もうなかないよ、クリズラ もうなかないよ、クリズラ
作: ゼバスティアン・ロート 訳: 平野 卿子  出版社: 冨山房 冨山房の特集ページがあります!
読み手の年齢を選ばない子どもから大人まで、それぞれの感性で理解してうけとめる事のできる「みんなの本」です。
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大反響!『こどものとうひょう おとなのせんきょ』復刊かこさとしさんインタビュー

1959年のデビュー以来、春には91歳を迎える今も現役で活躍を続けるかこさとしさん。今まで出版された絵本の中には、ザンネンながら、すでに絶版、品切れされている作品もあります。復刊ドットコムでは、絶版となったかこさんの絵本の中から、特に読者の要望の高い作品、今また多くの人に読んでほしい作品を復刊させています。2016年8月、『こどものとうひょう おとなのせんきょ』(復刊ドットコム)が復刊されました。発売後、フェイスブックやツイッター、テレビなどで反響を呼び、たちまち重版がかかったという1冊です。今回、かこさとしさんに『こどものとうひょう おとなのせんきょ』を出版した当時の思い、復刊されることへの感想などお話を伺いました。

こどものとうひょうおとなのせんきょ
作:かこ さとし
出版社:復刊ドットコム

「選挙」って何? 「民主主義」って、どういうこと? フェイスブック、ツイッターで大反響! 稀代の名著が緊急復刊!! 2016年で90歳。絵本作家として絶大なる人気を誇る、かこさとし。 そのかこさとし先生が、今から30年あまり前に描いた「民主主義の絵本」です。 ハフィントンポスト(日本版)への掲載をきっかけに、フェイスブックやツイッターなどを通じて大きな反響を呼んでいる本書。 日本社会も世界各国も、混迷を深める現代に、もう一度「民主主義」のあるべき姿を問いかける。優しい絵本の中に、大切なメッセージがいっぱい詰まった一冊です。 いつか選挙権を持つ子どもたちも、18歳で初の選挙に参加する人たちも、そして大人になってしまった人たちも…。 今こそ、この名著で「民主主義」について考えてみましょう。

選挙について、民主主義について、親子で考えるために……。

───2016年は、今まで20歳以上だった選挙権が、18歳以上に引き下げられた歴史的な年となりました。この年に『こどものとうひょう おとなのせんきょ』が復刊されたことは、とても意味があることのように感じます。

私自身、忘れ去られた本かと思っていたので、この度、復刊してくださり、また多くの子どもさんたちに読んでもらえることになったのは、とてもありがたいことだと思います。

───この作品は33年前に描かれたものですが、候補者のポスターが町中に貼られたり、選挙カーから大きな声が流れてくる様子など、今も変わらない様子が描かれていてとても意外でした。

そうですね。今の社会の状況は、33年前と、そしてそれ以前から行われていることと、そう変わらないかもしれません。その変化をしていない様子も絵本から感じていただけるかと思います。

───おはなしでは、町の中にある児童館前の小さな広場の使い方を巡って、争いが絶えないので、児童館に集まる子どもたちが、投票で広場の使い方を決めようというストーリー。ちょうど大人たちが選挙をしていて、それを見た子どもたちが「投票をしよう」と決めるまでの流れがとても自然だったのですが、かこさんが活動されていたセツルメント(※)の中でも、同じようなやりとりがあったのでしょうか?

※セツルメント活動……学生などが労働者地域に対して、宿泊所、託児所などの設備を設け、住民の生活向上と自立のための助力をする社会事業。

私がセツルメント活動に関わっていた時代、学校では「多数決原理」というのが主流で、子どもたちの多くは何でも多数決。数が多い方に意見が持っていかれるというやり方を学んでいたようでした。でも、セツルメントや子ども会はそのようなシステムから隔離された場所。子どもたちは少数どころかひとりでも、やりたいことがあったら実行していました。たとえ反対意見が大多数を占めていたとしても、そこは子ども同士で意見を言い合い、結果的に実行力のある方が動かしていたんです。

───やりたいことをやる。やりたい子たちが率先して実行する。とてもシンプルで分かりやすいですね。

例えば、ある日などは、子どもたちがガリ版で新聞を作りたいと言いました。どうやら、子ども会に参加している大学生がガリ版で地域の方たちへ配るビラを作っている様子を見て、自分たちもやりたいと声を上げたようなのです。でも、子どもはインクで服を汚したりするじゃないですか。だから、大人たちは最初、心配していました。それでも、やりたいと声を上げるので、私は私物のガリ版印刷機を提供して、子どもたちの新聞作りを見守ることにしました。

───子どもたちは新聞を完成させることができたのですか?

はい。さらに週刊で「こどもしんぶん」を発行していきました。この「こどもしんぶん」づくりをした子どもたちは10人くらいいたと思うのですが、周りの心配を押し切って実行したのは2人くらい。残りは2人に引っ張られる形で新聞づくりを手伝っていました。

───多数決よりも、実行力のある方にみんなの行動が動いていった一例ですね。

はい。私にとってもその「こどもしんぶん」は宝物。大事に取っておいていたのですが、残念ながらどこかにいってしまって、いまだに見つかっていないんです。

───それは残念……。

大人の社会でも、多数決よりも、このように本当に正しいことに目を向け、実行していく力のある方が先導して行っていただければ良いのですが、子どもの社会よりも複雑ですから、そういうわけにはいきません。ただ、多数を占めた方は、少数の意見を十分くみ取って、良いものは実行していくという態度であることが、民主主義の大事なところだと思っているんです。単に数が多い方に物事が動いていくということは、非常に良くないですね。

───絵本の中でも最初は数の多い野球のチームが投票で多数を占め、広場を使うことになりました。投票の結果を見て、喜んでいる野球チームの様子と、そのほかの子どもたちの表情、絵を見ているだけで子どもたちの気持ちが伝わってきます。

この投票のときに「つかいかたの いいんをえらぶ」という案も出てきます。これが、のちのち効いてくるのですが、ここではまだ、子どもたちはその意見の意味を理解できません。そして、ただ多数決によって決まったことに従うわけです。そうすると、また別の問題が出てきてしまうんですよ。

───野球のチームが使えない雨あがりに、投票で遊べなくなった子どもたちが広場を使い、野球のチームとケンカになってしまうということですね。6年生のトキあんちゃんの発案で、再び投票を行うことになりますが……。

前の投票でバラバラに分かれていた、野球のチーム以外の子どもたちが、相談して集まったため、投票で多数になり、広場を使う権利が「おにごっこなどを する」チームに移ってしまいます。

───これでようやく、一件落着となるかと思いきや、「おにごっこなどを する」チームが鬼ごっこ以外の遊びをしていることを野球チームの子どもたちが見かけてしまい、再びケンカになります。再びトキあんちゃんが仲裁に入りますね。そこで、「かずが おおかったら なんでもやって いいなんて、いったい、だれが きめたんだ。」と子どもたちに尋ねます。「みんしゅしゅぎだもん、たすうけつだよ。」と答えた子に向かって、トキあんちゃんが発した言葉が、かこさんが伝えたかった「民主主義の真髄」ですね。

そうです。1983年にはじめて『こどものとうひょう おとなのせんきょ』が出版されたとき、あとがきにも書きましたが、「少数でも優れた考えや案を、狭い利害や自己中心になりやすい多数派が学び、反省する、最も大切な『民主主義の真髄』をとりもどしたいという願い」で書いたものです。

───トキあんちゃんの提案を受けて、子どもたちが再び投票をすることになります。しかし、今度は広場を誰が使うのかを多数決で決めるのではなく、広場の使い方を決める委員を選び、その委員が考えたやり方に対して賛成か反対かを投票するというやり方。「ひろばのつかいかたいいん」に選ばれた子どもたちは、ほかの子たちの考えをよく聞いて、みんなが納得する広場の使い方を提案します。
失敗を繰り返しながらも、子どもたちが正しい民主主義の在り方について考える内容は、とても分かりやすく、共感される方も多いと思います。

ありがとうございます。

───そこで「めでたし めでたし」で終わるかと思ったのですが、最後に子どもたちが大人たちの行っている「選挙」によって、自分たちの遊び場がなくなってしまうのではないかと、私たちへ問題を投げかけます。このような終わり方は絵本ではとても珍しいと思いました。

絵本を読んだ子どもさん自身が自分の頭で判断して動かないと、どんないいことでも長続きしないと思うんです。それは絵本だけでなく、日常のあらゆることに当てはまる話で、上から押し付けたのでは長続きしません。たとえ、いい学校に行って、塾へ入って、良い先生と出会ったって、本人がやろう! と決めなければ、勉強も進まないし、人間としても成長しない。ただ、本人の力を引き出してあげる雰囲気を作るのは大人の責任でもあるし、教育というものの一番大事なところだと思うんです。

───この絵本を読んだ多くの子どもたちやその家族、そして先生たちが、投げかけられた問題について話し合い、「民主主義の真髄」をきちんと考えるきっかけにしてくれると良いですね。

出版社おすすめ

  • あっぷっぷ
    あっぷっぷ
    作:中川 ひろたか 絵:村上 康成 出版社:ひかりのくに ひかりのくにの特集ページがあります!
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「ひらこう! とびらえほん」シリーズ 編集者  中村美早紀さんインタビュー
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かこさとし(加古里子)

  • 1926(大正15)年福井県武生町(現・越前市)生まれ。1948年東京大学工学部卒業。工学博士。技術士。
    民間化学会社研究所に勤務しながら、セツルメント活動、児童文化活動に従事。1959年から出版活動にかかわり、1973年に勤務先を退社後、作家活動とともに、テレビニュースキャスター、東京大学、横浜国立大学などで児童文化、行動論の講師をつとめた。
    また、パキスタン、ラオス、ベトナム、オマーン、中国などで識字活動、障がい児教育、科学教育の実践指導などを行い、アメリカ、カナダ、台湾の現地補習校、幼稚園、日本人会で幼児教育、児童指導について講演実践を行った。
    『だるまちゃんとてんぐちゃん』『かわ』(福音館書店)、『からすのパンやさん』(偕成社)、『富士山大ばくはつ』(小峰書店)など、500冊以上の児童書の他、『伝承遊び考』(全4巻・小峰書店)など著書多数。
    土木学会著作賞、日本科学読物賞、児童福祉文化特別賞、菊池寛賞、日本化学会特別功労賞、神奈川文化賞、川崎市文化賞、日本児童文学学会特別賞、日本保育学会文献賞、越前市文化功労賞、東燃ゼネラル児童文化賞などを受賞。
    現在、科学、文化、教育に関する総合研究所を主宰。

作品紹介

こどものとうひょうおとなのせんきょ
作:かこ さとし
出版社:復刊ドットコム
だむのおじさんたち
作・絵:加古 里子
出版社:復刊ドットコム
ならの大仏さま
作・絵:加古 里子
出版社:復刊ドットコム
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