三鷹の森ジブリ美術館「3びきのくま展」に行ってきました!
<イソザキ編集長レポート>
皆さんは「3びきのくま」という絵本をご存知ですか?
大きな熊のぎょろりとした目がこちらに真っ直ぐ向いている、福音館書店版の緑の表紙を見て思い出す人も多いのではないでしょうか。
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私もくまの留守中に家に忍び込む女の子の行動にただただ、はらはらした覚えがあります。大中小の大きさのスープのお皿とスプーンもかなり気になりましたよね。
思い出の断片がある人は何となく思い浮かべながら以下のレポートを読んでみてください。
この「3びきのくま」という一冊の絵本を三鷹の森ジブリ美術館で企画展示するというのです。お話を聞いて私も内覧会に出席させてもらってきました。
ジブリと言えばもちろんアニメーション。今までの6回の企画展示の内容も当然アニメの映画や作家関連のものでした。それがどうして今回は一冊の絵本を取り上げた展示という企画が実現したのか・・・そこが一番気になるところですよね。
もともとこのお話は宮崎駿監督がファンだったそうで(特にこの福音館書店版のクマの怖さがお気に入り)、『子供たちが大好きで繰り返し読んでいるこの絵本を映画にすることはできないだろうか、そしてその制作過程も含めた展示をしたい。』という思いで「3びきのくま」の映像化の企画があたためられていたそうです。しかし宮崎監督が出した結論は・・・
「これは、映画にできないとっておきのお話だ!」
余計なものを削ぎ落としたシンプルな文章、その独特の世界を再現している絵。そこから感じとる不安感や好奇心、物語の面白さなど読み手によって受け取り方が変わってくる(更に女の子とくまの視点によっても変わってきます。)このお話を、映像化するという事は想像力の妨げになるのではないかと考えたそうです。そして絵本の世界をそのまま再現し、子供たちに体感してもらってしまうという驚きの発想に変わったのです。
聞けば聞くほどこんな贅沢な展示はない!と絵本好きの一人としては感激してしまうのです。
更に内覧会当日は、1962年出版当時に編集を担当した現福音館書店相談役の松居直さんが「3びきのくま」の魅力、ロシア絵本やトルストイの再話の素晴らしさなどをたっぷりとお話してくださいました。
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そして人の大きさ程もある巨大な絵本が制作され、これをめくってもらいながら、何とアニメ作家ユーリー・ノルイシュテインによるロシア語の語りが聞けるというスペシャルなおまけまで。(こちらは展覧会会場でも聞けるそうです。)
なぜこんなにこのお話は子供の心をとらえるのか。後は実際会場に踏み入れて確かめてみましょう。
入り口は物語の導入と同じで女の子が小屋を覗き込むつくりになっています。
最初の部屋にはくまの親子大中小のテーブルと椅子、そこにはスープのお皿とフォークも。
実際に椅子に座って大きなスプーンを手に取ることができます。いかに大きかったのか・・・。
窓には小屋へ戻ってくる途中のくまの親子、ベッドルームの再現なども。
展示物は全て頑丈に作られているそうでいくら触っても大丈夫。
そして第二の部屋には度肝を抜く大きさのくまが!!こちらをにらんでいます。大きな爪や牙にも負けず、勇気を出して触ってみると毛がふさふさ、そしてなんだか柔らかい。
果たして子供たちはこの大きさと迫力に興味をしめすのか、怖がるのか。
この部屋にはパネル展示にて高畠勲監督による解説も。論理的にも面白さの秘密にせまります。
更にはその他の「3びきのくま」の絵本やロシア語原本なども展示されています。グッズの販売も。
かつてこの物語の読者であった大人にとってはこの体験は感激しきり。そして子供たちにとってはどのような体験、発見となるのでしょう。そんな反応を全て含めたものが今回の展示と言っていいのでしょうね。
これは子供達と一緒に行く価値アリ、です!
最後に展示パネルより宮崎駿監督のメッセージです。
くまの家にしのびこむって、とてもこわいことだとわかりましたか。あの女の子は、とても勇敢ですが、とてもあぶなかったのです。
それにくま達がどんなに怒ったか、悲しかったのかも、よくわかりましたね。
トルストイは、ひとりの人間の仲に女の子の気持ちと、くまの気持ちが両方同時にあることを知っていました。
それが人間というものですよと、このおはなしで子供達をはげましたのだと思います。
トルストイが再話した「3びきのくま」は、深い深い心の奥へ通じる井戸のようなおはなしです。
人類の宝物のひとつではないでしょうか。
宮崎駿
三鷹の森ジブリ美術館
http://www.ghibli-museum.jp/
【三鷹の森ジブリ美術館の入場は日時指定の予約制です】
毎月10日(土・日・祝の場合は翌平日)より翌1ヶ月分を全国のローソンにて販売。
※web、モバイル、店頭Loppiにて予約、ローソン店頭で引き換え
【所在地】
〒181-0013 東京都三鷹市下連雀1-1-83
三鷹市南口から徒歩15分、有料コミュニティバスで5分
【お問い合わせ先】
一般窓口(ごあんないダイヤル)
Tel.0570-055777(10:00~18:00、休館日は休み)