ユニークなキャラクターがたくさん住む「ぽかぽかまち」を舞台にした、新しいタイプの“さがしてあそべる”絵本が誕生しました。主人公はなんと子犬。くいしんぼうで意外とちゃっかり者?な「こいぬのミグルー」と一緒に、ぽかぽかまちに住むさまざまな人たちの暮らしを見ていく絵本『こいぬのミグルー だいかつやく』(創元社)。日本だけでなく世界11カ国での出版が決まっているこの絵本の発売を記念して、翻訳を担当された前田まゆみさんにおはなしを伺いました。
くいしんぼうで、いつもおなかがぺこぺこのミグルーは、ぽかぽかまちの人気者。いちばや広場、消防署から小学校まで、個性的でゆかいな仲間たちといっしょに探検します。「ウォーリーをさがせ」の原書出版社、ウォーカーブックスが、満を持して刊行する新シリーズ。驚くほどたくさんのさがしものと、おはなしの両方が楽しめ、読むたびに新たな発見のあるさがしもの絵本です。親子で楽しめ、プレゼントブックとしても最適の一冊。
絵本の舞台はシリコンバレーの姉妹都市「ぽかぽかまち」。
とってもにぎやかで、いろんな人たちが仲良く暮らしています。

彼がこの本の主人公「ミグルー」。
町のみんなの人気者で、食べることが大好き!
探すのはミグルーだけではありません。
ぽかぽかまちに住んでいる65人の人たちと7匹の動物たちも絵本のいろんな場所に登場します。
こんなにたくさんいるんです!ぽかぽかまちの住人たちが勢ぞろい。

さらに、著者のウィリアム・ビーさんが「ビーおじさん」として絵本に登場し、いろんな「探そうクイズ?」を出題します。
ウィリアム・ビー プロフィール
ロンドン生まれ。絵本作家、アーティスト、デザイナー。
ポール・スミス、イッセイ・ミヤケなどのデザインも手がける。 著書に「だから?」「カエル ごようじん」(らんか社)「さてさて きしゃは はしります」(フレーベル館)などがある。好きなことは、ヴィンテージ・スポーツカーに乗ること、家の芝生のお手入れ。
───これほどボリューム満点な「さがしてあそべる」絵本は今までなかったのではないでしょうか?
翻訳者の前田さんにこの絵本の魅力、翻訳の苦労などを伺いました。
───『こいぬのミグルー だいかつやく』。読めば読むほど「この人、このページでこんなところから出てきた!」や「今度はドーナッツを食べてる…」など、新しい発見があるので何度も楽しめました。
私も最初に見せていただいたとき、描かれている情報の多さに圧倒されました。でも、ミグルーがとってもかわいい主人公だったので、これは日本の子どもたちの人気者になる!と思い、気合を入れ直しました。
───この絵本は世界的に有名なさがし絵絵本『ウォーリーをさがせ!』を出版した「Walker Books(ウォーカーブックス)」が手がけた新たなさがし絵絵本シリーズなんですよね。
そうです。元祖さがし絵絵本とも言える『ウォーリーをさがせ!』の出版社がウォーリーの次のさがし絵絵本として出版する作品ですから、相当力を入れていると思います。
───前田さんのおっしゃるように、ミグルーがとてもかわいくて、そのミグルーの一日を通して、町の様子や絵本の核となるストーリーが進んでいく…。さがし絵と物語がバランスよく楽しめるところにも新しさを感じました。
私も、物語の面白さと、その中でこれだけのさがしものがドッキングしているところに、作者の力量、クオリティーの高さを感じました。メインのストーリーはミグルーを主に動いていきますが、町の人それぞれが各々の生活を営んでいるんです。それがすごくリアルというか、生き生きしているので、みんなの動きがとても気になるんですよ。細かいところを見ていけば、何時間でも遊んでいられる絵本ですよね。
───町の人がいろんな職業に就いているのも面白いですよね。

時計のねじを巻いてるトンピョンさん
消防士や警察官、小学校の先生など私たちに身近なお仕事から、「まどふきやさん」や「おんがくのしきをするひと」「わたがしやさん」などなかなか個性的なお仕事まで本当にいろんな職業がでてきますよね。読む人によって好きなキャラも違うと思います。創元社の編集者のお子さんで小学2年生の女の子に読んでもらったとき、「どのキャラが好き?」と聞いたら、「トンピョンさんが好き」と言っていて…。
───トンピョンさん…「とけいのねじをまくひと」ですね。その子はなぜトンピョンさんが好きなんでしょう?
どうやらヒゲが面白かったみたいです。あと、意外と顔の描かれた「コーン」に人気があったりと…人によって追いかけるキャラが変わるのも面白いと思いましたね。
───前田さんの好きなキャラは誰ですか?
動物が好きなのでやっぱりミグルーがすごくかわいくて、翻訳の仕事をしているときにもかなり癒されていました。町の人のなかでは、掃除をさぼっている「ベニー」を探すのが好きでしたね。ぽかぽかまちは平和な町の様で、消防士の「ハリー」と「アルフォンソ」もいろいろ食べ歩いていたり、サッカーをしていたり、お仕事していないな…って思いました(笑)。
あと、煙突掃除のスマッジさんとペンキ屋のスマッジ夫人の息子「スクラッフィ」も気になるキャラクターです。彼はいつも体じゅうにペンキやすすがついていてるんですがそれだけでなく、ページのすみっこでぼーっとして、何かちがうことを考えてるようなときもあり、その存在感がつい気になりました。
ベニー(左)、消防士の二人(中央)、スクラッフィ(右)。それぞれどこにいるか、絵本で探してみてくださいね。

街のどこかで見つけることができる毛糸!
───私は毛糸がとても気になりました。最初「ピンクのけいとは、どこにある?」とクイズが出されていたからてっきり、毛糸玉のことかと思ったら、いろんなところに巻き付いているし…それで気になって追っていたら、最後の場面でまさかの展開が待っていて、ビックリしました。
そうなんですよね。そこは是非絵本で確かめてほしいですが、毛糸と関わりのあるキャラクターは最初の登場人物紹介に出てこないので、人なのかなんなのか…とても気になる存在です。
───そういうヒミツのアイテムのようなものを見つけると誰かと共有したくなりますね。

私も翻訳しながらいろいろ見つけましたが、見つけきれていないものがまだまだたくさんあると思うんです。この本の中でいろんな発見をしたり、さがしものをするということは、子どもにとって現実の世界と関わっていくことの疑似体験になってると思います。
絵本の中には詳しい解説や良い人、悪い人みたいな価値の付加は一切ありません。でも、人々が暮らす場所を現実の世界に近い形でとても楽しく探せる内容になっているので、読者一人一人が、いろんな楽しみ方、関わり方ができ、ひとりでも家族と一緒にでも絵本の中を存分に探検できるように作られているように思います。