メンペスは1880年より3年間、多くの芸術家が集まるブルターニュのポン=タヴァンに住みつき、数多くの作品を残した。ポン=タヴァン派という、ゴーギャンも所属したアバンギャルドの画家たちが暮らす芸術村に滞在していたのだ。その成果は1905年の紀行画集、『ブルターニュ』(Brittany)という形で結実した。この画集は今日に例えるならば「ひとり歩き旅行ガイド」のようなもので、ブルターニュ各地を紹介した文章に絵画をカラー印刷で添えるという、当時としては非常に斬新な趣向だった。メンペスの名声を決定づけたのは『ブルターニュ』の発行以前、1887年に訪れた日本を題材にした展示会、および紀行画集の出版による。したがってこの美術書、『ブルターニュ』に掲載されている作品群は日本訪問以前の1880年から数年に描かれたものと、日本から帰国後にブルターニュ地方を再訪した1894年に描かれたものが混在すると思われる。当研究所ではこれら75点の絵画作品の中から44点を選んだ。今回は印刷所の新しい技術のおかげで、ひとつひとつの絵画を非常に発色のよい出来栄えで再現することができたことに満足している。フランスのブルターニュに暮らす人々の生活を生き生きと描いたメンペスの作品を、大いに楽しんでいただきたい。A4判52ページ絵画カラー作品44点収録。
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