もりのあさ
- 作:
- 出久根 育
- 出版社:
- 偕成社
まだ目覚めたばかりの森の中を散歩しながら、女の子は考えるのです。目の前にある森は、夜になるとどんな様子をしているのでしょう。 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『もりのあさ』。チェコ在住の絵本作家・出久根育さんの最新作。その内容は……?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
女の子は、森の入口に立つ大きなくるみの木に話しかけます。
「あなたのはっぱは、いつも あまずっぱい いいにおい」
チェコ・プラハで自然を身近に暮らす絵本作家出久根育さんが絵本の中で描く森は、匂いや空気までも伝わってくるようなみずみずしい朝の森、そして女の子の想像の中で広がる密やかな夜の森の二つの姿。
たとえ訪れたことがなかったとしても、女の子には月明りに照らされた優しい夜の森の様子や出来事、会話の内容までありありと思い浮かべることができるのです。
何層にも重ねられた色彩の繊細で美しい絵を眺めながら耳をすましてみれば、読者もまた、女の子と一緒に森に包まれ自然と共鳴する体験ができるのかもしれません。
五感を使って味わう森の姿は
小さな森がうつりこむ朝露を見つけたり、鳥たちのおしゃべりに耳をかたむけたり、ギギギと風に揺れるトウヒと一緒に体を揺らしてみたり。五感を使って散歩を味わう女の子の姿は、まるで森と対話をしているよう。森が生活の一部になるって、こんな感じなのでしょうか。怖いばかりと思っていた夜の森だって、女の子の感性を通してみれば、優しく魅力的な場所に。「いつか自分も……」心の中に憧れの気持ちが生まれてくるような一冊です。
この書籍を作った人
1969年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業。『あめふらし』(パロル舎)で2003年BIB(ブラティスラヴァ世界絵本原画展)のグランプリ、『マーシャと白い鳥』(偕成社)で2006年日本絵本賞大賞を受賞。その他、絵本に『十二の月たち』『おふとんのくにのこびとたち』(以上偕成社)『おふろ』(学習研究社)『山のタンタラばあさん』(小学館)『ペンキや』『ワニ』(理論社)『はるさんがきた』『アントリ・ベリーのながいたび』(鈴木出版)『もりのおとぶくろ』(のら書店)、読み物の挿絵に『わたしたちのぼうし』『ルチアさん』(以上フレーベル館)「グリム童話集 上・下」(岩波書店)など多数の作品がある。チェコ・プラハ在住。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。