田中パパ絵本翻訳デビュー!たっぷりお話を伺いました。
両手を広げて、ちょっとすかした感じの男の子が立っているだけの
この表紙、発する言葉は「だから?」。一体どんなお話なのでしょうか?
まずは、この絵本を翻訳された
田中尚人さんのコメントからご紹介しましょう!
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なんでも「いや!」なテリブルツーの2、3歳児、
なんでも「なぜ? どうして?」の4、5歳児、
そして、なにをしてあげても「で? だからなんなの?」とシラケた6歳児。
子どもってのは、大人を困らせる天才だ。
「ホトケの顔も三度まで」そんなひねくれ坊主に見舞うきつ〜い1冊がこれ。
絶対にありえない結末に、きっと子どもは腰を抜かすはず。
絵本の常識をくつがえす衝撃のナンセンス絵本。
なにをしてあげても喜ばない気むずかしい男の子。
お父さんだったら、さて、どうする?
2005年度イギリスBCCBブルーリボン絵本賞受賞
・・・だから?
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パパ‘s絵本プロジェクトのメンバーであり、
ファザーリング・ジャパンの幹事でもある田中パパ。
我が絵本ナビスタッフとも、とっても仲良くさせて頂いておりますが、
今回は、『翻訳者たなかなおと』としてお話をたっぷりお伺いしました!
田中さんの本業は、絵本編集者(現在グランまま社編集長)。
数々の絵本の制作・編集・出版に関われてきた田中さんが、
今回、初めて翻訳者として本格デビュー!
それは、やっぱりこの絵本との強い縁も関係があるようで・・・。
◆原書「whatever」との出会いは・・・?
パパ‘sのおはなし会で、田中さんが
(決して役には立たないナンセンス絵本)
「うんちっち」を嬉々として読んでいるその姿を見て、
「この人は、『whatever』の世界にセンスが近いに違いない!」
ぴんと来たらしい、セーラー出版の方。
(ちなみに『うんちっち』は田中さんのオハコなのだ。)
田中さんなら、ちょっとヒトクセある、やっかいなこのお話を、さらっと訳してくれるだろう・・・。
絶対的な確信のもとに依頼が来たそうです。
そして・・・
その思惑通り、田中さんが読んでみると、
「これは面白い!」
思わず大笑い。
このくだらなさが実にいい、大喜びしながら翻訳も快諾されたそうですよ。
◆改めて、この絵本のどんな部分に魅力を感じたのでしょうか?
「最初から読み進めていくと、このお話は、実にまっとうなプロットに従って
進んでいく・・・が、油断していると、最後に足払いをくらう!
こういった、イギリス人的ないたずら心を基につくられている
この絵本にとても共鳴できるんだよね。 」
絵本作りに忠実に見せかけて、実は真っ向から立ち向かっている姿勢そのものも、
田中さん御自身の絵本への取り組み方と重なる部分があり、
共感できるそうですよ。
◆ビリーってどんな子?
一見、煮ても焼いても食えないような表情をしている男の子、ビリー。
どんな男の子なんでしょう?
無感動なのか、感情表現が下手なのか・・・。
「どっちでもない、どこにでもいる普通の男の子だよね。
子どもって、小さい頃の『いやだ、いやだ』の時期が終わると、
今度はちょっとすましてポーズをとったりする子っているでしょ?
あまのじゃくっていうのかな。何でも素直に言わない。」
いるいる、たくさんいるよね、そんな子。
「だからって、この子が悪い子って訳じゃない。
素直な子どもがいい子とは限らないって事もあるしね。
子どもらしい子どもだと思うよ。でも。いつもいつもこんな態度とられていちゃ、
我々大人は、我慢できなくなる事だってある訳で・・・。」
「あるー!」
(↑子育て真っ最中のパパ、ママの声)
◆では、ビリーのパパはどんな人?
ビリーを喜ばせようと、あの手この手で辛抱強くビリーに付き合うパパ。
例えビリーに「だから?」なんて、すかされようとも。
本当に優しい優しいパパなの・・・かな?
そう思って、ビリーも読んでいる方も油断していると。・・・衝撃の結末!!
「ここからが、このお話の面白いところ。」
と田中さん。
「仏の顔も三度まで、て言うでしょ?
たいがいにいしろよ!大人だっていつまでもいい大人でいる訳じゃないよ。」
これならどうだ!と来るのです。
ちょっとびっくり。たいがいにひねくれた子だって、びっくりする。
そして、急に現実に直面して素直になっちゃったりするんだけど・・・もう遅い?
絵本なんだから、たまにはこの位のパンチを子どもにあびせるのもいいのかも?
これは効きそうですねー。
そう。実はこの絵本。
子どもが子どもなら、大人も大人なんです(笑)。
是非パパに、笑いとばして楽しんで欲しいところです。
↑あれ?どこかで見たような・・・。
そうなんです。ちょうどよしながこうたくさんも絵本ナビにいらしてたので、
「だから?」を読んでもらってます。この後、こうたくさん。
ひっくり返って笑ってましたよ!!
(こうたくさんの来訪ブログも近いうちにアップしますね。)
◆子どもには、このお話をどう受け止めてほしい?
問題の最後の終わり方。
「えっ!どうして?」
「これで終わってどうするの?」
こども心にも「良い」のか「悪い」のか判断がつかない。
つじつまが合ってない。ちょっと気持ち悪いよね。
でも、そこが狙い?
「予定調和的なお話が多い、最近の絵本。
でも、記憶に残るお話、心にひっかかるお話ってどのくらいあるのかな?」
確かに、理不尽だったり、理解しきれない部分っていうのは、
大人になっても覚えていたりするもの。
更に、常識をくつがえす、理解の範囲を超える、
こんな場面に出会う事で「苦々しい」って感じを味わって欲しいと田中さん。
(ここでちょっとにやり。)
◆親だって一緒?
子ども以上にちょっとびっくりしちゃうママだっているんじゃないかしら。
子どもと同じ「苦々しい」顔をしていたりして。
「どんな捉え方をするのかは、勿論自由だけど、
ママだって色々考えずにすかっと楽しんで欲しいよね。
この本を読んだ後にどう解説するのか、どう誘導するのか・・・なんて考えなくていいと思うんだ。」
さぁ、読むか読まないか。
これは、田中さんからの挑戦状!?
◆翻訳作業で楽しかったのは・・・。
タイトルの「whatever」。
これをどう訳すか。これが今回の翻訳作業の醍醐味だったそうです。
子ども達の世界を表わすことば「whatever」。
例えば最近流行りの
「そんなの関係ねー!」
子ども達の間の世界では、いつの時代だってこんな風味な
気分を代弁しちゃうような言葉が頻繁に飛び交っているのです。
この翻訳が決まってから、
田中さんが、子ども達の会話に耳を傾けるていると・・・。
多く使われる話ことばとして聞こえてくるのが、
「あ、そ。」
「それで?」
「それがどうしたの?」
「ふーん。」
「で?」
などなどなど・・・。
別に覚めている子が使っている訳じゃなく、
普通に使っている。(何となく解りますよね。)
数多い候補の中から、このニュアンスを表わす言葉は?
「whatever」=「だから?」
あ、もう、うちの息子が真似してる・・・。
◆田中さんご自身の絵本作りへの思い。
この、一筋縄ではいかない、いたずら心満載な作者ウィリアム・ビー。
田中さんが彼に共感する部分は、上記でも述べている通り、
「絵本の常識をくつがえす作品をつくりたい。」
という姿勢。
そんな田中さんが手掛けた、思いが込められている作品、
例えばこちら>>>
「子ども心を忘れてしまったら。この本に書き留められたものを読む事で、
タイムマシンの様にかつて子どもだった時代に戻れる瞬間があるはず。」
こちらのシリーズも>>>
「子どもが感じる言葉にならない五感を、絵本にしてみたい。
子どもの方が、心と結びついて感じている五感もあるのではないか。」
◆最後に、この絵本を読む時のポイントってありますか?
「この絵本は、だらだら読まないで、スピーディーに軽やかに読んでほしいな。
じっくり読むから味わえる・・・とは限りませんよ!」
ここでも田中さんらしいコメント。
早速我が家でも、息子(4歳)に読み聞かせ。
さすがに最後の場面の進むにつれ、口がぽかーん。
読み終わった後は、びびってる顔(でも嬉しそう)をしながら、
「まだ、続きがあるんじゃないの?」
なんて言うから、
すました顔で
「ないよ。」きっぱり。
なかなかの成功例じゃないかしら、田中さん!
田中パパ「だから?」
さぁ、6月下旬発売予定のこの絵本。
絵本ナビでは、田中さんの「名入れサイン本」の予約を開始します!
田中さんがご希望のお宛名入りでサインを書いてくれますよ。
この機会に是非、おすすめします。
↓↓
◆◇おまけ◇◆
先日、パパ‘s絵本プロジェクト主催で行われた
「絵本ジャンボリー」にて、
田中さん自ら、まだ発売前で出来上がってもいない
手作り「だから?」を持参して
青空の下、みんなの前で読んでくれました!!
↑「だから?」
田中さんが読み始めると、どんなお話か想像出来ないみんなは、
興味津々で見つめているので、静かになりました。
↑お話はどんどん展開して行きます!
「どうなっていくの?」
最後の場面では、子ども達は「ぽかーん。」
お母さん達は、「えーーー!!」
いい反応でした(笑)。
あっという間に退場する田中さん。
みんなの間に「苦々しさ」は残ったかな?