●「ScratchJr」を使えば、オリジナルのゲームや動く絵本を作れるようになります!
───本の中で紹介されているアクティビティの中で、初めて「ScratchJr」に触れる子が使いやすいアクティビティを教えてください。
まずは1章の「すくらっちじゅにあを はじめよう」で基本的な動きに慣れていただいてから、アクティビティに挑戦するのが一番だと思います。男の子は、「じゃんぷげーむ(p82)」を作りたがる子が多いのですが、ゲームは初めての子には少し複雑です。なので、比較的簡単に達成感と充実感を得られる「うごくえほん」を最初に作ることをオススメしています。

───「うごくえほん」も作れてしまうなんて、すごいですね!
本の中に紹介されているキャラクターを動かすことや、背景を決めることなど、それまでやってきたことを応用すれば、比較的簡単に作ることができます。セリフの部分に文字を打ちこむのが苦手なお子さんには、録音ボタンを使って、セリフをお子さんの声で入れてもらい、再生することも可能なので、それほど複雑でないプログラムで、満足度の高い動く絵本が完成すると思います。
───絵本から自分の声が流れてくるのも、嬉しいですね。
───基本的な操作をマスターしたら、オリジナルの動く絵本をたくさん作って、自分だけのライブラリーができるんですね。自分で作った作品は、自分のiPad上でしか閲覧できないのでしょうか?
「ScratchJr」には自分の作品をメールで誰かの別のiPadに送ることができる機能があります。遠くに住んでいるおじいちゃんやおばあちゃん、単身赴任中のお父さんなどにお子さんが作った作品を贈ることができます。実はこの機能は最近追加された機能なんです。
───普段、なかなか会えない子どもやお孫さんとのコミュニケーションを深められる、素晴らしい機能ですね。
今回の機能の追加のように、「ScratchJr」は進化し続けるアプリでもあるので、新しい情報は、本が改訂する折に追加したり、本の専用ページを設けてフォローできるように考えています。

───本を出版した後のフォローもしっかり考えられているのですね。本の構成をよく見ると、カタカナを習っていないお子さんでも読めるよう、全ページひらがなで書かれているなど、本の作りについてもこだわりを感じました。
「ScratchJr」の使い方を伝える本なので、すべてひらがなにしなくてもよみがなをつけるなどして対応することも考えました。しかし、子どもが読めなくて飽きてしまわないように、配慮できるところは極力対応しようと思って全ページひらがなにこだわりました。
───ひらがな表記以外のこだわりにはどんなところがありますか?
「おうちのかたへ」という親御さんに向けた、「ScratchJr」の解説をページの上に移動させたのも、こだわりの一つです。お子さんをひざの上に乗せてこの本を読んだとき、解説部分が下にあると、後ろから読みにくくなってしまうんです。ひざにのせて読んだときに親御さんが読みやすい位置を考えました。

───なるほど。たしかに、解説が下にあると読みにくく感じますね。「たっぷ」や「だうんろーど」などの専門用語の説明があるのもとても親切だと思ったのですが、専門的な言葉ほど、小さい子に分かる表現で説明するのは難しくなかったですか?
「ことばのせつめい」部分はとても苦労しました。普段、ワークショップをするときは、最初の段階で、「いまから、この部分をタップします」といって、動作を伝えるのですが、文章ではどうやったら分かりやすいのか、とても悩みました。基本的には親御さんと一緒に「ScratchJr」を触ってもらいながら読んでいただきたい本なので、親御さんにワークショップの先生の代わりになっていただければ、良いのかなと思います。
───橋爪さんは、「ScratchJr」は子どもが一人で遊ぶものではなく、親御さんと一緒にプログラミングを体験するものだと考えているんですね。
はい。小さい頃の家族関係って、その後の子どもの成長にとても重要だと思っているんです。「ScratchJr」を使って、家族が今まで以上にコミュニケーションが取れるようになればいいと思い、多くの方に知っていただく活動を続けています。この本もその一助になれば嬉しいと思いながら作りました。
───ところどころ、ストーリーになっている部分は短い絵本を読んでいるようで面白かったです。本のラストで、にゃ〜こちゃんに「ScratchJr」を教えてくれたじゅにあが自分の星に帰ってしまうのは少し悲しくなる場面ですね。

この本のおはなしを頂いたとき、まず思いついたのが、導入とラストのおはなしの部分でした。私の文章からイラストレーターの石井裕子さんがかわいいキャラクターを生み出してくださり、とても楽しい絵本の形のストーリーを作っていただき、とても嬉しかったです。
───そのにゃ〜こちゃんと、姉妹編の「わくプロ」に登場しているニャタロ〜は、動画でも活躍しているんですよね。
そうなんです。アメリカでオンライン教育プラットフォームとして注目を集めている「Udemy(ユーデミー)」という学習サービスの日本語版の中で、『5才からはじめるすくすくプログラミング』のコースがあります。そこでは私が先生となり、にゃ〜こちゃんに「ScratchJr」を教える授業を動画配信しているんですよ。
───本と動画、どちらも見れば、「ScratchJr」についてより分かりやすく知ることができそうですね! 今回、おはなしを伺い、「ScratchJr」を使ったプログラミングは、家族のコミュニケーションを深めるために考えられていることを実感しました。最後に、絵本ナビユーザーのみなさんにメッセージをお願いします。

iPhoneやiPadなどが身近になっている現在、お子さんにはこういったデジタル機器をなるべく与えたくないと思っている親御さんも多いと思います。しかし、ただやみくもにデジタル機器を遠ざけてしまうことは、そこにあるお子さんに有効な創造力や表現力を伸ばすツールを使う機会も遠ざけてしまうことになるのはもったいない気がします。「ScratchJr」の中には、お子さんの創造力と表現力を伸ばす要素がたくさん詰まっています。「ScratchJr」を使って、たくさん楽しんで、たくさん遊びを作って、その中から得る学びをお子さんと一緒に体験していただけたらと思っています。
インタビュー・文: 木村春子(絵本ナビライター)