明治から戦後の経済成長期に活躍した近江商人。これまで多くの人がその優れた経営手腕や経済活動に注目し論じてきたが、本書は近江商人特有の生活態度(心的・倫理的原則や行動様式)に着目している。
近江から輩出され全国各地で長く栄えた近江商人の隆盛とその維持には、近江特有の価値観や文化・宗教が大きく影響している。
近江には寺院・神社、とりわけ浄土真宗系寺院が多く、村落社会の習慣や行動規範と深いつながりをもっていた。しかし真宗信仰が盛んな地域であればどこでも同様の商業活動の進展があったかというとそうではなく、近江という地域がもつ地理的条件や歴史的経緯の影響も大きい。
それらによって醸成された、近江商人の成功の基盤となった生活態度がどのようなものであったかを、実在した商人や商家の家訓・家憲に焦点を当て考察する。
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