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日・中・韓平和絵本 へいわって どんなこと?

日・中・韓平和絵本 へいわって どんなこと?(童心社)

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「とんでいけ」に込めた、親から子へのメッセージ

───物語の前半の絵は、とてもあたたかなピンク色ですが、どんなイメージで描いたのでしょうか?

絵を描くときはいつもそうなのですが、自分の中に色のイメージとその色を作る手順のようなものが浮かぶんです。イメージの中の完成図を、実際に画材を使って再現している感覚です。生まれてから、親に溺愛されていたのが、だんだん成長していくごとに、親から離れて自分の生きる場所や一緒に暮らす相手を見つけていくことが大切だと思うので、前半は温かく濃密な色、後半はさっぱりした色の構成になりました。

ポプラ社 郷内:鈴木先生の原画は、何層にも色が重なりあっていて、決して平面に見えない、立体のような奥行きを持っているんです。今回は特に「生まれてきてくれてありがとう」という感謝の気持ちが、絵全体からあふれているように思いました。

───前半の暖色系から一転して、後半で青空に変わりますよね。「せかいは ひろいぞ どこへでも だれとでも とんでいけ」というメッセージとピッタリ合っています。

ポプラ社 郷内:ここの場面を見て感じたのは、私を含め多くの母親は、「とんでいけ」と思っていてもなかなか言葉にできないと思うんです。「見守っているよ」とか、「辛くなったら帰っておいで」といってしまうのが母親だと思います。でも、鈴木先生は父親として「いけよ」といえる。それは突き放す意味ではなく、根底にちゃんと「大好きだよ」という思いがある。「とんでいけ!」といってもらうことが子どもたちにとってどれだけ大切なのか、原稿をいただいて、ハッと気づきました。ぜひ、この絵本を通して、お子さんの背中を押してほしいと思います。

前回のインタビューでもおはなししましたが、ぼくも子どもが小さい頃はずっと溺愛していましたよ。それでいいんです。でも、ある程度、息子が大きくなってくると、同じ屋根の下に男が2人いるのは自然界の摂理として違和感が生じてくるんですよ。生き物にはそれぞれテリトリーがあって、子どもは自分の生きる場所を探して出ていくのが自然。ぼくは今でも息子のことを好きだけど、彼は自分のテリトリーを探して、自分の生きる場所を見つけて巣立っていった。完全に息子が飛び立っていったから、「とんでいけ」というメッセージが作品化して描けたんだと思います。

───以前のインタビューの時期では、まだ「とんでいけ」というメッセージはでなかったかもしれないということですか?

そうですね。ぼく自身も前回はまだこういう状態ではなかったんでしょうね。機が熟していなかったから『あなたがだいすき』の続編がなかなか出てこなかったんじゃないかと思います。親として息子が生まれてから巣立つまでを体験できた今だから、形になった絵本だと思います。

───では、今はまだ「とんでいけ」といえないお父さんお母さんも、お子さんの成長と共にこの絵本に込められたメッセージを本当の意味で理解する瞬間が来るかもしれないということですね。

小さいときはしっかり溺愛して、子どもが成長する時々で関わり具合も変わってくるのが自然だと思います。人間関係や仕事、経済的なところまで親がいつまでも関わりだすと、子どもの自立の道を親が閉ざすことに繋がってしまうのではないでしょうか。赤ちゃんのときと“大好きさ”は同じでも、それぞれ別の生き物なのだから、それぞれの道を歩む方がよいと思います。親子から一人の個人として、お母さん、お父さんという役割を終えて、自分の幸せをそれぞれが見つけるようにするのが建設的で自然だと思います。老いてくるとまた違ってきますけどね。

───鈴木さんのように子育てを終えた世代の方からの言葉は、若いお父さんお母さんにも心強く響くのではないかと思います。絵の中にはわが子が生まれた瞬間の幸福や、成長を見守るあたたかな眼差しを感じるのですが、生まれる瞬間、暗いところから明るいところに向かっていく場面や、「かみさまが くれた たからもの」のところでは特に神々しい感じがしました。

実は、この神様は奥さんがモデルなんです。

───そうなんですか?! とても優しい慈愛に満ちた表情は、竹下文子さんのお顔なんですね。

本人にはまだ見せていないので、本が出版されたらプレゼントしようと思っています。

───息子さんだけでなく、奥様へのサプライズが込められた絵本なんですね。絵本をプレゼントされた息子さんがどんな反応をするのか、とっても楽しみですね。

そう思っていたんですが、今年、息子は誕生日に彼の奥さんと一緒にアラスカにオーロラを観に行く予定で、この絵本のように、ほんとに飛んで行っちゃうんです。(笑) だから当日、この絵本を渡せないんですよ。仕方ないので、日本を出発するときに包んで渡して、誕生日に現地で開けてもらおうと思っています。

───息子さんの反応が直接見られないのは残念ですね。どんな様子だったのか、とても気になります……。


1歳の誕生日プレゼントは手作りの木馬!

───今年のプレゼントは絵本ですが、今までも息子さんにいろいろプレゼントを贈っていたのですか?

うちの近所にはお店もないし作るのが好きなので、たいてい手作りの品をプレゼントしていました。1歳の誕生日には、ちょうどいい間伐材があったので、それで木馬を作りました。あとは、角材を使っておもちゃを作ってプレゼントしたりいろいろです。

───これが、そのとき作ったプレゼントですね! すごくかわいいです! 来年以降もプレゼントは贈る予定ですか?


鳥の巣の中に木で出来た乗り物が!「ピン・ポン・バス」や「きゅうじょたい」のモデルです。

彼はもう巣立っていったので、どうでしょうか……(笑)。 来年になってみないとわかりません。

───『たんじょうび おめでとう』の前に描かれた『あなたが だいすき』はどういうきっかけで生まれたのですか?

これはシンプルに「好きだ」という気持ちを表現したくて描きました。

───ギュッと抱きしめられている動物の姿が、とても愛らしくて、ポカポカと温かい気持ちになる絵本ですよね。最後の部分に歌も載っていて思わず口ずさみたくなっちゃいます。


思わず口ずさみたくなるメロディーです。

この歌は、ファンの方が贈ってくださったんです。絵本を見ていたら自然と歌がうかんできたそうで、とてもいい歌だったので、増刷の時に編集の郷内さんにお願いして楽譜を載せてもらいました。歌にすると、普段照れくさくてなかなかいえない言葉も伝えやすくなるんですよね。子守唄のような感じで、歌ってもらえたら嬉しいですね。

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鈴木まもる(すずきまもる)

  • 1952年、東京都生まれ。東京芸術大学中退。「黒ねこサンゴロウ」シリーズ(偕成社)で赤い鳥さし絵賞を、『ぼくの鳥の巣絵日記』で講談社出版文化賞絵本賞を、『ニワシドリのひみつ』(岩崎書店)で産経児童出版文化賞JR賞を受賞。
    主な絵本作品に『ピン・ポン・バス』『がんばれ!パトカー』(偕成社)、『せんろはつづく』『つみきでとんとん』(金の星社)、エッセイに『バサラ山スケッチ通信』(小峰書店)などがある。また鳥の巣研究家として 『日本の鳥の巣図鑑 全259』(偕成社)、『鳥の巣いろいろ』(偕成社)、『鳥の巣の本』『世界の鳥の巣の本』『ぼくの鳥の巣コレクション』(岩崎書店)、『鳥の巣みつけた』『鳥の巣研究ノート』(あすなろ書房)などの著書があり、全国で鳥の巣展覧会を開催している。

作品紹介

たんじょうび おめでとう
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作:鈴木 まもる
出版社:ポプラ社
あなたがだいすき
あなたがだいすきの試し読みができます!
作・絵:鈴木 まもる
出版社:ポプラ社
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