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絵本『はやくちこぶた』作者の早川純子さんにお話を伺いました!

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絵本『はやくちこぶた』。

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「はやくちことば」ではありません。
はやくちこぶた
3びきのこぶたとおおかみが登場するようです。

でも読んでみると、やっぱり「早口ことば」の絵本のようで・・・。
期待通り、よく知っている早口ことばのオンパレード!
そして、驚く事にストーリーにもなっているのです。

どうしてこんな不思議な絵本が出来上がったのか、
気になってしまいませんか?
そして、この絵本の最大の魅力が「早口ことば」にのせて
ストーリーが進んでいく早川純子さんの描かれる絵。
一体どんな発想で考えられたのでしょう?

まずは・・・
この企画を発案された瑞雲舎の井上さんにお話をお伺いしました。


◆「早口ことば」を絵本に・・・。


―「早口ことば」を絵本に!と思われたのはなぜですか?
弊社(瑞雲舎)の『ことばのこばこ』(和田誠)が好評で、
ことば遊びの絵本の第2弾をつくりたいと思っていました。

ehon11920_blog.jpgことばのこばこ

なぜ「早口ことば」になったかというと、読み聞かせなどの合間に、子ども達の声だしにも
最適だと思ったからです。


―早川純子さんに依頼されたきっかけは?
早川さんの絵は、しんじなくてもいいけれどを拝見したときに、
この人に頼もうと思いました。
ダイナミックな動きあり、とても発想がユニークです。
その後個展などをみて、その才能にほれ込みました。

book_sinjinaku_blog.jpg『しんじなくてもいいけれど
その他早川純子さんの作品はこちらから>>>

そこで、「早口ことばを絵本にしたい。」という事と、
代表的な早口ことば30個程提示しました。
それをもとに早川さんに自由に考えてもらいました。
(その時の様子をご本人が語って下さっています!後ほど・・・)


―完成した「はやくちこぶた」みどころは?
子ども達一人ひとりの見方で、こまかいところに伏線があるので、
自分なりのストーリー展開が楽しめます。
また、「早口ことば」は、声を出す事によって、脳を活性化するので、
楽しみながら遊んでもらえたら!と思っています。

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「はやくちこぶた」が完成するまでの貴重なエピソードを、
作者の早川純子さんにお伺いしました!

瑞雲舎の井上さんが、早川さんに依頼されてから、
長い期間をかけて生まれた絵本だったそうです。
完成までのエピソードは、とても興味深い内容になっています。
また、絵本の制作に関するいくつかの質問にもお答え頂きました。


◆『はやくちこぶた』が生まれるまで・・・。

お話を聞いて・・・。
2004年の春、瑞雲舎の井上さんから早川さんに
「早口ことばだけでお話がすすむ絵本を描いてくれないか。」
と依頼があったそうです。
子供たちがずっと楽しめる絵本を・・・と言う事で、
色々な早口言葉のリストや『ことばのこばこ』などを早川さんに提示されたそうです。
早川さんは面白そうなお仕事!とは思われたそうですが、同時に、
「早口ことばをどうやっって???」「なんで私にこの話が来たんだろう・・・」
思わず頭を抱えてしまったそうです。
なんといっても絵本。15見開きもあるのです。
最初はとまどいもあったようで・・・。


人形劇との出会い・・・。
その後、
「どうしようかな~。」
「『はやくちことば』と『はやくちこぶた』は言葉が似ているなあ・・・。」

などと、1ヶ月程考えていたそうです。
(この時既に「はやくちこぶた」というキーワードが登場しているんですね。)

そんな時、人形劇のワークショップに参加される機会というのがあり・・・。
(※早川さん注/チェコを拠点に活躍されている沢則行さんのワークショプでした。
オブジェクトシアターという人形劇の新しい流れで、表現されている人形師のかたです。)
参加者は人形劇をやっている方や役者さん、沢さんの公演をみて興味をもった方など様々。
そこで親しくなった方たちから、改めて早口言葉を教えてもらったり、
発声練習などでも、早口言葉が使われていたり。
「これが結構転機となった気がします。」と早川さん。
表紙にも出てくる舞台の様な雰囲気、こんな所にもルーツが隠されているのでしょうか?


更にチェコの人形劇との出会い。
また暫く考える日々が続き・・・。
「この頃は、3人兄弟のこぶた達の、朝から寝るまでを早口言葉で進められたらと考えました。
でもラフを描いても最初の数ページ。
断片的な描きたいシーンはあるものの、展開を面白くまとめられません。」

そんな風に時が流れていって・・・‘05年の夏。
チェコの人形劇団の公演を観る機会があったそうです。

「演目は『3匹の子豚』。チェコ人なので当然日本語での公演ではありません。
何を言っているのかは不明です。
でもお話の筋は子供も大人も馴染み深いものなので、言葉がわからなくても楽しめます。
結構ブラックな表現でも直感的にわかり、小さい子たちも、勿論大人も盛り上がって見ていました。
(当然のようにブタたちは食べられ、天使のワッカをつけて飛んで行ってしまいます。)」

早川さんは、この公演などを観て、
「早口ことばの絵本も、無理にお話を作るのではなく、
『3匹のこぶた』や『赤ずきんちゃん』など、
説明しなくても皆が良く知っているお話をベースにするのが良いのかも。」

と、思われたそうです。
多くの人が知っているお話だったら、説明しなくてもそれぞれの頭に既にお話が入っていますものね。


アイデアがまとまっていき・・・完成!
そこで、最初から考えていた『はやくちこぶた』の語呂を生かしつつ、
3人兄弟のこぶたのアイデアもそのままに、
更にオオカミを登場させて『3匹のこぶた』のイメージへとつながっていったそうです。
オオカミがどうしてこぶた達を追いかけるのかは、説明が要りませんしね。

「後は、どう面白く追いかけっこさせていくか、
早口言葉の順番がしっくり来るまでが時間がかかりました。
追いかけっこなので、
絵本の中で読み手がページの前後で遊べるように。
また次のページに何となく続けられるように。
また絵本を舞台の劇中劇みたいに感じられるよう、描いている時に意識しました。
人形みたいなイメージ。ブタたちの首がグルグル回る感じ。
そのため絵に動きあるように見えるのかもしれません。」

 その後もラフをまとめるのに苦労されながら、‘06年の秋ごろにラフ完成。
‘07年のゴールデンウェイーク明けに絵を描きあげられて、
その年の秋にいよいよ完成!絵本が出される事になったそうです。
「それまでじっくり井上さんが待っていてくれたからこそできたのかなあ、と思います。」

そんな貴重なラフを見せて頂きました! 
 
↓表紙です!題名も構成もちょっと違いますね。

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↓扉絵と、後ろ扉絵です。イメージ、雰囲気ほぼそのままですね。

kobuta_rahu10.jpg  kobuta_rahu9.jpg

↓見返しの絵です。早口言葉が並んでいます。
 完成品では全体がある形になっていますね。

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↓アイデアや、構成、画面の勢いがそのまま伝わるラフ画。
  この段階でもとっても魅力的ですね。

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↓完成品の場面と見比べるのも、楽しいですね。

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『はやくちこぶた』という題名が浮かんでから、実際にそのこぶた達が動き出すまでには、なかなかすんなりといった訳ではなかったのですね。
早川さんのお話の中にもあったように、長い時間をかけられて創られたこの絵本。
企画の話があってから、ラフ、作画にかかる迄に
他の絵本を色々と描かれていたそうです。
例えば・・・

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まよなかさん』や『おおかみだんなとろば
かいじゅうじまのなつやすみ』『家缶』などなど・・・。
そんな他の作品からも、『はやくちこぶた』への影響があったそうですよ。

それにしても・・・『はやくちこぶた』には美味しそうな食べ物が出てきますね。
その辺りもお伺いしてみると。
「私が好きだという事もありますが、登場人物が美味しいもの好きのぶたの家族だからでしょうか。
『3匹の子豚の誕生日』というイメージなので、最後も食べ物を沢山登場させました。
また、早口ことばにも食べ物が色々入っていますね。
特に『すもももももももものうち』は、うっとりします。」


◆絵本作家早川純子さんについて・・・。

hayakawajunko_blog.gifその他にもいくつか質問をさせて頂きました!


―もともと版画の作品を制作されていた早川さん。絵本作家となられるきっかけは
  あったのでしょうか?

「もともと絵本には興味がありました。
でも、版画を作るのが楽しく、個展等で発表していました。
版画の絵柄がお話的?だからでしょうか。
絵本の編集の方や装丁家の方が個展に良く見に来てくれたりしていました。
そんな感じで、段々と挿絵の仕事などをポツポツといただいてました。
そんな中、ビリケン出版の『トリツカレ男』の挿絵をしているときに、
その編集者さんが個展に来てくれました。
そこで改めて今迄の雑誌の挿絵をまとめたファイルの中の絵(「母の友」)を見て、
「早川さん絵の具でも絵も描けるんだねえ・・・」と。
しんじなくてもいいけれど』の絵本の挿絵の仕事につながりました。


―どの作品もとってもお話を吟味されて絵を描かれているようにみえます。
絵本の絵を描かれる時の、面白さ、醍醐味みたいなものを教えて頂けますでしょうか?
「そう思われていたら、嬉しいです。描き分けをしたりと、器用にはできないので、
毎回変えられたらと思いますが、特に意識していません。
音楽などで気持ちを切り替えていたりしているからでしょうか。
醍醐味・・・もまだわかりません。たぶんずーっとわからないのかも。
絵本をきっかけに、知らない分野を覗けるのが楽しいところでしょうか?
白い紙の時は描くのが苦痛ですが、だんだん絵本の世界に画面が変化していく時が楽しいです。
画面がしゃべってくる感じ。自分よがりに描きすぎてしまうのが、これからの課題です。」


―絵を描かれる時は、描きながらアイデアがどんどん出てくるのでしょうか?イメージが広がってくるのでしょうか?
「基本的には手を動かして考える感じです。ぐるぐる考えている時はあまり出ません。
散歩している時とか、寝ていてゴロゴロしている時とかにやってきます。
あとたまたまつけたテレビの画像とかからヒントをもらったり。」


―「こんな絵本を創っていきたい!」というテーマはございますでしょうか?
「読み手に長く愛される絵本が作れたら嬉しいです。
あの絵本!小さい頃読んですきだったなあ~と思われるような。
また『ウヘ~またヘンテコな絵本作ったなあ。』と思われる物を作れたら嬉しいです。」


ありがとうございました!わくわくする様な作品が次々と生まれてくるので、
今後も本当に楽しみですね。
最後に絵本ナビ読者の為に素敵な直筆メッセージを頂きました。

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