『おえかきしりとり』は、数ある絵本の中でもとても珍しい、作者が「4人」いる絵本です。しかも、単に誰かが書いた文にそれぞれが絵をつけたわけではなく、4人全員で話し合い、物語を作り、全員で絵を描いて完成させた「合作」です。内容はいたってシンプル。「おえかきしりとり」というタイトル通り、しりとりをベースにした、絵を描いて言葉をつなげていく遊びを絵本にしています。本編では、4人が実際に順番に絵を描いてつなげていったしりとりが、何ページにもわたって繰り広げられていきますが、読者はその絵が何なのかを当てながら、4人が行ったしりとりを追体験する、という構成で絵本は進んでいくのです。
●人気絵本作家4人衆! 「しりとりプリンス、略して“しりプリです!”」
───絵本ナビでも大人気! 何とも豪華な皆さんを一度にインタビューできるなんて…とても光栄です! インタビュー中に「おえかきしりとり」をしてもらいたいと思って、スケッチブックを持ってきたのですが…。
鈴木のりたけ(以下:のりたけ):いいですね〜。何からスタートしますか?
───では、「絵本ナビ」の「び」からお願いします。
新井洋行(以下:新井):「び」?! いきなりハードルの高いのが来た…。
───では、新井さんから描いていただいて…その間に、お話を伺えたらと思います。…えっと、今回のみなさんは、「絵本界のプリンス」…?
よしながこうたく(以下「こうたく」):「しりとりプリンス」、略して「しりプリ」です!
───もう、その名称からすごく楽しんで作ったことを感じますよね(笑)。絵本も本当にこれでもか!っていうほど、しりとり満載で、読み応えがありました。それにしても、なぜこの4人が…?と思う、意外な組み合わせですよね…。『おえかきしりとり』がスタートするきっかけを教えてください。

しりプリの調整役? 鈴木のりたけさん
新井:それがいつの間にか絵本を作ることに…。
こうたく:完全に飲み屋でだまされた感じがありますけどね…。飲みに誘われて行っただけなのに、気づいたらしりとり絵本を描いている…(笑)。でも、講談社の戸田さんが加わってからですよね。絵本にする勢いがついたのは。
講談社・戸田(以下「戸田」):僕は2回目の飲み会から混ぜてもらったんですが、純粋に「これが作品になったら面白いぞ!」と思ったんです。皆さんもすごく乗り気になってくれたので、打ち合わせをセッティングして、どんな絵本が良いか、真剣に話し合いました。
───しりとりをテーマにするということは、早い段階から決まったのでしょうか?
のりたけ:全く個性の違う4人で1冊を作るとなったときに、「作品集やアート系の絵本だとしたら物足りない!」という思いは共通して持っていました。絵本としてちゃんと意味があって、ぼくたちも楽しんでやれるテーマが良いね…って話し合っていて、自然と「しりとりを絵でやったらどうだろう…」と決まっていきました。
戸田:でも、ただしりとりをつなげていくだけじゃ、絵本としては退屈だからどうしたらインパクトが出るか…や、ラストをどうもってくるか…など、細かい部分のやり取りは、その都度、皆さんで話し合って決めました。
新井:そのやり取りが一番大変といえば、大変でしたね…。どんどんブラッシュアップしてクオリティーが高くなっていったのは良いけれど、時間もかなりかかった…(笑)。
───企画のスタートからして、意外な展開ですね。しりとりを考えるのは何回か集まって考えたんですか?
───1しりとりというと、絵本では160近くのやり取りをしているので、単純に考えても5か月以上かかる計算ですよね。
のりたけ:順調にいけば、そのくらいでできるんですが、やはりお忙しい方も多くて、1年半ほどずっと、しりとりのやり取りをしていましたね。
こうたく:その間にも他の絵本の締切は容赦なくやってくるじゃないですか。締切に追われているときに回ってくるしりとりの腹立たしい事!
高畠那生(以下:那生):そうそうそうそう! 「1回飛ばして!」って何度思ったことか(笑)。
新井:この2人は特に止めることが多かったから…(笑)。ぼくとのりたけさんは優秀でしたよ!

実はしりプリ最年少! よしながこうたくさん

しりプリ最年長はこの方! 新井洋行さん
───新井さんの絵は、他の3人の方と比べてタイプが違うというか、デザイン要素があるタッチですよね。この企画をはじめるにあたって、不安とかはありませんでしたか?
───他の方の絵に引っ張られそうになったりはしませんでしたか?

天然? 癒し系? 高畠那生さん
───内容について、お互いの意見がぶつかったりしたことはなかったんですか?
戸田:内容などで困ったことがあったときは、必ず打ち合わせをして、あとで揉めることがないようにしました。個人的にすごいと思ったのは、打ち合わせの中で、色んなアイディアが出るじゃないですか。そこで良いアイディアが出ると、みなさん「いいねー!」とまとまるんです。『おえかきしりとり』という作品に対して、個性もキャリアも違う4人の絵本作家が同じ感覚で同じ方向を向いて、作り上げてくれたからまとまれたんだと思います。
こうたく:意見が食い違って、白紙になることはなかったですね。…「尻から龍」以外は…。
───尻から龍…?

こうたく:のりたけさんが「しり」を描いた後に僕が「りゅう」をしりから出るようにしたら? と提案したんですよ。そうしたら、のりたけさんが「そういう下品なところに落とし込む絵本だったの?」って叱ってくれて…。のりたけさんがいてくれてよかった〜〜って思いました。
のりたけ:2年もやっていますから、色んな紆余曲折もありましたけど、基本的にはみんな言いたいことを言いあって、良い方向へ向かって行ったと思います。絵本も満足いく形で面白く仕上がったので、「よかったァ」って思いました。