『 すじのまがった悪者には、勇気のねぎじるぴゅるるっととばす
畑生まれの正義の味方、ねぎぼうずのあさたろう 』
1999年に第1巻「ねぎぼうずのあさたろう とうげのまちぶせ」の登場以来、
その強烈な個性と、「浪曲風痛快チャンバラ時代劇」という他にはないジャンルで
大人から子どもまでを虜にしてきたこのシリーズ。
現在は全7巻、衰えることのないあさたろうの魅力が更なるファンを増やし続けています。
すごろくも出ています!↑
そして昨年(2008年)10月からはTVアニメ版としてもスタート!
また新たなあさたろうの世界が広がり続けています。
絵本ナビでも放送スタート記念として東映アニメーションさんに取材をさせて頂いています。
こちらからご覧下さい>>>
※2009年3月から九州朝日放送で、4月からは長崎文化放送でもスタート>
詳しくはこちらへ 東映アニメーション>>>
更に!
今月末にはついに・・・あさたろうのぬいぐるみも発売が決定しました。
▲かなり忠実に再現されています。一番右はなんとペンケース!
(ねぎ畑から飛び出す前ですね・・・)
そんな盛り上がりを見せる「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズですが、
この度絵本の出版をされている福音館書店さんに多大なご協力を頂きまして、
ご存知作者の絵本作家飯野和好さんへ取材が実現いたしました!!題して・・・
『絵本ナビに飯野和好さんがやって来た!』
着流しに素敵な帽子姿で颯爽と登場の飯野さん。
とてもお洒落で格好いいのです!
最近我が家でも息子とこのシリーズを愛読しているイソザキが、
たくさんのレビューを寄せて下さっている読者の方々の代表として、
「あさたろう」に関する素朴な質問から、絵本作家としてのお仕事の事まで
たっぷりお話をお伺いさせて頂きましたよ。お楽しみに・・・
■ 最初は「ねぎ」じゃなくて「たまねぎ」だった!?
既刊7冊を熟読して、すっかりあさたろうの世界にはまっている方でも、
今回初めて「あさたろう」の絵本の表紙をご覧になった・・・という方でも、
まず「どうしてねぎなんだろう?」という素朴な疑問が頭に浮かんできてしまうのではないでしょうか?(正確にはねぎぼうずですね。)
そこで飯野さんに率直にお伺いしたところ、「ねぎぼうずのあさたろう」が誕生するまでの
そのきっかけのお話を丁寧に語って下さいました。
あさたろう誕生が誕生するまで・・・
「若い頃は、作品のテーマとしてマザーグースやグリムなど西洋のファンタジーを
ずっと追いかけていました。憧れもあったんですね。
でも洋風な画風の表現というのは何十年と続けて行くうちにちょっと行き詰る事もあったりして。
そこで大きなきっかけとなったのが、イタリアのボローニャのブックフェア、
絵本「ハのハの子天狗」の原画を展示する為にイタリアまで訪れた事だったんです。」
その年のブックフェアは日本特集だったそうで、多くのベテラン絵本作家さんの原画と並んで
展示されたそうです。
「初めて訪れたヨーロッパでの刺激はとても大きく、
逆に日本人としての自分をとても意識させられる事も多かったんですね。」
「ハのハの子天狗」は飯野さんにとっても初めての時代もの、他の国の人達にとって、
とても興味深かった様で、反響も大きかったそうですよ。
「帰国すると、ちょうどすぐに新しい仕事がいくつか入ったんです。
まずはクレヨンハウスさんから「くろずみ小太郎旅日記」。
そして小学館さんの幼年誌「学習幼稚園」連載のお話。
主人公を人間の男の子、炭と来たので次はどうしようかな・・・と迷っていた時に
『掛け軸展』という展覧会に参加する機会がありまして。
そこで野菜をテーマに絵を描いたのですが、それだけでなく
きゅうりは浪人風、玉ねぎは玉ねぎ紋次郎など侍ものとして描いたんです。」
玉葱でたまねぎ紋次郎!
画像を見せて頂きましたが・・・これがもしやあさたろうのルーツ!?
「侍を描いているうちに、そういえば子どもの頃三度笠をかぶった渡世人に憧れて
チャンバラごっこをした事などを思い出してね。これでやってみようかな、と。
そうすると玉葱はちょっと語呂が悪いなあ・・・ねぎだったら ねぎぼうずがあるねえ。
野菜というのは朝早く採れると美味しいし・・・
板割浅太郎(いたわりのあさたろう)というのもいるし(浪曲国定忠治伝に登場)
あさたろうがいいねえ・・・と次々浮かんできて。」
こうして「ねぎぼうずのあさたろう」は誕生したんですね!
「学習幼稚園」の連載として3、4話書いたそうですが、とても気に入ったので
これを絵本にしてみようと思われたそうです。更に、
「そういえば子どもの頃浪曲が気に入って聞いていたなぁというのも思い出して、
すぐレコード屋に買いに行き改めて聞き直してみたら旅人ものですごく面白くて。
すぐに浪曲の出だし部分をつくって、絵を描き足してみたり。絵本としてつくっていったんです。
依頼された訳でもなかったので、出来上がったものを自分で持ち込みに行ったりして。
それからが結構大変だったんですけどね。」
飯野さんのご実家は代々受け継がれてきた農家、野菜への馴染みはいやという程あったそうで。ねぎは風邪の時などに喉に当てて寝たりされていたそうですよ。(本当に効くんですね!)
「絵本をつくり始めると、ねぎってやっぱりすごいな、と。
一本筋が通っているな、とか。ねぎ汁を実際に目につけてみたらすごい痛さだ!とか(笑)。」
■ あさたろうの魅力の秘密を探ってみよう!
そうして生まれた「ねぎぼうずのあさたろう」が登場してから早10年、
シリーズは既に7冊目。
ここまで愛され続ける事になる理由にはいくつものポイントがあるのでしょう。
その人気の秘密を一つずつ探っていきましょう。
浪曲絵本
この絵本の大きな特徴はまず「浪曲絵本」であるという事ですよね。
「街道を行く話、旅人、股旅もの・・・そして
今までにないようなものをと考えているうちに『浪曲絵本』が閃いてしまったんですね。
また、おっかさ~んと叫ぶ場面があるのですが、
これも読む人に言わせちゃおう、という目論見もあったりして(笑)。
この絵本は色々やってもらう事が多いんですよ。」
絵本の1ページ目を開くとまず目につくのが「二代広沢虎造※風浪曲節で」という表示から浪曲節が始まる導入部分。
※ 2代目広沢虎造という方はのは戦前から戦後にかけて一世を風靡した浪曲師。特に「清水の次郎長伝」で人気を博し、ラジオ放送の普及も相まって国民的に親しまれていたそうです。
「子どもの頃、親が聞いていたラジオから流れてくる浪曲が好きで
中でも虎造がすきでよく真似していたなあと思い出したんです。
『清水次郎長』の話がとても好きで。
子どもながらに虎造は他の人とは一味違ってテンポ良く、馴染みやすく、真似しやすいと
感じていたんでしょうね。
この絵本を描くにあたって改めて聞いてみると、虎造の芸は勿論、
話の筋立てなども『こんなに面白かったんだ』と。」
浪曲と言うのは節(歌)あり、セリフあり、音楽ありだそうで、和製ミュージカルとして
置き換えられそうですね(何ていうと怒られでしょうか)。テレビのない時代に大衆娯楽として
親しまれてきたのもうなずけます。ちょっと聞いてみたくなってきますね・・・。
「『浪曲が面倒くさいからこの絵本は読まないんです。』なんて言われる事もありますが、そんな事言わないで、せっかくだからちょっとでも興味を持ってくれたらいいなぁと思ってるんです。」
と飯野さん。(そんな方の為にも、読み方のコツなどを教えて頂きましたよ。後ほど・・・)
表情へのこだわり
次に、物語の主人公「あさたろう」の魅力は何と言ってもその表情!
顔がこんな大きくてまん丸顔で・・・とくると何だか可愛らしいキャラクターになりそうですよね。
ところがどうして、なかなかの男前、時には色気さえ感じるあさたろう。
表情にはこだわりがあるのでしょうか?
「こだわりは、あります。」と飯野さん。
「時代劇というのは、役者さんの目力がとても大事。
登場人物たちの生き方がとてもはっきりしています。
私はその人のものを見る時の眼差しというのが好きなんですね。
悪者はわるものぶっているし、あさたろうなど旅人は旅人としての世の中を見ています。
迷いがないのでその目もきりっとしてくるんですね。」
映画が大好きな飯野さん、時代劇映画も子どもの頃から親しまれきたそうです。
「だから、かつての時代劇は目張りがすごくて・・・でも、それが結構好きだったり。
また時代劇スターは顔がとても大きくて迫力があったんです。
片岡知恵蔵も大変な顔の大きさでした。」
そう言えば、きゅうりのきゅうべえはあんなに顔が大きくて長いのに、
何だか立ち姿がとても格好いい。
「きゅうべえは、座頭市物語にでていた平手造酒役の天地茂がモデルです。」とスラスラ・・・
詳しいのです。
飯野さんの絵本の登場人物の殆どに~風というモデルがいるそうですよ。
そうは言っても、巻を重ねるごと様々な一面を見せるあさたろうの表情も見逃せません。
6巻で言うと・・・
にきちの手紙を読むあさたろうの気の抜けた顔。
「寝起きはみんなあんな顔になるかなと思って(笑)。」
更に赤とんぼを頭に乗せながら立ち止まるあさたろうの表情もかなり複雑。
どうしてあんな表情が思い浮かぶのでしょう。
「仕事柄、人の表情を観察するのが好きなんですね。」
そう聞くと、また改めてあさたろうの表情を意識して読み直したくなってきますね。
▲お父さんのこの表情も何だか堪りません。
キャラクターオーディション
あさたろうは勿論、あさたろうを盛り上げる周りにもとても魅力的なキャラクターの人達が
沢山登場します。
あさたろうの相棒、にんにくのにきちはかなりのインパクトのある顔ですが、
意外と女性に人気があったりするのが面白いですね。
「絵本をつくる際、まずキャラクターをキャスティングしなければいけないですね。
だから自分でオーディションを開催するんです。
色々な人が来るんですねぇ。だからかなり厳しいですよ。」
なんと!・・・勿論オーディション参加するのは飯野さんによって描かれた人達です。
敗者復活とかあるのでしょうか?
「からすうりのきんぞう(7巻登場)はかなり前からいたんですよ。
あれは本当に悪いですよ・・・。」
近年まれにみるほどの悪役顔。是非直接ご覧ください。
きんぞうは、まだまだこれからとんでもない事になるとかならないとか・・・。
▲きんぞうは「その7」に登場します。
服装が凝っている!
まわし合羽に三度笠・・・股旅姿のあさたろう。
以前、アニメ版あさたろうの取材をさせて頂いた時に、
「原作絵本でしっかり時代考証がされているので、特にあさたろうの服装なんかは
殆どそのままなんです」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。
「もともと服飾デザイナーの仕事の経験もあったりして
洋服や着物はとても好きなんです。
特に着物は子どもの頃から親しんできたという事もあって
何となく雰囲気はわかっているんですが、明治以前のものなどは
資料で調べて時代考証などはきちんと行っています。」
その凝り様は飯野さんのお話し会でのお姿を見れば一目瞭然ですね。
こちら>>>
こんな温かいエピソードも聞かせてくださいました。
「あさたろう絵本関連イベントなどに呼ばれた時(もちろん股旅姿です)、
最初の頃はわらじなども適当に縛っていたのですが、
いらしていたお客さんに呉服屋の方がいて
『飯野さん、正式にはこうやって縛るんですよ』とわらじの縛り方を教わったんです。
また帯にしても、講演で一緒になった紙芝居のおじさんが
帯の粋な結び方を教えて下さったり。」
巻が進むにつれてどんどんお詳しくなっていったのですね。
「人の縁というのはとても有難いですね。
あさたろうというのは不思議なもので、この絵本を作ったときから
人の縁がどんどん膨らんで行くんですよね。
『ねぎぼうずのあさたろう』自体が人情話、人の縁の話なんですけど、
実際にもこんな、人との縁の深まりが沢山あって。
(横にいらした)有賀さん※もこの絵本が出来た当初からとても応援してくれていたんですよね。
何しろ変わった人だと思いましたね(笑)。」
※福音館書店ライセンス課の有賀さん、 「あさたろう」のぬいぐるみ商品化やアニメ放送の実現の為に東奔西走されています。今回のインタビューやアニメ版「あさたろう」の取材の件でも大変お世話になっています。他にぐるんぱ、だるまちゃん、きんぎょがにげた、トマトさんなどの商品化も!
股旅もの
「ねぎぼうずのあさたろう」は幕末が舞台です。
あさたろうは「旅人」という設定ですが、この時代にこういう「ひたすら旅をしている」人達というのは実際に多く存在していたのでしょうか?股旅とはどういうことなのでしょうか?
「股旅とは旅から旅へ股にかけるということです。
この時代は、一旦家を出て旅に出かけて、しばらく家に戻らないと戸籍を抜かれたんです。
だから、旅人というのは無宿人、帰ろうと思っても帰れない人達なんです。
訳ありの人も多いですね。」
そう言えば、あさたろうも最初追っ手であるやつがしらのごんべえから逃れての出発でしたね。
「一度旅に出れば二度と戻って来られないかもしれない。
でもここには居られない、またはここから出たい、だから旅を続ける・・・
という人たちは結構いたんです。」
現在で言う、戻ってくる事を前提としている「旅」とは大分意味が違うようですね。
「自分の心に中にはそういう股旅に対する憧れもあったんですね。
映画もたくさんありましたし。股旅ものの小説を数多く生み出した作家長谷川伸という人の
『瞼の母』はあさたろうのお話のきっかけになっています。
おっかさ~んと叫ぶシーンはこの話から来ています。」
「日本人の心のどこかにあるこういう部分、というのを絵本で表現していきたい
と思っていますね。
これは自分にとって、色々模索してきた中でやっと見つけた表現方法なんです。」
映画的な魅力
飯野さんの絵本には映画的な魅力がある、とおっしゃっている方がいらっしゃいました。
「映画が大好きなので、もともと映画のイメージがあってつくっています。
だから自然にそうなっていくのだと思います。
映画を絵本に置き換えてみて・・・絵本だと15場面になりますね。
自分もそこの世界にいたいと思い、どこから入っていくかを考えます。
映画でいうとカメラの視点ですね。
ページのめくりや場面展開は映画でいう所の編集。
この編集がとても大事、テンポの良さが決まってくるんですね。
いい映画程、あっという間に終わる感じがしますよね
導入やおわり方、余韻などもとっても大切です。」
まるで映画を撮っているかのようにつくられているのですね・・・。
語ってらっしゃる飯野さんの目も輝いて。
▲アングルを意識してもう一度絵本を開いてみると、また違う魅力を発見できます。
「だから映画と同じように、何度見ても楽しめるように小物とか服装、
背景も細かい部分まで丁寧に描いています。
街道から実際に見える風景は、視点の角度など考えて描いたりね。
村の境には必ず道祖神があったり、入り口に必ず大きな木などがあったり。
必ず目に入ってくるだろうと思うものは、描かないと気が済まないのでしょうね。
草の倒れ方にしてもリアルじゃないと嫌なんです。
見る人が見るとわかりますからね。」
本物が描かれているのは、子ども達にもちゃんと伝わるんですよね。
この辺りにも、子どもから大人までを虜にしてしまう秘密の大きなポイントがありました。
手描きの文字
飯野さんの絵本と言えば、文章が手描き文字である事が多いのも特徴的。
「絵と一体として考えているからでしょうか。確かに手描き文字が多いですね。
でも結構便利なんですよ。微妙に小さくしてみたり、太い文字で強調できたり。」
場面の中に自由に入ってくるこの手描き文字が好き、という方も結構いらっしゃいます。
「字は、絵が完成してから最後に描くので、とても楽しい作業です。
声を出しながら、笑いながら描いていますよ。
時代劇はセリフがはっきりしているので、読んでいても、書いていても気持ちいいですよね。
特に悪もののセリフの時はエヘヘと表情までつけて・・・」
絵本作家でなかったらちょっと(!?)という、人には見せられない状態になっているようで。
↓↓ ★2009年5月20日 <飯野和好さんインタビュー 後編>を追加しました!!
■ アニメ版「あさたろう」についてお伺いしました。
絵本「ねぎぼうずのあさたろう」がアニメになると初めてお聞きになった時の感想は・・・
以前の特集でたっぷり語って頂いてます! こちらからどうぞ!>>>
こももちゃんの登場について
アニメ版ではオリジナルキャラクターとして「こももちゃん」が登場します。 こちら>>>
キャラクター作りには積極的に参加されたと伺っています。
「はい。とても楽しく参加させて頂きました。」と飯野さん。
「あさたろうの世界を生きているものですから、新しい登場人物を入れましょう・・・となると
自分の中ではちょっと放っとけなかったんですね。
こももちゃんというキャラクターに関してはじっくりイメージを伝えてさせて頂きました。」
手を離れる事に不安はありましたか?
「制作される方々がとてもお話やキャラクターを大事にされている、という事が
すぐに伝わってきましたので、もう全面的に信頼しておまかせできました。」
こももちゃんをご覧になっていかがでしたか?
「僕が想像するよりとっても可愛いキャラクターが完成して、とても嬉しかったですね。」
シナリオを読む楽しみ
飯野さんにとってアニメ版の一番の楽しみというのがシナリオをもらう瞬間なのだそうです。
「映画ファンとしてたまらないですよね。
まだ完成前の作品のセリフなどをいち早く見ることができますし、参加できるって事がね。」
「毎回新しいシナリオを読む度に『名作だ!』を連発されていますよ。」と有賀さん。
「自分の作品なんですけどね(笑)。
絵本ですと決まったページの中でセリフを言っていますが、
それが動き出して合間のセリフなども喋ってくれるんですからね。
こんな嬉しいことはないですよ。」
時代劇の通の人が見ても・・・
飯野さんはアニメ版に於いても
「通の人が見ても納得できる、しっかりした内容にしてください。」
という事を、最初にしっかり制作される方へ話されたそうです。
アニメ版「あさたろう」もびっくりする程見応えのある、本格時代劇となっていますよ!
アニメ版「あさたろう」詳しくはこちらからどうぞ>>>
「絵本版としても、ちゃんと新作やその先のことも考えています。」
絵本版のこの先の予定も少しだけお伺いしましたよ。
どちらも楽しみですね・・・。
■ せっかくなのでちょっときいてみました!
そばがきげんえもん
せっかくの機会なので・・・私のお気に入りキャラクター「そばがきげんえもん」について
ちょっと聞いてみました。
「そば屋で蕎麦掻を頼んで、一杯やっていて・・・
ねちょねちょする感じが何か使えないかなぁと思ってて。」と飯野さん。
そうして生まれたそばがきげんえもん。
(ちなみにあさたろうは登場人物が全員野菜。蕎麦掻は加工品ですが・・・
加工品まではOKだそうです。)
一番気になっていたこと。
「ちょっ」の正しい読み方を教えて頂きました!
「セリフの後ちょっと間をおいて・・・小さく「ちょっ」と言ってください。
財津一郎の「あちょー」を少しイメージして。
それから、蕎麦掻のねちょねちょした感じも出して。」
財津一郎・・・!
すっきりしました。ありがとうございます。
▲顔色は悪いが腕は立つげんえもん。
お話し会でのポイント
絵本ナビ読者の方にはお話し会をされている方がとても多いのです。
声に出して読まれる時のポイントを教えて頂けますか?
「やっぱり浪曲絵本ですので、浪曲の山印の部分を唸ってもらいたいんですけどね。
広沢虎造風とはなっていますけど、私も結構自己流です。
自己流でも結構ですので、是非試してみてください。」
※アニメ版DVDの特典映像にも浪曲師国本武春さんの浪曲講座が収録されているそうですよ!詳しくはコチラ>>>
「後はせっかくですから広沢虎造の清水次郎長伝のCDを。『秋葉の火祭り』
ここから始めてもらえば。格好いいですから。足を踏み入れたい方は是非どうぞ。」
とはいえ・・・
「どうしても浪曲が出来ない、という方は、文体が七五調になっていますから、
語尾をちょっと伸ばして読んでもらえれば雰囲気が出ますよ。」
「もうちょっと軽く・・・と言う方は自分の節でも、講談調でも、また普通に読んでもらっても
勿論いいですよ。ちょっといつもと違うテンションだといいですね。
少し非日常的雰囲気で、自分を変えて読んでみると楽しいと思うんですよ。」
子ども達も喜んでくれそうですしね。
■ 絵本で表現したいこと・・・
絵本の魅力を発見して
飯野さんが絵本をつくりたい、と思われたきっかけは何だったのでしょうか?
「小さい頃はそんなに絵本が沢山ある時代でもなかったですから、
特に絵本に馴染みがあった訳でもなかったんですね。
(イラストレーター時代に)堀内誠一さんに絵を使ってもらった時に、
ファンタジーというものの魅力を教えてもらったんです。
そこで改めて絵本を見るようになりました。
絵本は描いた絵が本になる・・・という部分に相当惹かれました。
イラストが1枚の絵を描く仕事だったのに比べ、沢山の枚数の絵が描けますし、
その自分の描いた絵が本になる事によって1つの世界ができるなんて。
物語については小さい頃からもともと好きだったんでしょうね、
その物語と絵が一緒にできる絵本というのは、本当に魅力を感じました。」
ところが、当時としては斬新すぎた(?)飯野さんの画風は
なかなか絵本をつくっている出版社に受け入れてもらえず
絵本作家としての道を歩み始めるまでは長い時間がかかったのだそうです。
「もっと可愛い絵を・・・と言われてもなかなかピンと来なかったんですね。
生まれ育った環境を振り返ってみても、、牛やブタが沢山いて、
隣近所の女の子も泥んこでしたしね(笑)」
あ、じゃあ「ふようどのふよこちゃん」は・・・
「あれは・・・やっと可愛い絵が描けた!と思いましたね(笑)。
僕の中では一番の可愛さですね。」
やっと描けた!
表現について色々と模索をしていた頃の飯野さん、
特に目の表現について悩まれていたそうです。
その頃に、こんな出来事があったそうなんです。
「ある時、知人に会いにフィリピンのセブ島近くの小さな島を訪れたんです。
そこで現地の子ども達と一緒に遊んだり、絵を教えてたりして。
じゃあ、ともだちの顔を描いてみようという話になって、
僕も現地にいた目の大きな女の子の顔を描いたんです。
そこで目を一生懸命、丁寧に描いているうちに・・・」
初めて自分で納得する目が描けたそうなんです!
「描けた!!と思って。もう教えるどころじゃなくて早く日本に帰って絵が描きたいなと(笑)。
そして描いたのが「ハのハの小天狗」だったんです。
これで大分絵を描くのが楽になったんですね。」
その後は冒頭からお伝えした通りのご活躍です。
今後、絵本で描きたいものは・・・
表現方法も、表現したいものも見つけた飯野さん。
今後はどのような作品を描いていきたいと思われているのでしょうか?
「やっと見つけた表現方法として、日本のものをより深く探って行きたいですね。」
そうすると、やってみたい事が沢山ありそうですね。
「最近、九州の語り部の方のお話を、講演先で聞いてすごく感動したんです。
それを絵本にしてみたいなぁと思っています。
また、他にも今昔物語や泉鏡花の不思議な話などを絵物語として
子ども達に伝えていきたいとも思っていますね。
子ども達にはより深いもの、本物を伝えたいのです。
大人になってからじわーっと残るような作品をつくりたいと思っています。
自分が味わえる、というのも何より大きいですね。」
自分がそこの世界に入っていける作品、読んでいる方をそこに立たせてあげられる作品を
つくっていきたい、また表現されている方にはその事を伝えたいとおっしゃっていました。
■ 子ども達へ、絵本ナビ読者の方へ・・・
飯野さんに子ども達に向けてのメッセージをお願いしました。
「子ども達には絵本もとっても大事ですが、できるだけ外へ出て、
多少のケガを恐れずにどんどん自然の中に入っていってもらいたいです。
自然の中で、たくさんのにおいや空気を味わって欲しいですね。
それから絵本を読んで欲しいのです。
また逆に、絵本を読んでから実際に見に行くのもいいですね。
その両方が出来れば素晴らしいですね。想像力がとても鍛えられると思います。」
本物を知って本を読むのと、知らないで読むのでは
全然感じ方が違うのでしょうね。
その違いを感じる事が出来た時、また新たな世界が広がっていくのではないでしょうか。
それは大人にとっても言える事かもしれません。
それでは絵本ナビ読者の方へもお願いします。
「子どもが小さい時は、なるだけお母さんやお父さんの膝の上に乗っけてあげたり・・・
というスキンシップをして欲しいな、と思います。
僕が子どもの頃は、絵本はあまりなかったのですが、
新聞の連載小説の少年ケニヤなどを母の膝の上で読んで貰っていました。
今でも新聞のインクの匂いなどをかぐと、何とも言えない安心感を感じるのです。
子ども達はそういう感覚や思い出をずっと忘れません。
心のふる里、帰るところがある、と思う事ができれば、
大抵の事を乗り越えられる力がつくはずだと思っています。」
■ 直筆サインも描いて頂きました!
最後に直筆サインとイラストをお願いしましたら
快く描いてくださいました!
▲さらさらっと。
▲あっという間にあさたろうとにきちも!
こちら↓
全員で記念にパチリ。
右から2番目が飯野和好さん、一番左が有賀さん。
飯野和好さん、ありがとうございました!!
絵本ナビ読者の皆さんと一緒に「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズの新作を
首を長くしてお待ちしております。