【連載】第3回 小島慶子さんインタビュー
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『ぐりとぐら』の作者が贈る、ママたちへのメッセージ 『ママ、もっと自信をもって』出版記念連載日経BP 2016/09/29 【連載】第3回 小島慶子さんインタビュー
今回、インタビューをしたのはエッセイスト・ラジオパーソナリティーなど多方面で活躍をされているタレントの小島慶子さんです。現在、オーストラリアで2人の男の子の子育て真っ最中の小島さん。働くママである小島さんから見た、『ママ、もっと自信をもって』の魅力を伺いました。
●読みはじめてすぐに、涙が止まらなくなりました。
――『ママ、もっと自信をもって』を読まれた感想を教えてください。
中川先生の作品は、子どものころから大好きで、絵本もたくさん読んできたのですが、今回のようなご自身のことを書かれた文章を読むのは初めてでした。私、この本の「はじめに」を読みながら、ずっと涙が止まらなかったんです。
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――泣いてしまわれたんですか! それはなぜですか?
自分でもびっくりして、どうしてだろう……と考えました。実はこの本読む前に、仕事でママタレントさんたちのブログをたくさん目にしていたんですね。ブログの中に登場する方々の子育て姿がとても華やかで、眩しくて、でも私にはちょっと違う世界に思えました。今の若いママさんたちも、こういう豪華な子育てブログを見て、自分の子育てと比べて、愕然とし、疲れてしまっている方も多いんじゃないかなって。でも、『ママ、もっと自信をもって』の中の中川先生は子どもと関わることを何の飾り気もなく、純粋に楽しんでいらっしゃる。そういう方のつづる文章は、とてもストレートで暖かくて、私の心を優しく包んでくれたんです。
―― 中川さんの言葉が、涙があふれるほど温かく届いたんですね。
はい。それに私、『ママ、もっと自信をもって』を読み終わったときに、自分の母親に電話をしたんです。ご存知の方もいるかもしれませんが、かつて私は母と確執があり、ほとんど会わなかった時期がありました。そのことは『解縛(げばく):母の苦しみ、女の痛み』(新潮文庫)にも詳しく書いてありますが、母に電話をかけることも滅多にありません。それがなぜか、この本を読み終わったら「電話をかけよう」という気持ちになったんです。そのくらい、心を動かされました。
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――保母さんをされていたころをまとめた第一章は、華やかさよりも、子どもたちに真剣に向き合い、日々奮闘する姿が描かれていますね。
子どもを身近な存在として扱うのではなく、自分と対等な人間として信頼し、見守っていたことが、随所に感じられるんです。それと同時に、中川先生が、私たち母親のことも子どもたち同様に信頼してくれていることを感じました。
―― お母さんを信頼しているというと?
私は母親になって13年になりますが、当初はもちろん、今でも時々、社会の中で「母親」たちへの風当たりの強さを感じています。特に最近のお母さんたちは、子育てだけじゃなく、仕事もしなければいけない、家事もしなければいけない……。さらに外に出れば、子どもがちょっと騒ぐだけでも周りから眉をひそめられる。褒められたり、信頼される機会なんてほとんど訪れません。次世代を育てている女性たちが大事にされない社会。そんな中で、わが子にやさしく接することはとても難しい……。でも、中川先生は「子どもは子どもとして素晴らしいし、お母さんはお母さんとして素晴らしい」とこの本の中で何度も私たち母親を勇気づけてくれるんです。私は特に、「自分のいないところで、子どもたちがどれだけお母さんの自慢をしているか知ったら、ビックリすると思いますよ」(「はじめに」より)というところが大好きです。
――「お弁当作りはお母さんの腕の見せどころ」や「子どもはやっぱりお母さんがいちばん」という章の中でも中川さんは何度も伝えていますよね。
「お母さんが好きなのよ」って。自分の子どものことだから、知ってはいると思うんですけど、こうやって中川先生の言葉で改めて言ってもらえると、フッと心が軽くなるような、幸せな気持ちになりました。
――小島さんご自身も、息子さんを保育園にあずけて働きに出ている、ワーキングママさんですね。
そうです。私は息子たちが0歳ときから保育園にあずけていました。毎朝、子どもを保育園に連れていくとき、子どもは私と離れることを嫌がって泣きますよね。私も当然悲しくて、こんな目に合わせることが悪いことなんじゃないか、うちの子はかわいそうな子なんじゃないかと、すごく悩んだ時期がありました。でもそのうち、息子を園にあずけるときは、お互い「離れたくない!」と別れを惜しんで、迎えに行くときは「会いたかった!」手放しで喜ぶようにしたんです。そうすると、私が息子のことを大好きで、片時も離れたくないと思っていることが息子たちにも伝わるんですよね。寂しさを感じさせてしまうことに罪悪感を抱くよりも、寂しさを私と息子で分かち合っていることを伝えたいと思ったんです。
―― 『ママ、もっと自信をもって』の第二章は、働くママが抱える悩みを中川先生が答えるQ&Aコーナー。この中で、特に小島さんが共感した回答はありますか?
どの回答も、中川さんのお人柄がうかがえる、とても優しくて、毅然としたものでした。でも、その中でも特に<「保育園に預けるのはかわいそう」と母に言われたら>という質問に対する中川先生のお答えは、当時の自分を思い出して、とても救われたような気持になりました。この本に出てくる子育ての悩みを抱えるママさんたちとお会いして、お互いの思いを話し合いたいくらいです(笑)。
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――<「そういう意見もあるんだ」と聞き流しておけばいい>と。中川さんのように考える人が増えたら、働くお母さんは今よりももっと自信をもって職場で活躍することができると思います。
中川先生の考え方で、特に私が胸を打たれたのは、「人対人」の基本姿勢です。親子、夫婦、他人同士でも、人にはひとりひとり尊厳があって、それは尊ばれるべきものなのだと。それは、年齢、立場、性別にかかわりなく、みな平等であるということなのだと中川先生は書かれています。それを70年以上前から気づき、今も伝え続けている方がいる。時代は関係ないのだなぁ……と、改めて頭が下がる思いがしました。
――小島さんご自身の子育てと、この本に書かれている中川さんの体験は通じるところはありますか?
「人対人」の基本姿勢は、私も意識して息子と接していたので、同じだとうれしく思いました。それと家庭における、父親と母親と息子がそれぞれお互いを尊重しあって生活している「三権分立」の考え方。私がまだ未熟なため、ついつい、夫と息子のケンカに口をはさんでしまうこともあって、完全に到達していませんが、この考えもとても共感できると思いました。
――小島さんにとって息子さんたちはどんな存在ですか?
私が全身全霊をかけて、最も真摯に向き合っている人たちです。こんなに愛している人は他にはいませんよ、夫には申し訳ないですが(笑)。息子たちにはよく「どんな大勢の中にいたって、ママには君たち2人だけが輝いて見える」と伝えるくらい、2人は私にとって特別に見える。「親バカ」という幸せな病にかかっています。過保護という親バカではなく、”あなたはあなたでいることが素晴らしい”と本気で伝える親バカです。もちろん、息子たちが全く手のかからない優等生なわけではなく、大声で怒ることも多いですし、感情をあらわにして泣くこともあります。皆さんと同じように子育てと仕事の両立に、もがき、苦しみ、悩みながら日々を過ごしています。
――先ほど、読後に思わずお母さんに電話をしてしまったと伺いましたが、お母さんとはどんな話をされたのですか?
母はまるで少女のように私からの電話を喜んでくれました。そして、「今、あなたの本(『解縛(げばく):母の苦しみ、女の痛み』)を読んでいたところなの、そうしたら、あなたから電話がかかってきて、これってテレパシーかもね」って、本当に嬉しそうに話すんです。その言葉を聞いたとき、私は「母親」というものは本当に尊くて、子どもである「私」は、母に決して敵わないと痛感しました。
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―― お母さんは昔から今も変わらず、小島さんのファンなんですね。
電話で母の言葉を聞いて、私も改めて「ああ、母はいつまでたっても私のことが大好きなんだなぁ」と感じました。……と同時に、同じことが私と息子の関係にも言えるのだと思ったんです。今はまだ、息子たちは私のことを大好きだと態度でも言葉でも示してくれているけれど、もう少し大人になったときに、母である私のことを「面倒くさい」と感じるだろうと思うんです。
――なるほど……。
でも私は今日の母の言葉を聞いて、「親が子どもに与えたものよりも、子どもが親に与えたものの方が何十倍も、何百倍も大きいのかもしれない」と感じました。自分が与えるよりも多くのものを子どもから与えられたから、子どもの書いた本も、子どもからのたまの電話も心の底から嬉しいと感じているんだと。母が私に対してそう思っているだろうことに気付けたのも、この中川先生の本と出会えたからだと思います。
●私も、息子たちも中川先生の絵本が大好きです!
――先ほど、中川李枝子さんの作品を子どものころに読んでいたとおっしゃっていましたが、どんな作品を読んだか覚えていますか?
子どもと一緒に読んだものを含めると、『ぐりとぐら』、『そらいろのたね』、『ねことらくん』、『ももいろのきりん』、「とらた」シリーズ……などなど。中川先生の作品は息子も私も大好きで、とてもお世話になりました。
――絵本だけでなく、中川さんの書く、幼年童話も読まれたのですか?
――中川さんの作品とはじめて出会ったときのことは覚えていますか?
母が福音館書店の絵本が好きだったので、物心がつくころから、身近に絵本がある環境で育ちました。なので、初めて出会った作品と言われても覚えていないのです。でも、中川先生の作品を読んでとても面白かったという読書体験があったので、息子たちにも絵本が身近にある環境で育ってほしいと、小さいころから絵本の読み聞かせを続けてきました。
――息子さんたちと、今でも絵本の話をするのですか?
ときどき「小さいころにどんな絵本を読んだか覚えている?」と聞くことがあります。でも、息子たちが覚えている絵本は私が大好きで読み聞かせをした作品とは違っていて……。「なんで、そっちを覚えているの?!」ってびっくりすることも多いです(苦笑)。
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――小島さんはどんな基準で絵本を選んでいるのでしょうか?
『ママ、もっと自信をもって』の中でも中川先生が書いているように、「ママが好きだと思う絵本」をたくさん選んでいました。当時は、渋谷の大型書店の絵本売り場に頻繁に足を運んで、いろいろな絵本をチェックしては、息子たちに毎晩読み聞かせをしていました。改めて思い出すと、絵がきれいな作品やストーリーがシュールな作品、大人が何度も読みたくなる作品などが好きでしたね。『あたごの浦 讃岐のおはなし』(再話:脇 和子 絵:大道あや 出版社:福音館書店)という絵本を知っていますか? 「あたごの浦」に月夜の晩、海の生き物たちが一発芸をしに集まるんです。一発芸を見た生き物たちが「妙妙妙〜〜」と喜んで手を叩くのですが、それがとてもシュールで面白くて。絵も素晴らしく、大好きな絵本だったのですが、やっぱり息子たちはあまり覚えていなかったようで……。
―― たくさんの絵本を息子さんと楽しまれたのですね。読み聞かせをするときはどのように読んでいるのですか?
寝る前に読むことが多いので、息子たちの間に寝転んで、一緒に絵本を眺めます。私の読み聞かせは、演劇のよう。魔法使いの怖いおばあさんが出てくる場面は「怖いおばあさんだよ〜!」と声を変えて演じ切りました(笑)。
――さすがプロ! ずっと聞いていたくなっちゃいますね。
息子たちのお気に入りの作品は1日に何十回も「もう一回読んで!」とリクエストがあって、「いったい、いつ君たちは眠るの……?」と途方に暮れたことも、一度や二度ではないですね(笑)。
●小島慶子さんイチオシ! 中川李枝子さんの作品
●「今のお母さんの良いところ」を中川先生に聞いてみたいですね。
――おはなしを伺って、中川さんと小島さんの対談を見てみたくなりました。もし、中川さんにお会いする機会があったら、どんなことを聞いてみたいと思いますか?
伺ってみたいことはたくさんありますが、中川先生から見た、今のお母さんたちの良いところを聞いてみたいですね。
―― 今のお母さん限定ですか?
お母さんは、どの時代でも頑張っているというのは基本だと思います。ただ、私を含めて、今の母親は、「ダメだ」と言われることが特に多いように思うんです。子どもを預けて働きに出ていることや、スマホやタブレットに子育てをさせていることに対する批判ばかりを耳にします。今の時代のお母さんならではの良さもきっとあるはずなのに、私たち母親には届いてきません。だから、中川先生に今の時代だからこそのお母さんの良さを教えてほしいと思います。それと、お父さんについても聞きたいですね。本の中にも中川さんとご主人、そして息子さんとのやり取りが登場しますが、その姿がとても理想的に私の目には映りました。
――小島さんご自身は、今のお父さんたちに対して、どう感じていますか?
今のお父さんたちはとても大変な境遇に立っていると思っています。「イクメン」「イクパパ」が流行っていますが、今の若いパパたちが子どものころは、そんなお父さんは世の中に一握りしか存在しませんでした。多くの父親は子育てに参加せず、会社で働いてお給料をもらって家族を養っていれば、それで安泰だったんです。でも、今の若いパパは、会社で出世もしなければいけないし、家事をして、子育てをする……自分が子どもころ見たこともない「イクメン」であることを求められています。ロールモデルのないしんどさは今のパパ、ママたちは共通かもしれませんね。そういう立場に立たされたパパさんたちをどのように見ていらっしゃるのか、中川先生に聞いてみたいです。
――中川さんはどのように答えるのでしょうか……。今日は、ありがとうございました。
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