かみしばいってたのしいな!
仲川道子・漫画 「紙しばいだいすき」パンフレットより参照
子どもたちは、絵本も紙芝居も大好き! それぞれにすてきな魅力があることを、ちゃんとわかっているんです。絵本は、読んでもらっても、自分で読んでも、絵をじっくり見てお話をたっぷり楽しむ中で、一人一人の心が豊かに深まっていきます。
紙芝居は、向かい合って顔を見ながら、一緒に楽しむのがうれしい!
暖かなふれあい、同じ思いを分かち合ううれしさが、共感しあうよろこびとなります。
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仲川道子・漫画 「紙しばいだいすき」パンフレットより参照
子どもたちは、絵本も紙芝居も大好き! それぞれにすてきな魅力があることを、ちゃんとわかっているんです。絵本は、読んでもらっても、自分で読んでも、絵をじっくり見てお話をたっぷり楽しむ中で、一人一人の心が豊かに深まっていきます。
紙芝居は、向かい合って顔を見ながら、一緒に楽しむのがうれしい!
暖かなふれあい、同じ思いを分かち合ううれしさが、共感しあうよろこびとなります。
鈴木のりたけさんの「続・しごとば」制作日記は移行しました。
⇒「続・しごとば」制作日記 その4
世界中で愛されている絵本『にじいろのさかな』。シリーズでは何と1500万部を突破したそうです。今年の夏、そんな「にじいろのさかな」シリーズの待望の新刊が発売されました。
『にじいろのさかな うみのそこのぼうけん』です。ちょっとたくましくなったにじうおくん、見たこともないような深海の生きものたちの登場など今回もみどころが満載の一冊となっています。
その発売を記念して、今回は出版されている講談社さんの御協力のもと作者であるマーカス・フィスターさんへのインタビューが実現する事ができました!『にじいろのさかな』から最新刊のお話、また読者からの質問も含めて丁寧に答えてくださいました。是非絵本と合わせてじっくりお楽しみください。
マーカス・フィスター(Marcus Pfister)
1960年、スイスのベルンに生まれる。高校卒業後、ベルンの美術工芸学校の基礎科に入学。その後、グラフィック・デザイナーとして、1981年から1983年までチューリッヒで働く。カナダ・アメリカ・メキシコを旅行ののち、帰国後はフリーランスのグラフィック・デザイナー、イラストレーターとして活躍している。おもな作品に「ペンギンピート」シリーズ、「うさぎのホッパー」シリーズ、「にじいろのさかな」シリーズなどがある。1993年、ボローニャ国際児童図書展エルバ賞を受賞した『にじいろのさかな』をはじめとする「にじいろのさかな」シリーズは、世界で1500万人の読者に迎えられた大ベストセラーとなっている。
■ 『にじいろのさかな』についてお伺いします。
―― 絵本『にじいろのさかな』を目の前にすると、世界中の誰もがまず「ひかるうろこが美しい!」と感じるのではないでしょうか。だからこそ成り立つお話なのだとも思います。この作品のアイデアを思いつかれたきっかけというのを教えて頂けますでしょうか?
ひかるうろこは、たしかにこの本の重要なポイントです。でもこの本が、大きな成功をおさめたのは、うろこのためだけではありません。多くの学校や幼稚園に買っていただいたり、人々が本屋さんで、友だちへの贈り物としてこの本を買ってくださったのは、このお話のコンセプトによるところが大きいと思っています。このお話をみんなで分かち合いたい、と思ったのです。
うろこを選んだ理由は、そうですね、もし、このにじいろのさかなを他のキャラクターから際立たせるものが、「色」だけだったとしたら、他のキャラクターは当然味気ないグレイにするしかありません。なので、私はそれ以外の特徴を探しました。そして結果的にうろこは、このお話をもっともすばらしい形で完成させることに役立ちました。「分かち合う」というコンセプトを底のところで支える、そういう要素になりました。ただ色のついたさかな、だけではこういう風にはならなかったと思います。
本物のきらきらひかるうろこをあげてしまう-これがこの作品を特別なものにしたのだと思います。
―― 読者の間では「自分の大切なものを人に分け与えればこそ幸せになれる」という部分に大きなテーマを感じられている方も多いようです。色々な捉え方をされるのが絵本だと思いますが、マーカス・フィスターさんが考えられているこのお話の中のテーマをシンプルな言葉で教えて頂けますでしょうか?
私たちを特別な何者かにするのは、何を持っているか、によってではなくて、何をしているか、によってではないでしょうか。もっているわれわれが、もたざる誰かとそれを分け合うのはとてもよいことと思います。あるいは、ただたんに、誕生日やそのほかの機会に贈り物を贈る、という習慣のことを思い起こしてください。誰かを幸せにするってことはとても楽しいものですよね。
―― 「にじいろのさかな」シリーズ第2~5作の中で、にじうおは様々な困難や周りとの関係性に立ち向かっていきます。それはまるでにじうおの成長記を見ているようですね。マーカス・フィスターさんが実際にお子様との触れ合いの中からお話に影響を受ける、という事もあるのでしょうか?実際ににじうおにはモデルがいたりするのでしょうか?
いえ、モデルはいません。私はそれぞれ違うところからインスピレーションを得ています。
たとえば第2作においては、私の長男の学校での経験から、第3作では私自身が子どものころ年長のきょうだいと一緒に経験したことからインスピレーションを得ています。
想像するに、これら6つのにじいろのさかなシリーズは普通の子どもたちの周りに起こりうることを反映しているように思います。
■ 最新作 『にじいろのさかな うみのそこのぼうけん』についてお伺いします。
―― 今までとは少し違い、自分にとって本当に大切なものがはっきりみえているようにみえるにじうお。自分の中の明確な意思を持って知らない世界に立ち向かっていく様子がとても印象的でした。また、その成長を祝福するかのようにたくさん降り注ぐキラキラが素敵ですね。第一作が登場してから随分時が経っています。この6作目に対する想いというものを教えて頂けますか?
私はこの話のテーマが大好きです。私は今でも子どものころ大事にしていた、他の何にも代えがたいテディベアをなくしてしまったことをずっと覚えています。
この本はまた私たちが、これ以上もう望むものはなく現在持っているもので十分幸せなのではないか、ということを教えてくれます。私たちも子どもたちに「つつましさ」を教える時期が来ているように思います。
―― これから手にする日本の読者に向けて、この作品の「みどころ」を教えて頂けますか?
上でご説明したことに加えて、私は、にじうおに、新しい世界を発見させるのが好きです。ですから、日本の読者の方にも、にじうおといっしょに深海に住む新しいさまざまな生き物との出会いを楽しんでほしいと思っています。彼らはとても美しくて、格別ですから。
■ 絵本作家マーカス・フィスターさんについてお伺いします。
―― 絵本を制作される時、どの瞬間が一番楽しいですか?また大変な部分というのはどの辺りですか?
それはもちろん新しい話を考えているとき、でしょうね。新しいキャラクターを考え、最初にスケッチするときもわくわくするかもしれません。でも本を完成させるには大変な苦労が伴います。それが一番苦しいところです。
―― 絵本を通して子ども達へ伝えたいメッセージというのはございますか?
それは本によってそれぞれですね。全ての本に重要なメッセージを埋め込む必要もないと思っています。ときどき私はただ自分の楽しみのためだけ、そして、それはすばらしく魅力的な本の世界を若い読者に紹介することで、彼ら自身もそれを楽しんでくれる、そういうために書く本もあります。
―― 絵本作家になって良かったなぁ・・・と感じられる時はどんな時ですか?
アトリエで仕事に向かっているときはいつも幸せです。本当に仕事が好きですからね。でももちろん、いろんな世代の読者からの反応がかえってきたときはやっぱりよかったと思いますね。
■ 絵本ナビ読者の方からの質問です!
※ここからは、皆さんが寄せてくださった質問の中から答えて頂きました。
―― 海の風景や生き物がとってもきれいです。海がお好きなのですか? (ご自宅から海が見渡せるのでしょうか?ダイビングをされるのでしょうか?にじうおのモデルの魚は?登場する魚を選んでいくポイントは?)
残念ながら私の住むスイスには海はありません。でも旅行をして、他の国で海を見ることは大好きです。毎回新しいお話を考えるときに、このにじうおの世界を完璧なものにできる新しい動物のキャラクターはいないか、探しています。
―― うろこのきらきらを印刷するのはとても大変そう!実現はすんなりできたのでしょうか?
担当の編集者がたいへんな苦労をして安い料金でこの印刷ができるところを見つけてきてくれました。こういうキラキラ印刷(ホログラフィック)をする費用はとてもかかるので、当初考えていた値段で印刷ができるとわかったときにはとてもうれしかったです。
―― 海の色の青を始め、色彩がとっても美しいです。色をつけられる際、何を一番大事にされていますか?
色を塗って、まだぬれているところに、さらに色を重ね、にじませる塗りかたをします。水の雰囲気がとてもよく表現できるので。
―― 『にじいろのさかな』読者からの嬉しかった反応はございますか?また国によって反応は違いますか?
国によって反応が違うということはありません。うれしかった手紙……。小さな読者からの「こんなお話を書いて」というお願いだったり、おばあちゃんが孫に私の書いたお話を読んで楽しかったとか、そういうものですね。
―― にじいろのさかなの夢はなんですか?
彼が夢を僕には話してくれたことはありません。でも想像するに、ただ、多くの友だちに囲まれてきれいで健康的な海で平和に過ごすことではないかな、と思います。きれいな環境を維持できるかどうかは、われわれにかかっているわけですが・・・。
―― 絵本を描かれる際に読者の年齢を意識されますか?
もちろんです。でも同時にこれを手に取り、子どもに読み聞かせてくれるご両親のことも意識しますね。
―― 絵本を制作される前など何か日課はありますか?
申し訳ないですが、これといってないですね。
―― 子どもにとって本とは?
たんに美しい絵とすばらしいお話がある、というだけのものではないですね。ママやパパ(あるいは両方)と一緒に座って、お話を聞いたり、質問したりして、両親をちかしく感じる。そんなすばらしい習慣をもたらしてくれるものです。
■ 最後に絵本ナビ読者に向けてメッセージをお願いします!
日本に多くの読者がいることをとても誇りに思います。魅力的な国、日本で過ごしたすばらしい日々を今も思い起こします。また近いうちに是非訪れてみたいです。
マーカス・フィスターさん、ありがとうございました!
「にじいろのさかな」シリーズはこちら>>>
にじいろのさかなWeb水族館はこちらから>>>
にじいろのさかなと七つの冒険(鳥羽水族館・講談社合同企画)イベント詳細はこちらから>>>
◆東広島市立美術館より絵本作家原画展のお知らせです。
・ 第24回現代絵本作家原画展 「たいせつなひと」
■タイトル:
第24回現代絵本作家原画展「たいせつなひと」
■期間:
2009年7月3日(金)~8月16日(日) ※月曜休館
開館時間/10:00~17:00(入館は16:30まで)
■出品作家:
あだちなみ、狩野富貴子、のぶみ、野村たかあき(敬称略、五十音順)
■内容:
本展覧会では、「たいせつなひと」をテーマに絵本作家の原画を展示します。自分にとって大切な人を慈しむ姿は、けなげで、いじらしく、そして何よりも美しいものです。それを、現代日本を代表する4人の絵本作家が、卓越した技法と豊かな創造力によって描きました。作品を通じて、心あたたまる想いを感じていただくとともに「絵本」の持つ芸術性と魅力に触れていただければ幸いです。
■会場:
東広島市立美術館
〒739-0144東広島市八本松南2-1-3
TEL 082-428-5713 FAX 082-427-3058
■主催:
東広島市立美術館
■後援:
NHK広島放送局、中国新聞社、中国放送、広島テレビ、広島ホームテレビ、
テレビ新広島、広島エフエム放送、東広島リビング新聞社、プレスネット、KAMONケーブルテレビ
■入館料:
一般400(300)円、大学生200(150)円、高校生以下は無料 ※( )内は20人以上の団体料金
■関連企画:
○絵本講演会「絵本で語るたいせつなこと」
講師/野村たかあき さん
開催日/2009年8月1日(土)
時間/14:00~15:00
参加無料(ただし、展覧会入館料が別途必要)
会場/東広島市立美術館
今年15周年を迎えられた瑞雲舎さん。「絵本ナビの読者の方へ向けて何か面白い企画を・・・」と考えてくださって実現したのが今回の豪華サイン本まつり&色紙プレゼントキャンペーンです。そして更に、瑞雲舎井上富雄社長へのインタビューもご紹介します。普段なかなかお伺いできない貴重なお話となっていますよ。サイン本、色紙にご協力頂いた絵本作家さん達との出会いのエピソードなどもお伺いしています。サイン本が完売してしまった後も是非合わせてお楽しみください!
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■豪華サイン本のご案内・・・好評につき完売致しました。
■サイン色紙プレゼント・・・あの作家さんの直筆です!
■社長インタビュー
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■ まずは豪華サイン本ラインナップのご紹介です。
●やなせたかし直筆サイン本『あれはだれの歌-やなせたかし 詩とメルヘンの世界-』
●かこさとし直筆サイン本『どうぐ』
●味戸ケイコ直筆サイン本『夢の果て-安房直子十七の物語-』
●黒井健直筆サイン本『HOTEL(ホテル)』
●中川宗弥直筆サイン本『みいくいおひめさま』
●舟崎克彦直筆サイン本『なんでもはかせのなんでもパンツ』
●和田誠直筆サイン本『ことばのこばこ』
●秋山とも子直筆サイン本『おとうさん』
●早川純子直筆サイン本『はやくちこぶた』
●バーナード・ワッツ&松岡享子直筆サイン本『まつぼっくりのぼうけん』
<<読み聞かせ絵本シリーズ全5冊>>
●飯野和好直筆サイン本『瓜子姫っこ』
●堀越千秋直筆サイン本『ふるやのもり』
●朝倉摂直筆サイン本『お月お星』
●太田大八直筆サイン本『狐とかわうその知恵くらべ』
●片山健直筆サイン本『天さあがった男』
■ 貴重です!豪華直筆サイン色紙プレゼントキャンペーン。
今回、5人の作家さんが絵本ナビ読者の為にイラスト入りの直筆サインを描き下ろしてくださいました!
★プレゼントキャンペーン期間中
【2009/7/8(水)~7/22(水)】・・・キャンペーン期間は終了致しました。
瑞雲舎さんの作品を一冊以上お買い上げ頂いた方の中から、抽選で5名様に下記の色紙のうちいずれか1枚をプレゼントさせて頂きます。
瑞雲舎さんの作品はこちら>>>
早速その貴重な色紙のご紹介を、瑞雲舎井上社長との出会いのエピソードと共にご紹介します!
【やなせたかしさん直筆サイン色紙】
やなせたかし先生とは、35年ほど前、月刊「詩とメルヘン」の編集部時代お世話になりました。 まだ20代のころで、先生や奥様に可愛がっていただきました。地方でのサイン会などに同行することも多く、楽しい思い出がたくさんあります。
【かこさとしさん直筆サイン色紙】
かこさとし先生とは、2001年『どうぐ』の復刊のときからのお付き合いです。それいらい『土木の歴史絵本全5巻』『海を渡った日本人シリーズ』などをご一緒に仕事をさせていただきました。
【味戸ケイコさん直筆サイン色紙】
味戸ケイコさんとは、「詩とメルヘン」時代にたくさんの作品を描いていただきました。特に安房直子さんとの17の作品は、思いで深いものです。ようやく2005年に一冊の作品集『夢の果て』として出版することが出来ました。
【飯野和好さん直筆サイン色紙】
飯野和好さんとは、やはり「詩とメルヘン」でイラストレーションを描いていただいたのが最初です。『瓜子姫っこ』は鈴木サツさんの昔話の語りに絵をお願いしました。作品が完成するまで足掛け3年以上かかりました。でも待ったかいがあって美濃の和紙に素晴らしい絵を描いてくださいました。なんと印刷も美濃和紙にした豪華版です。
【早川純子さん直筆サイン色紙】
早川純子さんとは、2005年に言葉あそび絵本の企画をしたときに初めてお会いしました。早口言葉を一冊の絵本にするため、構成もお任せしたところ1年半以上かかって斬新なラフを描いてこられました。3匹のこぶたとオオカミのストーリー仕立ての内容に驚きと、その面白さに脱帽しました。
★その他サイン本にご協力して下さった作家さんとのエピソードもご紹介します。
【和田誠さん】(『ことばのこばこ』)
和田誠『ことばのこばこ』について、この絵本はある図書館員の皆さんとの集まりがあった際、強く復刊を希望されました。さっそく和田誠氏にご連絡さしあげたところ、原画がないので、もし印刷所にフィルムが残っていたら復刊してもよいといわれました。原書の出版社すばる書房は倒産していたため、奥付で印刷所をつきとめ、訪ねていったところ廃棄寸前の状態でした。おかげさまで1995年の復刊以来、毎年のように増刷をかさねております。
【片山健さん】(『天さあがった男』)
片山健=絵『天さあがった男』については、遠野の方言の昔話絵本全5巻のうちの第3巻目の作品に絵を依頼しました。片山さんも鈴木サツさんの語りを生で聞いたということで、2年をかけてキャンバスに油絵で力作を描いてくださいました。
【バーナード・ワッツさん、松岡享子さん】(『まつぼっくりのぼうけん』)
バーナード・ワッツ=絵 松岡享子=訳『まつぼっくりのぼうけん』について、この絵本は2007年にボローニャ国際児童図書展に行ったとき見つけました。日本に帰って翻訳をどなたに依頼しようか考えていたところ、昔「松の実文庫」を主宰していらして現在東京子ども図書館の理事長の松岡享子さんが浮かびました。ご連絡したところ、快く翻訳の仕事を引き受けてくださいました。今回はイギリスに住んでおられるワッツさんに絵本を送ってサインしていただき、さらに松岡先生に連名でサインしていただいた貴重な絵本です。
【中川宗弥さん】(『みにくいおひめさま』)
中川宗弥=絵『みにくいおひめさま』については、昨年「復刊ドットコム」やWEBサイトで、この本の復刊を希望される声がたかまっておりました。中川先生にお話したところ、40年以上前なので原画が見つからないとのことでした。なんとかしようとお伺いしたところ幸いにも、原画が見つかりました。ただ印刷技法が古い時代の2色、3色の印刷のため、現在のデジタル製版ではうまくいきそうにありませんでした。そこで印刷所の技術者に協力していただき、不要な色を抜く作業を教えていただき、印刷可能になりました。出来上がりに、中川先生も満足され大変喜ばれました。
続いて、瑞雲舎社長井上富雄さんへのインタビューをご紹介します。「瑞雲舎」立ち上げのエピソードから復刊絵本への想い、読者へのメッセージまでお伺いしました!
今年で15周年を迎えらたという事ですが、瑞雲舎を立ち上げられたきっかけとなった作品、またエピソードなどがございましたら教えて頂けますか?
今から15年前、勤めていた会社を退職してから半年間、近所の公立図書館に通いました。そこで絵本を中心に調べていたところ、多くの本が絶版になっていることに気がつきました。たとえば瀬田貞二著『絵本論』のなかに出ていた、行きて帰りし物語の傑作とされた『あひるのピンのぼうけん』(マージョリー・フラック=文 クルト・ビーゼ=絵)はどこを探しても見つかりませんでした。あるとき石井桃子先生にお会いしたとき、兵庫県のある図書館で、英語の原書に訳文を貼って読み聞かせに使っているということをお聞きしました。その図書館を訪ねてその現場を見ることが出来ました。翻訳されていたのが間崎ルリ子さんで、さっそくご相談したところ、いくつか手直ししてくださいました。版権交渉もうまくいきその年の11月に発売することが出来ました。その後も『シナの五にんきょうだい』や『ことばのこばこ』など次々に復刊してまいりました。
多くの名作絵本を復刊されている印象のある瑞雲舎さんですが、『ちびくろ・さんぼ』『シナの五にんきょうだい』などに代表される様な、特に訳あって長い間絶版になっていた絵本を復刊するという事はかなりのエネルギーが必要なのではないでしょうか?
絵本の復刊については、絶版になった作品の中で、内容的に問題ないのにもかかわらず、単なる言葉狩りのような理由で消えてしまった絵本、例えば『シナの五にんきょうだい』はシナという言葉だけで、『ちびくろ・さんぼ』はサンボという表現だけで出版されなくなりました。いずれも多くの子どもたちに愛読されていた絵本です。私どもはそれぞれの問題点をしっかりと把握したうえで、何ら問題ないと判断したうえで復刊をしてきました。いずれの絵本も元の出版社とのやりとりに相当なエネルギーがいりましたが、それに屈せずに主張を通して復刊にふみきりました。結果は現在も増刷をかさね、多くの読者に喜ばれています。本当に苦労が報われました。
しかし私としては、倒産している場合は別ですが、元の出版社が復刊してくれるのが一番だと思っています。そのきっかけになれば、それでよいと思います。
▼参考
特別寄稿「ちびくろ・さんぼが帰ってきた!」(月刊文藝春秋2005年6月号掲載)
『ちびくろ・さんぼ』の復刊への想いが綴られています。是非読んでみてください。
絵本を復刊される際に、特に大変な作業、また特に嬉しい瞬間・・・などを教えて頂けますか?
復刊を企画する段階で、まず著作権者の承諾を得ることからはじめますが、昔の出版物の場合どなたが著作権を継承されているか探すのが大変です。それと原画の有無も重要になります。原画の状態など退色していないかも気になります。原画のない場合でも現代の印刷技術の向上から、原本から上手にとることも可能になりました。この秋に復刊予定の『このラッパだれのかな』(まど・みちお=文 なかがわそうや=絵)も原画がなくて苦労しましたが、デジタルの技術で再現が可能になり、中川先生にも満足していただき、こちらも喜びをかんじております。
創作絵本にも精力的に取り組まれていますね。
『はやくちこぶた』を例にしますと、企画段階では『ことばのこばこ』につぐ「ことばあそびえほん」を出したいと思いました。絵を依頼する人を探していたところ、早川純子さんが候補にうかびました。さっそく打ち合わせをしましたが、なかなか良いアイデアがでず、四苦八苦していましたが、とにかく「早口言葉」にすることが決まり、代表的な早口言葉を、ふたりで決めました。それからが大変でした。どのような構成にするかが重要でしたが、1年が過ぎたころ早川さんが、ラフ画をもってこられました。そのアイデアの面白さと構成の絶妙さに驚きました。その5ヵ月後、描きあげた原画をみて、その細密なイラストレーションの見事さにさらに感動しました。
今後どんな絵本を出版されていきたいと思いますか?
絵本は子どもから大人まで幅広い年齢層に楽しんでもらえる素晴らしい媒体です。ひとりでも多くの人々に共感と感動をいただけるような絵本を創りたいと思います。
子ども達には絵本をどんな風に楽しんで欲しいと思いますか?
まず絵本を読んでもらうことから、面白さを知っていただき、自分で読めるようになったら、さまざまな本にチャレンジして「本当の読書の楽しさ」を体感してほしいと思います。
絵本ナビ読者の方へメッセージをお願いできますでしょうか?
絵本ナビのメンバーの皆様のレビューは、出版社にとってもとても参考になります。今後も復刊を希望される絵本がございましたらご提案ください。お待ちしております。
井上さん、ありがとうございました。
色々な人達の「想い」で成り立っている絵本の世界。出版されている方からお伺いするお話は、いつもとはまた違った視点でとても興味深く聞かせて頂きました。
こんな風に、これからも様々な角度から絵本をご紹介させて頂ければと改めて思いました。
鈴木のりたけさんの「続・しごとば」制作日記は移行しました。
⇒「続・しごとば」制作日記 その3
毎年夏に開催される「青少年読書感想文全国コンクール」の課題図書が今年も発表されました。その中からピックアップするのは小学校低学年向けの絵本です。考えてみると、それまではただ楽しんでいただけの絵本です。いざ感想文を書くとなっても想像がつかない・・・なんて気持ちはよくわかりますよね。
そんな子ども達のお手伝いをすべく、今回は課題図書『ちょっとまって、きつねさん』を取り上げて、感想文を書くときのヒントをご提案します。
「なるほど、こういうポイントで絵本を読んでみると何だか書けそうな気がしてくる!?」
親子でそんな会話をしながら進められるよう、まとめてみました。参考にしてみてくださいね。
●絵本『ちょっとまって、きつねさん!』を読んで感想文を書いてみよう!
『ちょっとまって、きつねさん!』
作・絵: カトリーン・シェーラー
訳: 関口裕昭
出版社: 光村教育図書
●まずは読んでみよう!
きつねとうさぎのぼうやが顔を付き合わせて、とても可愛らしい雰囲気の表紙。
でも、きつねの大きな口からはぺろりと舌がはみだしているようで・・・一体どんな会話をしているのかな?まずは思いっきり楽しみながら読んでみよう。
それからいざ、感想文にトライ!
「どんなお話だったのか、まとめて書いてみればいいのよ。」というお母さん、
「ちょっとまって!」
あらすじだけ書いた感想文・・・書く方も読む方もちょっとつまんなくないですか?例えうまい文章でなくとも、それぞれ自分の感じた事を言葉にしていく方が、読む方もぐっと興味が湧くと思いませんか。
そこで、以下に挙げるポイントを気にしながらもう一度読んでみる事をおすすめします。気がついたことはそのまま原稿用紙に書くのではなく、まずはノートに好きな様にどんどん書き出していってみよう。
※【例えば・・・】の部分の例文は、アドバイスされる方だけが読んだ方がいいかもしれませんね。
●ポイント1> どうしてこの本を選んだの?
まず、本題に入る前に
・どうしてこの本を選んだの?
・表紙の絵を見て、どう思った?
・タイトルからどんな内容を想像した?
こういう視点でお子様と会話をされると、いい書き出しが出てくるかもしれません。
(感想文は書き出しが肝心!)
【例えば・・・】
◎どうしてこの本を選んだのか?
・表紙の絵がすきだからこの絵本をえらびました。
・本の題がたのしいから。
◎表紙の絵を見て、どう思ったか?
・きつねは、とっても大きな口をしているな。
・ベロを出しているのはなんでだろう。
・きつねにくらべると、うさぎはとても小さいな。
◎タイトルからどんな内容を想像したか?
・なんで「ちょっと まって」なのかな?とふしぎに思った。
・きつねとうさぎは追いかけっこをしているのかなと思った。
●ポイント2> 登場人物になってみよう
・自分と重ねてみよう
・自分と比べてみよう
自分がもし登場人物だったらどう思う?お子様にそう投げかけ、もう1回読んでもらうことで、物語にぐっと親近感が沸きます。その時思った感想を素直に言葉にしてみてくださいね。
【例えば・・・】
◎自分を重ねてみよう
・もし私がうさぎだったら、きつねに食べられてしまうのではないかとこわくなりました。
・もしぼくがきつねだったら、うさぎに言われた通りに「おやすみなさい」なんて言うかな?
◎自分と比べてみよう
・うさぎぼうやは私と比べて―なぜなら・・・。
●ポイント3> 疑問に思ったことをあげてみよう
何度読んでもちょっとわからなかった事や、疑問に思った事も言葉にしてみよう。それも大事な感想です。
【例えば・・・】
・なんで「かならず おやすみなさい」を言うのかな?私も、お父さんとお母さんから、あいさつは大事だと言われています。でも、こわいきつねにもあいさつするなんて、へんだと思いました。
・パパうさぎが、きつねをぼうでたたこうとしたとき、うさぎのぼうやがそれをやめさせたのはどうしてかな?
●ポイント4> 読んでいて楽しいと思ったことをあげてみよう
どんな些細なことでも「面白い」「楽しい」と感じた部分をあげてみると、みんなちょっとずつ違うはず。そこがまた感想文の面白いところですよね。
【例えば・・・】
・きつねが、何度もうさぎを食べようとするのに食べられないところがおもしろかった。
・うさぎに塩をかけたり、お皿にうさぎがのっかっているところをそうぞうしているところがおもしろかった。
・きつねが、歌をうたってうさぎを眠らせようとしたら、自分がねちゃったところがおもしろかった。
・さいごで、うさぎのぼうやが、パパとママといっしょにねているところがかわいかった。ホッとした。
その他にも・・・
●お話しのテーマを考えてみよう
●お話しを読む前と後で、気持がどう変わったかを言葉にしてみよう。
などなど。
たくさん感想がたまってきたら、
さぁ、後はその材料をもとに書き出してみてくださいね。
子ども時代に「思ったことを言葉にする」楽しさを発見できるといいなぁ、と思いますよね。
では最後にこの絵本の「みどころ」をご紹介します。こちらは「感想文」の参考にはならないので、大人の方が読んでくださいね。
まいごになったうさぎのぼうや。そこに忍びよるはらぺこきつね・・・。
こんなドキドキするシチューエーションで始まる物語なのですが、一つ面白いのはここが「きつねとうさぎがであうと
おやすみなさいをいう約束」の場所だってこと。一体どんなやりとりが始まるのでしょう?
うさぎに近づいた腹ペコきつねは、勿論口をガバッとあけます。「あ!食べられる」と思うと、うさぎのぼうやは
「ちょっと、まって!」とさけびます。「しってるよね、ここはきつねとうさぎがおやすみなさいをいう ばしょだってことを?」このうさぎのぼうや、小さいクセになかなかどうして堂々たる態度なのです。慌てて「おやすみなさい!」を言うきつねですが・・・。
ここからのやりとりは読んでからのお楽しみとして。
結構緊迫したやりとりのはずなのに、うさぎぼうやがひょうひょうとしているからか、きつねが意外に素直だったりするからか、ほのぼのとした雰囲気をかもし出しちゃっている二人が見ていて何だか可笑しいのです。特にきつねがうさぎのぼうやを寝かしつけている姿なんて・・・「そんな事している場合?」なんて突っ込みたくなったりして。
うさぎぼうやの家族の関係も素敵。勇敢なぼうやの意思を尊重するパパうさぎ、ぼうやを包み込むママうさぎ。最後の場面も含めて、小さな子がうさぎぼうやを自分と置き換えて読んで行くととっても楽しめそうな内容ですね。
更に、くるくると変わる豊かな表情、毛並みの触感や体温まで伝わってきそうな迫力あるけど温かくてとても可愛らしい絵が物語を更に盛り上げてくれます。色合いや構成も日本の絵本とは一味違って新鮮に映りますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)