●アメリカで鳥の巣の絵本を出版しました
───鈴木まもるさんといえば、鳥の巣博士として有名ですが、前回伺ったときよりも、アトリエの鳥の巣が増えているように感じるのですが……。
あーー、それは確実に増えていますよね(笑)。
───やっぱり(笑)。鳥の巣のコレクションは毎年、増えているのですか?
今年は海外に探しに行っていないので、外国のはそれほど増えていませんが、家の周りで見つけたりするので、年々増えます。去年はイギリスとアメリカに行ったのですが、それは収集よりも学者さんに会いに行ったのと、ウォルター・ロスチャイルド動物学博物館の見学がメインでした。数日間地下の収蔵庫に閉じこもって巣を見まくりました!(笑)。
───ウォルター・ロスチャイルド動物学博物館? どんな施設なんですか?
ロンドン自然史博物館の分館で、世界でも有数の鳥類学の研究施設。鳥のはく製は世界で一番あります。卵と巣が一番あるのはアメリカのWestern Foundation of Vertebrate Zoologyで、昨年『世界の鳥の巣の本』(岩崎書店)を翻訳出版してもらいました。今度、新たに『鳥の巣いろいろ』(偕成社)を出版してもらうことになったので、打ち合わせもかねて伺いました。
───世界有数の鳥類学の研究施設から、鈴木さんの絵本が出版されるなんて、世界的にも鳥の巣の研究者として認められているということですよね! 『世界の鳥の巣の本』の翻訳版も、元々英語で描かれていたような海外の絵本の雰囲気が漂っています。
世界中の鳥の絵だから、英語版になっても違和感がないのかもしれないですね。
───今年は海外に行けないとおっしゃっていましたが、それは絵本がたくさん出るからですか?
その年によって、絵本製作と展覧会と海外への探検と順繰りで……、今年は製作と展示が多い年になっただけです。年内はあと、『すすめ! きゅうじょたい』(金の星社)の続編とゴミ収集車の絵本「おはよう!しゅうしゅうしゃ」(偕成社)、「生きものたちのつくる巣 109」(x-knowledge)という鳥だけでなく虫や哺乳類など、いろいろな生物が作る巣を集めた本が完成予定です。これから絵を描くのは赤ちゃん絵本です。
───赤ちゃん絵本はどんなストーリーなんですか?
抱っこ絵本です。『あなたがだいすき』のようなわが子を溺愛する絵本ですね。
───ダミーを見せてもらいましたが、動物たちが抱っこしている姿が本当にかわいいですね! 乗り物や動物など鈴木さんならではのテーマが並ぶ中で、新たにチャレンジしてみたいテーマ、描いてみたいキャラクターなどはありますか?
恐竜は描きたいと思っているんですが、色や身体を覆っている羽など未知の部分が多くて、鳥の巣のように図鑑的な形ではまだ絵本にできないな……と思っています。
───恐竜は男の子の憧れですし、恐竜から鳥になった経緯が解明されつつあるので、鳥の巣博士の鈴木さんとしてもつながりを感じますよね。その他、描いてみたいテーマはありますか?
来年の夏に向けてウミガメの絵本を描くことになっているのですが、これも今までにない題材なので、ワクワクしています。
───ウミガメですか? なんだか意外です。
ウミガメが卵を産みに来たり、生まれた子ガメが海に向かう絵本はたくさんありますが、 その間の数十年かかって長い長い旅をしている部分を描いた絵本がないので、そこを描きたいと思っています。
───どんな作品になるのか、来年の夏が楽しみです。最後に改めて絵本ナビユーザーへメッセージをお願いします。
この絵本が生まれたきっかけはとても個人的なことでしたが、誕生日は世界中のだれもが持っていて、一年中いつも誰かの誕生日だと思うんです。今生きている場所はちがっても他者の存在を認めて尊重することや、自分が生まれてきたという神秘的なことに思いを馳せるのも大切なことだと思います。
郷内:編集として絵本を作っているときに、この作品は「おめでとう」もそうですが、「ありがとう」の本だと感じました。「生んでくれてありがとう」、「育ってくれてありがとう」……。誕生日におめでとうと一緒にありがとうの気持ちも感じてもらえたら嬉しいです。
───ありがとうございました。『たんじょうび おめでとう』と『あなたがだいすき』2冊一緒に、プレゼントにオススメの絵本ですね!
●イベント情報「鈴木まもる鳥の巣World〜生命をまもる形〜」
インタビューでもおはなし頂いた、鳥の巣が東京にやってきます!
日程:2015.10.3(土)〜25(日)
インタビュー・文:木村春子 写真:所靖子