「小さなこびと達が働く車を駆使してケーキを作る」
子ども達を喜ばせ、大人達を驚かせた前作『おたすけこびと』の登場からはや2年。
待望の第2弾が発売となりました!!一体どんな内容なのでしょう、気になりますよね・・・。
『おたすけこびと』の発売時に続いて、今回も絵を描かれているコヨセ・ジュンジさんが絵本ナビにいらして下さることになりました。
『おたすけこびと』発売当初のコヨセ・ジュンジさんへのインタビュー記事はこちらから>>>
そして更に・・・作者のなかがわちひろさんが一緒に来て下さることになったのです!
新作『おたすけこびとのクリスマス』制作秘話やみどころ、そして前回のインタビューで語られる事のなかった裏話(!?)までお二人にたっぷりとお伺いすることができました。お楽しみください。
この日、お久しぶりのコヨセさん(ちょっと風邪気味のご様子)が絵本ナビオフィスに登場、続いてキリッとした素敵な雰囲気のなかがわちひろさん、更に編集長始め徳間チームの方々(全て女性!)が続き。それぞれオーラを発している女性達に囲まれているコヨセさんを拝見した瞬間「今日は何だか面白くなりそうだぞ」という予感がしてしまったのでした。そして・・・その予感は見事的中するのです。
■ 今度のテーマはクリスマス!
「おたすけこびと」シリーズ第2弾がこちら↓
『おたすけこびとのクリスマス』 なかがわちひろ・文 コヨセ・ジュンジ・絵 徳間書店刊
※内容詳細・みどころはこちら>>>
―― まずはコヨセさんにお伺いします。『おたすけこびと』に続く新作のテーマが「クリスマス」と聞いた時、どう思われましたか?
コヨセ・ジュンジさん(以下コヨセ、敬省略):「『えーーーっ?』と思いました。」(一同笑)
クリスマスというのはあまりにも普遍的で大きなテーマなので、最初はどうしたらいいか呆然としてしまったというコヨセさん。ではどうやってこんな素敵な絵本が完成していったのでしょう、じっくりとお話を伺っていくことにしましょう。
―― 「クリスマス」というアイデアを出されたのは、作者のなかがわちひろさん(翻訳家、絵本や童話作家として活躍されています)だそうですね。そのアイデアはいつ頃から考えられていたのでしょうか?
なかがわちひろさん(以下なかがわ、敬称略):「前作『おたすけこびと』が完成した直後のコヨセさんは、疲労困ぱいしていたんですよね。でもしばらくすると、むくむくっと復活してきて(笑)次はどうするの?って聞いてくるようになって。じゃあどうしようかと具体的に色々考え始めたんです。
ただ、『おたすけこびと』という物語を考える時に、いくつもアイデアは出していたので、私の中ではクリスマスというテーマはかなり前からあったんですよね。今回、おたすけこびとに仕事を依頼したのは、お父さんでもお母さんでもなくサンタクロース。これで行こう!というのは、実はかなり早い段階で決まっていたんです。」
―― ほとんどの作品では絵も文章も手がけられているなかがわさんですが、この「おたすけこびと」シリーズでは文章の担当。特にこの作品は、とてもシンプルな言葉で書かれていますよね。具体的にどのような形で画家であるコヨセさんにお渡しするのでしょう?
なかがわ:「依頼人はサンタクロースということで、設定を考えながら15見開き(絵本の完成形)にわけて文章を書いていきます。そしてそれぞれの場面に、『ここではこんな事が行われている』とか、『こんなことがあるんじゃないかな』『こういうことがあると思うよ』というような具体的なイメージや説明を書き込んでいきます。だから、私の頭の中では場面割というのは出来ているんですね。でも、それを画家であるコヨセさんに伝える為に、絵を描くのではなく、文章だけで渡します。文章を実際に絵にしていくと、今度は色々つじつまの合わない事も出てきますよね。だから今度は、出来上がってくるコヨセさんの絵を見ながら、また設定を練り直したり、アイデアを少し加えていったり・・・というような作業を重ねていきました。」
―― 夢のある存在として象徴的なサンタクロース、一方とても堅実で働き者のこびと達とくるま。一見、相反するような組み合わせにも思えますが、アイデアはすんなりと完成したのでしょうか?
なかがわ:「全然すんなりじゃなかったです(笑)。
依頼人がサンタクロースという事は決まっていたのですが、じゃあ何を依頼しよう?こびとになにをしてもらおう?というのは色々考えましたね。昔から童話に登場するサンタクロースのお手伝いとしてのトムテという存在ともちょっと違う気がするなぁと思ったり。また、機械(働く車達)というテーマがあり、運搬業というイメージもあり。さらには緊急車両というテーマも浮かんできて。他にもイメージとしては、前作が白くすっきりした感じだったので、今回は夜のシーンで行きたいなぁとか。そういういろんなアイデアやイメージが合体して出来上がっていったんです。」
完成した作品を読んでいて改めて気がついたのですが、そういえば子ども達ってどちらの要素にも興味津々ですよね!
なかがわ:「子ども達は、サンタさんがプレゼントを家まで届けてくれるっていうのを、とても楽しみにしていますよね。その一方で色々具体的に心配もするんです。『サンタさんが来るといっても、うちにはえんとつがないよ。』とか『窓を開けておいた方がいいのかな』、『マンションだけど大丈夫かなぁ』とか。だから、『どんな家でも大丈夫!こういう小人たちがいて、それぞれの家に合わせてちゃんと配達してくれているから』、そういう事が言えるお話になっていると思います。」
なるほど。その絶妙なバランス感覚は、やはりなかがわさんならではなのでしょうね!子ども達の心を惹きつけてしまうはずです。
なかがわ:「小さな世界のこびとに、大きなミッションをやらせたい!という想いがあって。でもこれが結構難しかった。絵描きさんはもっと難しかったと思います。」
■ 大きなポイントはやっぱり「働く車」
さぁ、そこからコヨセさんの仕事がスタートします!今作でもやっぱり大きなポイントは「働く車」。前作でのインタビューで車両を描く為に色々と取材をされたというお話がとても印象的でした。今回は、更に精密に描かれているようにも見えますが・・・。
―― 今回も車両を描く為に、実際に取材はされたのでしょうか?
コヨセ:「機械についての取材はもちろんしました。今回は、パソコンや書籍で調べる事も多かったんですけどね。外国の車両なんかが見られますし。でもやっぱり、出かける時は必ずカメラを持参していました。というのは、描きたい車両が作業をしているのを見つけたらすぐに写真に撮っておかないと、次の日は既に次の工程に進んでいて見られなくなる事が多いんです。前回はそうやって撮った写真が頼りだったのでかなり必死でしたね。違う角度を見る為に色々な方向から写真を撮りに行ったり・・・。
ところが今回は、描き始めた時に、僕が住んでいる家の道路を挟んで向かい側の広い農地がつぶされて、マンションが建設される事になったんです。
まさに『欲しい角度で、欲しいクレーン車が』一生懸命目の前で働いてくれているんです!」
それは何という幸運!(笑)タイミング的にはバッチリだったのですね。
■ 前作との大きな違いは「おたすけ会議」
―― 内容としては同じくこびと達と「働く車」が大活躍している新作ですが、実は制作段階では、前作の時と大きな違いがあったそうで?
なかがわ:「前作では作品が出来上がるまで、実はコヨセさんとは直接お会いしていなかったんです。初めてお会いしたのは完成した後だったんです。もちろん、作品についてのやり取りはありましたけどね。でも今回は定例おたすけ会議と言うのがあって、月に最低1~2度は行われていたんですよね。最後の方は2週間に一度のペースでコヨセさんと編集者と顔を合わせて。それが前作との大きな違いです。
そうやってこの作品を作っていったので、私としてはとても楽しかったですね。コヨセさんはどうだったか知らないけど。」(一同笑)
コヨセ:「・・・そうですね、楽しかったですよ。(と前置きをしながら)僕の中では、今回はスケジュールが決まっていたので、それが一番大きな違いでした。前作では(僕が心配になるくらい)催促が全くなかったので時間を存分に使って描いていたんです。実は編集部の方はイライラしていたみたいですけどね(笑)。」
コヨセさんにとって初めての絵本である前作については、編集部の方も催促は敢えてしない様にされていたそうです。ところが今回のテーマはクリスマス。当然スケジュールが重要となってきます。会議では、まず編集の方がスケジュール帳を開いて待機していたそうで。そういう意味ではコヨセさんの環境はがらりと変わった?
コヨセ:「お尻をたたかれて描く快感を覚えたというか(笑)。でもそのお陰で結構いいペースで出来たんだと思いますけどね。」
―― そのおたすけ会議というのはどんな様子なんですか?
なかがわ:「おたすけ会議があるというと、コヨセさんが原画をクリーニングの袋にぷらーんぷらーんって下げながらやって来るんですよ。その原画を大きな打ち合わせ机に広げて、みんなで『わー!あそこが可愛い、ここが素敵!』って。『でもコヨセさん、ここはへんじゃない?』今度はつっこみが出始めて。そうすると、編集部の他の皆さんも集まってきて『あーだ、こーだ』と・・・。それでまたコヨセさんが『はーい』といって持ち帰って。泣きながらね(笑)女子がいじめてるみたいだったりして?
でも、絵になって初めて『この設定はこういうことだったのか』というのが見えてくるので『じゃあこうした方がいいね』とプラスしてみたり。
前作『おたすけこびと』の時に<こびと達の世界>というのがコヨセさんの中にしっかり入っていて、今回は彼の中でこびとたちを呼ぶというような感じに見えました。何も言わずにいてもこびと達が動いているんですよね。」
コヨセ:「そうですね、そういう意味では2回目の方がスムーズでしたね。」
最初に皆さんが登場された時に感じた、何だか和気合あいとしたこの雰囲気は、「おたすけ会議」を経て作られていったものだったんですね。納得です。
■ コヨセさんの描く絵のみどころは?
そうして全力を尽くして描かれたコヨセさんの絵についてお伺いしてみましょう。
―― 今回は「夜の世界」という設定。そこが前作との大きな違いですよね。音をたてちゃいけないなど、制約もあったのでは?
コヨセ:「そうですね。今回は全部背景があって、しかも夜。大丈夫かなーというのはちょっとありましたね。表紙で言うと前作が白で今回は黒。でも描いているうちに開き直りが出来て、今回は全く違うものになりそうだ、と思いながら描いていきました。」
でもその背景が描かれる事により、コヨセさんが持っている詩情的なものがプラスの要素として加わったのではと、なかがわさん。音についてもお伺いすると「意識していなかった」とおっしゃるコヨセさんに対して、すかさずなかがわさんが「今回は音はなしでいく、と言ったのはコヨセさんですよ!」と突っ込んでいました(笑)。文章でも「おとなも こどもも ねむるまち」「しーっ!ほえちゃ だめだよ。」という部分などがあり、お二人とも無意識にその辺りは実現されていたようですね。
―― 今回描かれた絵の中で、みどころを教えてください!
コヨセ:「やっぱりぎょうれつの楽しさですね。実際に家があるような住宅街を、そんなちっちゃいのがぞろぞろ歩いているっていう楽しさ。それだけで充分かなって。」
確かに夜の街を小さな小さな車両がずーっと並んで進んでいく様はかなりワクワクします!この玄関前の敷石の場面もかなりの迫力ですよね。
▲車両が迫ってくるかのよう。他にも、小さなこびと達と大きな犬や敷石など、様々な要素がぎゅっと詰まっています。
コヨセ:「最初は、この絵の出来はどうなのかなぁという不安もあったんですよ。そしたら天の声(※)があって。「あれはいい!!って言ってるよ」という声を聞いて。それでああ、ここはこれでいいんだと思えたんです。」
※天の声とは誰なのか?後程じっくり説明します!
なかがわ:「この場面については、例のおたすけ会議でも、設定について(砂利道とか素材感についてとか)色々突っ込んでいて、コヨセさんいじめをたくさんしてたんです。ですので画家さんとしては混乱をしていたかもしれないんですけど、この車の見せ方についてはやっぱり素晴らしいと思いましたね。」
―― プレゼントの中味がとっても気になりますね。
なかがわ:「プレゼントの中味は男の子でも女の子でもどちらでも喜ばれるものにしました。でもこの包みの形は気になりますよね~。」
なかがわさんもおっしゃる通り、とても気になる形をしているプレゼント。やはり皆さんから色々な意見が出たようなのですが、実はコヨセさん、この絵を描かれる前に実際にプレゼントを包まれたそうなのです。その時の写真がこちら!(編集部からお借りしました。)
確かに同じ形をしていまね・・・。コヨセさんいわく、「忠実に描いているだけです。」
―― 今回は大胆で迫力のある構図も印象的です。
コヨセ:「小さい小さいこびと達と、実際の玄関や窓の高さ、クリスマスツリーなどの大きさ。そのスケール感を表現するにはかなり苦労しましたね。そのまま一画面で描くと画面がすごく大きくなってしまいますしね。」
結果的にはとても独創的で大胆な場面がたくさん生まれています。クリスマスツリーを上から見た構図なんて、なかなか見たことないですよね。部屋の中での小人たちの大仕事ぶりも臨場感たっぷりに伝わってきますよ。
コヨセ:「部屋の中で登場するこの赤いトラックですが、設定はわかりましたか?おうちの中に最初からあったラジコンカーなんです。この家には大きなラジコンカーがあるという事は最初から調べがついているんです。(毎年のデータが蓄積されていて、サンタさんの支部からこびと達に指令があるそうなんです。)だから家の中でもスムーズに作業が進んでいくんですね。」
うーん、なるほど。子ども達ならきっと気がつくのではないでしょうか。言われてみれば犬がいる事も調べ済みの様子です。ちなみに、その赤いトラックはコヨセさんが持っているふるいブリキのおもちゃをモデルに描かれたそうですよ。なかなか味わいのある姿をしているんです。
■ 天の声とは?そしておたすけこびと誕生秘話
―― さて、気になるのが先ほどコヨセさんのお話の中に登場した「天の声」。一体誰の声の事なんでしょう?
なかがわ:「天の声というのは・・・実は私の息子でして。」
ここで、そもそもの『おたすけこびと』誕生秘話まで話がさかのぼります!必読です。
なかがわ:「うちの息子は、小さい頃から働く車が大好きだったんです。1歳の頃からゴミ収集車を見て興奮するような子で。だから、毎日色んな工事現場に連れて行かされたり(これが退屈!)、夜になると今度は『はたらくくるま図鑑』というのを持ってきて『読んで!』。それが、ひたすら説明を読まされている感じなんです。でも間違えば『ちがう!』と指摘されるし、毎晩それは砂をかむような読みきかせを繰り返してきたんですよ。面白くないなーと思って<働く車が出てくる絵本>を読んでも、彼には図鑑くらいハードなものじゃないと物足りないらしく。それで、母親が読んでも退屈しない働く車の本をつくりたい!という野心がその時芽生えたんです。
一方で、おうちでは誕生日の時にはケーキを作ってあげていたんです。スポンジにクリームをまっすぐきれいに塗っていくのって結構難しいでしょ?(私の頭の中には働く車図鑑がいっぱい入ってるから)ああ、ロードローラーが出てきてざーっとならしてくれたら楽なのにな!と思ったのがそもそもなんです。」
そういう状況になっても、ロードローラーはなかなか出てこないですよね!息子さんの働く車好きは相当なもののようです。更にお話は続きます・・・
なかがわ:「『きょうりゅうのたまご』という私の作品があるのですが、
『きょうりゅうのたまご』 なかがわちひろ・作 徳間書店刊
これは、<働く車と恐竜が好きな息子>のために作ったという絵本なんです。主人公の男の子が恐竜のたまごを探すために、ちっちゃなパワーショベルに乗って土の中に潜って行く場面があるんですよ。でも私、働く車に全く愛がないものですから、これは調べないと、と思ってコマツ・テクノセンタという所に行って取材までしたんです。
働く車に愛のあるおじ様方に車両について色々語ってもらい、大きなウインドウの向こうのデモンストレーション(広大な土地で実際に働いてその機能を見せてくれる場所があるそうなんです。)というのがあってじっくり眺めて。実際に私、試運転までしましたから!(何とその時の写真が『きょうりゅうのたまご』の著者紹介写真として掲載されているのです。是非見てみてくださいね。)そうして、私なりに一生懸命愛を込めて描いたのが『きょうりゅうのたまご』の中に登場するパワーショベルなんです。でもそれを見て息子が冷静にダメ出しをするんです!何か違う、と。」
それにしても、そのお話(『きょうりゅうのたまご』)はかなり面白そうですね・・・。
そんな一生懸命の取材時、一方でこんな出来事もあったそうなんです。
なかがわ:「ウィンドウの向こうの(巨大な車両達の砂を積み上げたりする)デモンストレーションをずーっと見ながら『これってさ、あの働く車たちがお菓子つくってるみたいだよね・・・。』とつぶやいたんです。そしたら横にいた編集長がガバっと起きて『それだ!』って言ったんです。それでお話をつくれという話になって『ああでしょ、こうでしょ、』なんてすぐ「おたすけこびと』のお話の原型ができちゃったんです。」
それが『おたすけこびと』が誕生する瞬間!でも・・・
なかがわ:「私絶対絵は描きたくないから!って言ったんです。それが条件。働く車に愛がある絵描きさんを探して作ってくれればいいけど、私は絶対にイヤ!そこから絵描きさんを探しているうちに白羽の矢がたったのがこちらのコヨセさん~!」
「そうだったんですね。編集長がガバッと起きたんですね。」と相変わらずマイペースのコヨセさんなのでした。
なかがわ:「長くなりましたけど・・・そういう訳で、先ほどの『天の声』というのがその働く車両が大好きな息子なんだというお話です。
『おたすけこびと』が出来た時、校正段階で絵を見てよだれをたらしながら『これだよこれ!おかんの絵に欠けていたのはこれなんだ』『しびれるな~』とか言っちゃって。それで、その時からコヨセさんに『息子がここがいいって言ってるよ、ここがしびれるって言ってるよ』とか時々メールしていたんです。」
―― その息子さんが太鼓判を押したのが先程のあの場面なのですね。
なかがわ:「今回はこびと達が外に行くという設定なので、車両がどうしても小さくなっちゃうでしょ。そういう状況説明というのも大切だけど、やっぱり働く車が好きな読者には「血わき肉おどる」というページも欲しいのだ!という事なんですね。子どもって、実はそもそもこういう目線で見てるんですよね。さっと視線が近づいて『ここがこうなって、これが回って・・・』なんて。そういう意味ではとても子ども達を満足させるページになっていると思います。これは男の子ならではの感覚なのでしょうか?なかなか女性チームではわからない部分なんですよね。」
『おたすけこびと』シリーズでの「天の声」の存在は、かなり重要な様です!?
■ 隠れたみどころを教えてください!
―― 絵本ナビ読者の為に、何か隠れたみどころを教えて頂けませんか?
なかがわ:「コヨセさんの、こびと達への愛というのを感じるお話をひとつ。この子たち、今回は冬服を着ているんです!気が付きましたか?」
気が付きませんでした~
なかがわ:「前作では綿のシャツだけだったんですけど、今回はフリースの上着をきて、あたたかいカラー軍手をしているんです。ブーツも長め、中にはもこもこが付いている冬仕様です。これはね、コヨセさんの父心なんです。」
―― コヨセさんもこびと達に関して、何かありますか?
という事で、コヨセさんにもいくつか挙げてもらいました。実際に購入された方はお手許で確認しながら楽しんでくださいね!
☆ 18ページ、めくって19ページ目。
「前のページで転んじゃったこびとがいて、次のページではそのこびとにヘルメットを渡してあげているこびとがいます。」(細かいポイントですね。)
☆ 前作同様、服の色で仕事を分けているそうです。
「黄組み、赤組のひと」なんて気がついた小さな子もいるんだそうですよ。親子で考えてみてね。
☆ こびと達があの依頼人から荷物を預かっている場面では、ちゃんと仕事に専念しているこびと、嬉しくてはしゃいじゃっているこびとなど様々な様子が楽しいですよ。
☆ サンタさんの部屋に置いてあるマグカップに描いてあるこびとは、前作『おたすけこびと』に一度だけ登場しているらしいです!
―― サンタさんの部屋はどんなイメージで描かれたんでしょうか?
コヨセ:「寒い国の牧場的な所にある建物。外は寒そうなんだけど、中は暖かくて、というイメージですね。仕事部屋として整然としていて、棚はたくさんいるだろうな、とか考えながら。サンタさんの机の上には住所録もつんであります。」
なかがわ:「サンタさんが着ているセーターもお洒落ですよね。コヨセさん、ニットものには愛があるんですよね。」
コヨセ:「ありますね。」
そんな所も見所かも?
―― 今回も見返し(表紙の裏の部分と、裏表紙の裏の部分)がかなり楽しい感じですね。
コヨセ:「ここには気が付きましたか?最初と最後の見返しのページは楽しいでしょう。」
なかがわ:「ここは女の子もキャー、ワーなんて言いながら楽しめるポイントですよね。この2ページだけで、子ども達はどんどん物語をつくっていくんです。絵によってどんどん世界が広がっていく、それがとっても面白いですよね。」
コヨセ:「この見返しの場面はね、作品の制作が始まって最初の頃に描きあげたんですよね。おたすけ会議に持っていって『これいいでしょ?』って言ったら、にこりともしないでチェックが始まったんです。」(一同笑)
なかがわ、編集者:「そんなことないですよ!最初は感動してたじゃないですか。でも、それには理由がちゃんとあるんですよ。前作『おたすけこびと』の時、コヨセさんが想像以上の数のこびとを描いてきたのでびっくりしたんです。それはいいのですが、ちょっとおかしな事になっているこびとや塗り残しがたくさん見つかったんですよ。だから、みんなでチェックを入れる作業は恒例になっていて。でも、今回は一個も間違いはなかったですね。」
前回の取材では、こんな話は一つも出なかったですよね(笑)。
■ 子ども達にはこの作品をどんな風楽しんでほしい?
―― 出来上がってみて、子ども達にはどんな風に楽しんでもらいたいですか?
コヨセ:「こういう内容のものは好きなように楽しんでくれたらそれでいい、私が言葉にする必要が全くないんじゃないかと思ってます。
以前、ある写真を見せてもらったことがあるんです。男の子が、こたつの上に『おたすけこびと』を広げて座ってテレビ見ている写真、それから今度は腹ばいになってその下に『おたすけこびとのクリスマス』が広げてあるという写真。どちらも目線はテレビなんですけど、それがすごくいい写真なんです。絵本の楽しみ方の景色としてね。それでいいんじゃなないかな、その子にしか楽しめない楽しみ方があっていいんじゃないかなって思いますね。」
その男の子は、まず朝起きると『おたすけ~』を抱えて、ごはんを食べるにも何をするにも取りあえず持って行動するそうなんです。「おたすけ~」は愛されているんですね・・・。
―― それでは、絵本ナビ読者である大人の方に向けてこの作品の魅力を語るとすれば?
なかがわ:「ありふれた言い方かもしれませんが・・・やっぱり想像力なんでしょうね。子ども達が各シーンの中で起きている色んなドラマを想像できるんですよね。例えばこのシーン。
ある小さな男の子がね、このシーンを開いてじっと見ながら恍惚とした表情でため息をつくんですって!「ほお~」って(笑)。多分、彼には色んなことが想像できちゃうのでしょうね。単純に絵として見ると、もっと迫力あるページなんかが他にもあるんだけれど、このシーンには隙間がある。こどもがいっぱい想像できる隙間があるんです。もし、自分がこびとだったら・・・なんて、子どもたちの中ではすごい迫力で場面がせまっているのかもしれないですね。」
コヨセ:「このシーンは、全てを俯瞰(ふかん)しているんですよね。玄関先があって、小さい車がいて、小さなこびと達がいて、大きな犬がいて。そこが何が起こるのか。それを上から見下ろして。想像は尽きないかもしれませんね。」
■ 初めての絵本と今回の気持ちの変化
最後に『おたすけこびと』が絵本作品デビュー作、「おたすけこびとのクリスマス」が2作目となったコヨセさんにその心境などをお伺いしてみました。
―― 前作『おたすけこびと』が初めて手がけられた絵本だったコヨセさん、新作が出るまでに気持ちの変化などは何かございましたか?
コヨセ:「本当の事を言うと、2冊目は出ないと思っていたんです。1冊目のアイデアが秀逸すぎて。単純なことだけどスゴイ!と思っていて。こんなすごいものが2回はできないだろうなと思っていたんですよね。だから今回は、一作目を超えるものが出来るのかなぁというプレッシャーというのが結構ありました。
でも、出来上がってみると意外と好感触でほっとしているというのが本心です。読んでいる人がどう受け取るかというのは、想像できない部分もありますが、この作品を買ってくれるというのが僕の中では一つの答えとして受け取っています。そういう意味では、今はほっとしていますね。」
―― 子ども達の反応やレビューなどというのは未体験だったと思うのです。でも絵本というのは、そういう反応も含めて出来上がっていくんですよね。そういう意味では今回絵本が仕上がってからの気持ちも全然違ったのではないでしょうか?
コヨセ:「それはありますね。100%違いました。『おたすけこびと』の時は描き終わって編集の方に絵を渡した時点で終わった~と思ったんですが、今回は渡した時点で始まったという感覚でしたね。さぁどうする、どうなる、と。」
そうです、絵本ナビでの「おたすけこびとのクリスマス」はまさにこれからがスタートですね!
コヨセさんは本当に皆さんのレビューを楽しみにしてくれているんです。この絵本がより多くの子ども達に楽しんでもらえるように、皆さんで盛り上げていきましょうね。
■ 豪華なおまけ画像!
『おたすけこびと』を持っていらっしゃる方は気になっている方も多いかと思うのですが、著者紹介コーナーのお写真がとってもユニーク!
制作時、なかがわさんのレシピをもとにコヨセさんが編集チームと共に徳間書店さんの中でケーキを作ったそうなのです。それがなぜか「ふくらまない!」。でも何とか作ったんだという証拠写真として撮られたのがコヨセさんのお写真。それを聞いたなかがわさんがわたしもつくるわ!と言い、「同じレシピでつくってふくらみました!」とかなり得意気顔なのがなかがわさんのお写真。エピソードを聞けば聞くほど笑ってしまいます。
「まぁ、環境、道具が悪かったんですよね。」なんて、目の前で編集の方にまた慰められているコヨセさんが更に可笑しいのです。
じゃあ2巻目はどうしよう、という話になって。絵が描き終わって気が大きくなったコヨセさんが「じゃあ僕つくります!」と言って作り始めて完成したのがこちらの写真。
▲今回の撮影は徳間書店さんのエレベーターホール!
▲背景もその場でコヨセさんが描いております。
「これ真夏だったんですよね・・・」(なかがわさん)
著者紹介ページなのに、顔がほとんど隠れちゃってますね?
なかがわ:「これは意味が深いんです。わたしがサンタ、コヨセさんはよく働くトナカイ」
コヨセ:「あー!そうだったんだ」
なかがわ:「知らなかったの?」
段々こちらも、この絶妙の掛け合いがクセになってきてしまってます(笑)。
最後に記念写真をぱちり。
イソザキも一緒に。なぜかポーズまで付けられて。すごい盛り上がっています。
お二人とも楽しいお時間をどうもありがとうございました。
この取材を通して、「おたすけこびと」という作品が作者にも出版社にも本当に愛されているという事がよーく伝わってきました!
ちなみに次回作は・・・気長にお待ちくださいとのことでした。
★コヨセ・ジュンジさんが絵本ナビ読者の為に素敵な直筆メッセージを描いてくださいました!