ぼくは紙の帽子をかぶり、新しいラッパを持って、森へ散歩に出かけます。すると、森の中では、さまざまな動物たちと出会います。
最初は大きなライオン。昼寝をしていたライオンは、ラッパの音で目を覚まし、くしで髪をとかし、「ついってっていいかい?」と聞くのです。次にはぞうの子どもが2ひき。彼らは水遊びをやめて、それぞれセーターとくつをはいて、ついてきます。さらに2ひきのくま、カンガルーの親子、こうのとり、小さなさる2ひきが、次々とぼくの後についてきます。ぼくはいつの間にか長い行列の先頭に! さらに大人しいうさぎも一緒に、にぎやかに歩いていくと、大きなテーブルがあって……。
エッツの名作『もりのなか』は、こんな風に静かに物語が進んでいきます。色彩もモノクロで森の奥はまるで真っ暗。だけど、いったん心を静かにして。ぼくと一緒に後ろからついていく気持ちで読んでいくと…不思議! この散歩がいかに愉快でにぎやかなものなのか、すぐに伝わってきます。そして、すっかり遊び疲れた頃。
「いったい だれと はなしてたんだい?」
お父さんがやってきます。ここで、夢のような遊びはおしまい。だけど、お父さんは言ってくれます。
「きっと、またこんどまで まってて くれるよ」
ぼくはお父さんの肩車にのって、愉快な気持ちのまま、家へと帰っていくのです。小さな読者も本を閉じながら、きっと思っていることでしょう。
「またくるからね!」
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ラッパをもって森に散歩にでかけた男の子は、ライオン、ゾウ、クマと、いろいろな動物たちに出会います。男の子はラッパをふきながら、みんなと行列をつくって森を散歩をします。そして森の中で、かくれんぼうをはじめますが、男の子が鬼をしているうちに、動物たちは姿を消していました。かわりに現れたのは、男の子を探しにきたお父さんでした。「またこんどまでまっててくれるよ」、お父さんはそういうと男の子を肩車にのせて、おうちに帰っていきました。
エッツさんに出会えた幸せ
「ぼくの さんぽに ついてきました」という言葉が繰り返されるうちに、子どもも大人も、森のなかに引き込まれていきます。
いつまでも森で動物達と遊んでいたい。
けれど、絵本には終りがあります。
読み終わった時、森のなかからぽっと抜け出したような感覚が、じんわりと残ります。
「もりのなか」は、とても長寿の絵本です。
そしてエッツ作品は、現在、20冊くらいが邦訳されています。
私は、「もりのなか」の他に、「わたしとあそんで」「ちいさなふるいじどうしゃ」「またもりへ」などを持っています。
どれも、おしまいの言葉が心に浸み込んでくる絵本です。
私は、「もりのなか」を読み返すと、息子が2歳の時、風邪で保育園をお休みした日に、布団の中から30回連続でこの絵本だけの読み聞かせをせがまれ、流石に往生した事を必ず思い出します。
あなたもぜひ、子ども達をエッツさんに出会わせてあげて下さい。その幸せのための最良の最初の一冊です。
そして、「もりのなか」を読み聞かせる時は、是非とも子ども達を膝の上に座らせて、後ろから静かに語りかけて頂ければ嬉しいです。
物語が、親と子どもを温かく包み込んでくれる絵本。
私にとって、とても大切な一冊です。 (きみたまきみたさん 50代・パパ 女の子19歳、男の子17歳、女の子15歳、女の子3歳)
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