ジョン・バーニンガムは好きな作家ですが、あの奔放な絵のイメージとは違和感を覚えたのです。
なんと夫婦共作だったのですね。
ヘレン・オクセンバリーは『きょうはみんなでクマがりだ』や『三びきのかわいいオオカミ』で、楽しい絵とちょっと観点を変えたもののとらえ方で気になっている作家でしたが、この初共作には驚きを感じました。
この作品は奥さんの絵でなんとも楽しいお話ですが、バーニンガムが絵を描いていたら印象は随分と違っていただろうなと思います。
「あかちゃんがくるのよ」とお母さんが坊やに話すところから話が始まります。
坊やにとっては未知の世界。
いろんな疑問や、想像がわいてきます。
次第におなかが大きくなっていくお母さんと坊やとのコミュニケーションが見事。
坊やの想像する世界も見事。
現実の世界と夢の世界の描き方にさりげない技巧を加えたオクセンバリーさんの描き方が、とても素晴らしいのです。
坊やは生まれてくる妹か弟にいろいろな夢を見ます。
楽しい夢、不安な夢…。
そして、いよいよ赤ちゃんが生まれるときには、おじいちゃんに得意そうに自分の見た夢を話します。
ところで、この絵本が見事なだけにちょっと不安を感じてしまいました。
お父さんの姿がどこにも見えてこないのです。
これってバーニンガムさんの世界ではないような気がします。
ストーリーには母子家庭だというメッセージが入っていないので、絵の中にお父さん自身かお父さんの存在感を描いても問題ないと思うのですが。
バーニンガムさんの『アボカド・ベイビー』を再読して、その違いを再確認。
父親としては、お父さんの印象があまりに薄いことに寂しさを覚えた次第です。