『たくさんの たくさんの たくさんの ひつじ』(ひさかたチャイルド)で絵本作家デビュー後、『うさぎマンション』(くもん出版)『109ひきの どうぶつマラソン』(ひさかたチャイルド)と話題作が続く、のはなはるかさん。画面いっぱいにこまかく描かれた絵の愛らしさに心を奪われます。
このたび『ペンギンクルーズ』(くもん出版)出版にあたり絵本制作の舞台裏を伺いました。ペンギンたちの旅の物語がぎゅっと詰まった、豪華客船の断面図はみどころ満点。貴重なラフ、緻密なカラー設計図も一挙公開。どうぞお楽しみください。
オセアノ・ペンギーノごうは、ペンギンたちのあこがれ。 ダンスフロアに映画館、プールまである大きな船に乗って、ペンギンの3匹家族と、52匹のペンギンたちが、南の島へのクルーズのたびにでかけます。 レストランでの食事に、楽しいショー、コケじまへの寄航、ダンスパーティー・・・船での一日はあっというま。 南の島でおもいおもいにすごしたあと、島の夜にまっていた特別な出来事とは・・・。 船の断面図が画面いっぱいにひろがり、ページをめくるごとに時間がうつりかわっていく展開は、みごたえ満点。観音開きや、さがしえクイズも楽しめます。 個性ゆたかなペンギンたちの旅の物語が、ぎゅっと凝縮された、何度読んでも発見がある絵本です。
●55羽のかわいいペンギンたち――楽しみ方のポイントは?
───全ペンギンあこがれの旅、ペンギンクルーズ! 船にはペンギン55羽が乗っているということですが、それぞれのペンギンたちが本当にかわいいです!
最初に船の内部が見える、観音開きのページはわくわくしますね。
主人公は、はじめて旅行に出かけるペンギン家族。お母さんペンギンとお父さんペンギン、そしてちびペンギンの3人家族です。まずは、ちびペンギンがどこにいるのかな?と探しながら見てもらえたらと思います。
船のお客さんには、子だくさんの大家族や、母と娘、年配夫婦、カップルもいます。ひとり旅の博士、探偵、サーフボードやウクレレを持ったペンギンもいます。
───ペンギンたちにはいろんな旅の目的がありそう。船の部屋をのぞきながら、それぞれの目的を想像して、一緒に旅行気分が味わえますよね。
ちびペンギンたち家族が泊まるファミリールームや、ちょっと豪華なスイートルーム、はしごで上り下りするベッドが並んだ相部屋もあります。操舵室には船長や航海士、厨房にはコックさんがいて、船の航海に必要な部屋があったり、ダンスフロアやプール、映画が観られる部屋もあります。
───みどり色のリュックを背負ったちびペンギンは、船内をあっちへいったり、こっちへいったり。絵探しが楽しいです。
ちびペンギンは、最初はダンスフロアに顔を出したと思ったら、次には図書室にいます。ちょうどそこにいた博士が、ある本を広げて、ちびペンギンたちに海と砂浜のページを見せているのですが……、実は後半のおはなしの伏線につながっていきます。
───海や島の秘密にくわしそうな博士が、船に持ち込んだ荷物にも注目ですよね。途中でドラゴンがあらわれて「えっ、いつ船に入ってきたの?」とびっくりしたのですが、ページをさかのぼっていったら、博士のカバンの中の、あるものから出てきていて……(笑)。
もともと博士は、「グアナじま」というイグアナがたくさん住む、不思議な伝説が残る南の島のことを調べていて、そのために「オセアノ・ペンギーノ号」に乗船したんです。この島には伝説の守り神がいると言われています。
さすがの博士も船の中でドラゴンを見たときはびっくりしていますね(笑)。
───小さなドラゴンから、航海中にだんだん大きなドラゴンになっていく変化が面白かったです!
登場人物の誰かを、ページを読み進めながら追っていくだけで、いろんなお話が楽しめますよね。のはなさんおすすめの注目ポイントを教えてください!
たくさんありますが、たとえばこんなところに注目してみたらいかがでしょうか?
♪ 注目してみよう☆
1、怪盗ルペンと探偵ペンムズを見つけよう! 怪盗ルペンは何を盗んだのか、それを追う名探偵ペンムズとの戦いはどちらに軍配が上がるのか?!
2、オバケが見えているペンギンが1羽だけいます。どのペンギンかな?
3、船の中で孵った卵は、何の卵?
4、相部屋で夜に何かを作っている、ネックレスを身につけたおしゃれなペンギン。このペンギンの旅の目的は?
5、カップルのペンギンの恋の行方は!?(船上プロポーズの場面を見つけよう!)
───船のお宝を盗んだのは、怪盗ルペンだったのですね! 家族や友だちと一緒に探したら盛り上がりそう。カップルの恋の行方も気になります(笑)。
今あげたのはほんの一部で、ペンギン全員で55羽分、ドラゴンやイグアナたち、船の周りの海を泳ぐ生き物たちも含めたらもっとたくさんのストーリーが織り込まれています。どこまで見つけてもらえるか、楽しみです。
●『ペンギンクルーズ』ができるまで【1】下準備。
───大人も子どもも楽しめる、見どころ満点の断面図絵本『ペンギンクルーズ』。どうして描くことになったのか、きっかけを教えていただけますか?
『うさぎマンション』を出版後、マンション断面図に続き、クルーズ船の断面図が楽しめる絵本が作れたらいいなあと思ったことからはじまりました。当初は『うさぎマンション』と同じ、うさぎの家族が主人公のイメージでした。
───『ペンギンクルーズ』ではなく「うさぎクルーズ」になるかもしれなかったのですね(笑)。
そうなんです。だから「RABBIT CRUISE」のラフも残っているんですよ。でも、ちょうどその頃、ツイッターで私が描いたペンギンの絵を見た編集者さんからご提案があって、ペンギンで描いてみることになりました。
最初に描いたのは、本来のペンギンの体の模様に近い、青っぽいペンギンです。それぞれの性格を描き分けるために、服を着せたりスカーフを巻いたり、カバンを持たせたりしてだんだんキャラクターを作っていきました。
───実際の絵本のペンギンは、黒っぽいペンギンですよね。
キャラクターと船の内装を同時に作りこんでいく中で、黒系のペンギンのほうが、マリン風のインテリアや、背景の海と空のブルーにまぎれることなくすっきり描けるので、途中から黒ベースのペンギンになりました。
同時に大型客船の資料をたくさん集めて読み込んだり、実際にクルーズ船を見に行ったりして取材を進めました。
───具体的にはどうやって制作を進めるのか教えてください。
まずはラフを描いて、ストーリーを煮詰めていきます。メインストーリー(本編のお話)や画面のレイアウトを決めていきます。同時に船室のレイアウトも決めていきます。クルーズ船の資料や取材をもとに、部屋を作りこみます。
メインのストーリーと同時に、登場キャラクターの個別の話も作るため、旅の目的や仕事内容などを考えます。
55羽の登場キャラクターの色を考えて、背景となる部屋にうまく合う色かどうか、性格に合った服になっているか、他の子と見分けがつくか、などを試していきます。まだペンギンたちの体はブルー系です。
キャラクターそれぞれの性格や旅の目的がかたまってきたら、断面図の中の個別ストーリーを決めていきます。
ペンギンが黒になってからも、カップルペンギンの服のデザインや、アスリートの紅白デザインなど、悩みながらひとつひとつ決めていきました。
着彩はコピックマーカーという油性ペンを使います。キャップに書いてあるのが色番号です。