少し違うように感じますが・・・
「「まじょのデイジー」では、デイジーの持つ天真爛漫さを
物語全体に漂わせたかったので、色彩は明るく暖かいものを意識しました。」
と植田さん。春の陽だまりの様な優しい暖かさを感じますね。
■ 「空」「鳥」「葉っぱ」・・・植田さんの作品に登場する風景の原点は?
どの作品にも登場する広く大きく描かれた様々な「空」の風景、空を飛ぶ「鳥」、小さな葉っぱや草花・・・。
「生まれ育ったところが緑豊かだった為か、
空の広い場所や鳥や草花は、自然と絵の中に出てくるように思います。」
■ 子ども達には楽しんでもらいたい・・・
子ども達には作品を通じてどんな事を伝えたいと思われているのでしょうか。
「物語やメッセージ性は本を作る上での一つのきっかけなのかもしれないと思ったりしますので、
ただただ、読んでくれた子ども達がどんな形であれ、頭の中で色々と「想像して膨らませて楽しんで」ほしいなと思います。
人によっては、物語と離れたところ、物のカタチや色などで楽しむ場合もあるかもしれませんし、
それも一つの楽しみ方だと思います。
なので、まずは楽しんでもらって、本の中に入ってもらえたら嬉しいです。
そして、そのような本を作って行けたらいいなと思っています。」
■ 絵本ナビ読者の方へメッセージをお願いします!
「デイジー(とズズー)が歌う場面、ぜひ、いろんな節で歌ってみてください。」
色々と丁寧に答えて下さり、ありがとうございました。
最後に「まじょのデイジー」の寄せた植田真さんご本人の直筆メッセージを
ご紹介します!↓