絵本「ぼくとおとうさんのテッド」を翻訳した安藤パパにお話を伺いました!
現在公開中の話題の映画「スパイダーウィックの謎」。
その原作となる本「スパイダーウィック家の謎」のイラストを手がけている
トニー・ディテルリッジの創作絵本がこちら↓
「ぼくとおとうさんのテッド」
この巨大なピンクの生き物はいったい?
小さな子ども達のパパでもあるトニー。
遊び心たっぷりのアイデアはいくらでも出てくるようで・・・。
凝ってます!トニーのHPはこちら>>>
その翻訳作業として白羽の矢がたったのが、同じく3人目の子どもも生まれて
パパスイッチが全開に入っている状態の安藤哲也氏。
安藤さんのプロフィールはこちら>>>
安藤さんの主な活動がNPO法人ファザーリングジャパンの運営。
ファザーリングジャパン(FJ)とは?>>>
出来上がってきた作品の内容を読めば、依頼の理由もなるほど!と頷いてしまいます。
安藤さんは絵本ナビの取締役でもあり、パパ‘sプロジェクトのメンバーでもあります。
せっかくのこの機会!同じく子育て真っ最中のパパであり、パパ‘sのメンバーでもある絵本ナビ代表金柿も交えてたっぷりとお話をしてもらいました。
↑ 予想通り、絵本の話から、色々と話は膨らんでいき・・・。
◆まずは・・・このお話(絵本の翻訳)が来たときどう思われましたか?
安藤「最初は、翻訳というのは・・・と言う事で迷っていたんだけど、とりあえず読んでから決めよう、と。」
読んでみて、「子どもと向き合う事によって、父親が失ったものを呼び起こさせてくれる」というテーマに共感。安藤さんが、現在活動しているFJと同じメッセージを感じたので引き受けた、とのこと。
実際に始めてみると、子どもや父親など色々な立場から言葉を考えたり、実際に自分の子ども達に読んでみながら変えていったり・・・とても意義のある作業だったそうです。
金柿「安藤さんの言葉としてすんなり頭に入ってきて読みやすい、と言う事と、テルノちゃんとヒロシくんの二人の子ども達の意見を聞きながら、一緒に参加して作り上げたと言う点が、とても面白いなぁ、というのが最初の印象ですね。」
確かに、何だか安藤さんの声が聞こえてきそうなんですよね・・・。
更に、このお話のポイントとして、「仕事が忙しいお父さんが、子どもと向きあっていないために失ってしまったもの。それを、テッドが代わりにコーディネートしてくれている。」という事をお二人共通して感じ取った様です。
◆お父さんが思いを馳せる絵本。
もし父親という立場の人だったら、この絵本を読みながら
「そういえば、自分は子どもの頃ネッドと遊んでいたかな。」
「うちの子にはテッドという存在はいるのかな。」
「今の自分の顔って、こんな顔ってもしかしてこんな感じなのかな・・・。」
ふつふつと色々な事を考えちゃって「うーん。」なんて、唸ってしまいそう。
金柿「これは、お父さんが思いを馳せる絵本だね。」
安藤「そうだね。そして、子ども達は、そんな風に絵本を読んでいる大人を見ているんだよね。」
どうやらこの絵本、テッドが「ぼく」を通して揺さぶりをかけているのは子ども達の心だけではない様で・・・。
◆テッドの存在
このお話に登場するテッドというのは、いわゆる空想の中でのともだち。大人はどう捉えたらいいのでしょう。
磯崎「例えば、わが子が同じようにテッドの様な存在を主張してきたら、どんな対応をしますか?」
金柿「やっぱり、自分の娘にも色々と不思議な話をしているなぁ・・・と思った時期があったけど、そういうというのは時期があるものなんだ、として一緒に付き合っていましたね。」
安藤「ぼくだったら『大事にしろよ』とか、『パパにもいたなぁ』と言いながら会話を膨らませていくかな。」
絵本でもテッドのような存在というのは、度々登場してきますね。
毎日を必死で生きている子ども達にとって、空想の世界、空想の友だち、そういった「自分を守ってくれる」ものを存在させる事で、心のバランスを取っている・・・という側面もあるのかもしれませんね。
子ども達にとってはとても大きな存在なのでしょう。
(それにしてもこの大きなお腹の持ち主。なぜか落ち着くんです。日本でも人気のあるキャラクターをちょっと思い起こさせますね。この感覚は万国共通?)
◆「やんちゃスピリット」を持て!
そのちょっと過激なともだちテッドのやること。
ママ目線で見ると、悲鳴を上げちゃいそうなシーンがたくさん!
壁に大きな落書きをしたり、部屋をプールに(!?)しちゃったり。でも・・・。
安藤「うちの子ども達が一番喜んだのは、プールのシーン。
僕から見ると、大きな揺さぶりをかけていて、とっても爽快な気分で見られるね。
人の考えつかないような、壮大ないたずらを考えろ!世間を驚かすくらいの事を考えろ!
そういう『やんちゃスピリット』を伝えたい、という気持ちは父親として僕の中には常にあるから。」
私(磯崎)から見ると、テッドの提案する事で、「ぼく」が怒られるだろうなあ・・・と思うと、
ちょっと切なくなってしまったりもしたのですが、そこが、「先読みして守ろうとする」ママ目線と、
遊び方一つをとっても「どんどん常識を打ち破れ!」というパパならではの発想との違いなのかもしれませんね。
気がつくと、ママまでテッドに揺さぶられています。
◆「遊び」のちから
この「とことん遊ぶ」という経験、今の子達は出来ているのでしょうか?
安藤「うちの息子は、毎日ランドセルを放り出して遊びに行くよ。
でも、忙しい子が多くてなかなか群れとしての遊び方が出来なくなっている事も現実だね。」
金柿「ちょっと前まで、原っぱ遊びと言って、何もないところでみんなで遊びを考え出していくのは普通だったんだよね。それってとてもクリエイティブな作業。ちょっとづつ変化させていったりね。」
安藤「そうやって自分達の考えた遊びだと、例えば判断する事の繰り返しだったり、またこの遊びを流行らせよう!と考えたり。遊びの中から教えられるものって実はとても大きい。そしてそれは決して忘れない、仕事にだって生かされていく力になっている。」
その話を聞いて思い出すのは、「ぼく」のお父さんがかつて友だちだったネッドを思い出す瞬間のシーン。
あんなにも急に変われるものかな・・・とも思ったのですが、
結局お父さんには「遊んだ」記憶というものがしっかり存在していたからなんですね。
この「記憶」があるか、ないかというのも、大きなポイントの様な気がします。
◆仕事と育児は同じじゃない。
では、ネッドを思い出す前のお父さん。(結構日本的な雰囲気ですよね。)
何であんな表情しちゃうの?
安藤「きっと、真面目なお父さんほど、子育てに対しても
ビジネスと同じ感覚になっているんじゃないかな。」
おもちゃをあんなに買ってあげたのに・・・
色々連れて行ってあげたのに・・・
成果が上がらないと失敗?
安藤「子どもの様子を見ながら遊んでないんだよ。でも、そんなの絶対つまらない!会社と同じモードは通じないんだよね。」
子育てなんて、笑ってやらないとちっとも楽しくない。
子どもに「お父さん、いつもつまなそう。」なんて言われて嬉しい?
最後のページのお父さんの表情を見れば一目瞭然。ぼくとそっくりな顔をしているんだって、気がつくんだもの。
金柿「自分でも経験があるからわかるんだけど、子どもの様子をよく観察している時期というのはあって、
でも、ある程度経つと安心してまた仕事に集中してしまう自分がいたり。でも、はっと気がついてまた目が子どもに向かったり・・・。そうやって、仕事モードと育児モードを揺れ動いているようなお父さんは結構多いのかも。この絵本は、そんな揺れ動くパパスイッチを呼び戻すきっかけにもなると思う。」
安藤「『きみのお父さんは、いつからあんなに、つまらないやつになったんだい?』なんてセリフにどきっとした人、今日からでも、『遊びごころ』というものを思い出してみては?」
◆最後にこの絵本を担当された編集者の方よりこんな素敵なコメントを頂きました。◆
「安藤さんに翻訳を依頼してよかった、と一番思うことは、安藤さんのお子さん(テルノちゃん、ヒロシくん)に、実際に読んで、その場で子ども達から返ってきた反応を、日本語の文章に活かして頂いたと言う事です。」
例えば、壁に落書きをしてしまうシーン。
原書にはなかったけど、壁に落書きをする前に「『ぼく』の同意がないよね」と言う事で、
「オーケー、かべにしよう!」という一文が加えられたり、
その落書きの字を英語のまま活かそう、と決めたのも安藤さん。
「このページを開いたとき、『これは何て読むと思う?』と問いかける楽しみがなくなってしまう。それに、このアルファベットを自分で読み、意味を理解できるようになった時、2度楽しめるよね。その時に『あの時は読めなかったのに今意味も分かる!』と、自分の成長も感じることができる。」
何気ない事ばかりだけど、オトナではなかなか気づかないところばかり。コドモの目を考えて訳されている、と感じられるのです。
こんな会話がどんどん広がっていく絵本、
「ぼくとおとうさんのテッド」
絵本ナビでは、発売を記念して、
安藤パパの名入れサイン本を予約販売します!
6月にはやっぱりトニーの絵本でもう1冊。
「ジミーのムーンパイ・アドベンチャー」を発売します。
こちらもお楽しみに・・・。