- だれもしらない バクさんのよる
- 作・絵:まつざわ ありさ
- 出版社:絵本塾出版
バクさんはみんなが寝静まった頃に起きてきます。だから誰もバクさんを知りません。 バクさんの仕事はこわいゆめを食べこと。バクさんはどんなこわいゆめでも食べちゃうことが できるのです。今日も”こわいゆめほうちき”がこわいゆめを見ているひとを知らせてくれます。 こわいゆめを食べ終えた帰り道、バクさんが出会ったのは、さびしいゆめ。 こわいゆめしか食べたことがないバクさんは困ってしまいます。 さびしいゆめをどうするのでしょうか・・・。
●「緊張で、ハゲてしまう夢を見ました(笑)」
───『だれもしらない バクさんのよる』は、バクさんが動物達の寝た後に仕事をしていることや、こわい夢だけを食べるといった設定がとてもユニークでおはなしにどんどんひき込まれていきました。バクさんを主人公にしたアイディアはどこから生まれたんですか?
私自身、こわい夢を見ることが多くて…。それは心配事があったり、次の日に緊張することがあったりしたときなんですけど、以前友達に、こわい夢を見るという話をしたとき、「こわい夢は夢の中で解決することもあるんだよ」って言われて、夢を解決してくれる誰かがいてくれたらいいなと思ったことがきっかけでした。
───ご自身の実体験からバクさんが生まれたんですね。
そうなんです。実は今日のインタビューもあまりにも緊張しすぎて、朝起きたら頭がハゲている夢を見たくらいなんです(笑)。
───それは一大事ですね!(笑)でも、私もこわい夢を見ることがあるので、すごく気持ちが分かります。動物達の見る夢は、「嫌いな食べ物に追いかけられる」「こわい歯医者さんに治療される」…と子ども達が共感する夢なんですが、まつざわさんも絵本に出てくるような夢を見たことがあるんでしょうか?
大人になってからは少なくなりましたが、子どもの頃は嫌いな食べ物の夢も見ていたんじゃないかと思います。あ、でもブロッコリーは昔から大好きでしたよ(笑)。
───こわい夢を食べに行くとき、バクさんもこわがっているんですよね。それの表情がとても面白いんですが、結構ハードなお仕事ですよね。バクさんは最初から最後まで他の動物達とも会いませんし、タイトルにある通り、バクさんがこんなに活躍していることを「だれもしらない」んですよね。そう考えるとかなり孤独なんじゃないかと思ったんですが…。
バクさんはみんなが安心して眠っている姿や寝顔を見るのが喜びであって、誰かに自分のことを知ってもらったり、感謝されるのを目的としていないんですよ。自分の夢を食べるという仕事に満足していて、ひそやかに仕事をやり遂げることにやりがいを感じているキャラクターなんです。
───かっこいい!プロフェッショナルですね。
バクさんの種類や性格なども決まっているんですか?
───枕元に夢に関する本が並べてあったり、仕事に対する真摯な様子がすごく伝わってきます。
まつざわさんのプロフィールを見て気になったのですが、現在、歯医者さんに歯科助手としてお勤めなんですよね。
はい。今日も午前中は歯医者さんで働いていました。
───絵本を描く前から歯医者さんで働いていたんですか?
それが、バクさんを描き始めたときは、別のところに勤めていたんです。そのときたまたま、歯科医院で募集があって「これは!」と思い、面接をして歯医者さんに勤めることになったんです。
───偶然だったんですね。歯医者さんに勤めることになって、絵本の歯医者さんのシーンがよりリアルになったりしましたか?
それはもう(笑)。歯医者さんに勤める前は、資料が少なくて細かい器具とか描けなかったんですけど、歯医者さんに勤めるようになってからは、開院前に写真を撮らせてもらったりして、資料がどんどん増えていきました。歯医者さんのページはかなりリアリティがあると思います。
───たしかに、治療室の細かいところまで描き込まれていますよね。では、実際の歯医者さんもタコさんに似ているんですか…?
そこは、ノーコメントで(笑)。
───この歯医者さんのページだけでなく、どのページもとても細かい部分まで描き込まれていますよね。バクさんの部屋の中の小物とか、どの動物の家か一目で分かるような家とか…、何度見ても絵の中で新しい発見ができるのがとても楽しいです。
「絵本を読んだ子が、ここを見つけてくれるかな…」と思いながら遊びを入れていくのが好きなんです。絵本の勉強をしているときに「絵の中に描かれていない世界も、ちゃんと作り上げなければいけない」と教わったことがあって、そのときに島田ゆかさんの「バムとケロ」シリーズを思い出したんですね。あの絵本の中に出てくるタンスとか、戸棚とかには、中に何が入っているのか島田さんはきっと分かって描いているんだろうなって思えて、私もそういう風に絵本を作っていきたいと感じたんです。