●舞台は『こびとづかん』と同じ。作品の原風景は石川県
───背景に描かれる、美しい田舎の風景が印象的です。
じぃじの家がある場所は、『こびとづかん』と同じです。2冊の絵本とだいたい同じような場所だとイメージしながら、山や川を描いています。
『みんなのこびと』の中では、『こびとづかん』より月日が経っているので、町ができている場所もあります。3冊見比べて楽しんでもらえたらいいなと思います。
「出発のまぎわ、じぃじは『桃尻子玉』というお団子を、僕の手にのせました」(『こびと桃がたり』より)
───ファンの子たちは、3冊の絵本をきっと夢中で見比べますよね。
ちなみに「桃尻子玉」というお団子はいったいどんな味なんでしょう……? 気になります(笑)。
「桃尻子玉」はカクレモモジリのおしりから滲み出る液体を、まぜこねて、じぃじが作ったお団子です。やわらかくておいしいんですよ。カッパに「しりこだま」を抜かれるというじゃないですか。あれが桃味だったらいいなと思いながら描きました(笑)。
前にも話したことがあるんですが、僕にとっては祖父の家があった、石川県の輪島と、幼い頃からずっと育った同じく石川県の鶴来(つるぎ)町が「コビト」が生まれる上で原風景のような場所になっています。
絵だけでも楽しめるようにしたいと配慮して描きましたが、3冊の絵本を通していろいろ考察しながら読んで楽しんでもらえたらいいなと思っています。
●『こびとづかん』以来、編集長とは十数年の付き合いです
───編集長さんとは、制作時にけっこうやりとりするのでしょうか?
そうですね。最初の『こびとづかん』のときからの付き合いなので。毎回ああでもないこうでもないと言いながら話し合っています。
───お付き合いが10年以上だと、もう阿吽の呼吸みたいなものはありますか?
いえ、毎回戦いですよね。お互いああしたいこうしたいと、ディスカッションを重ねながら作っていきます。でもお話しに深みを与えてくれるのはやっぱりたいてい編集長なんですよね。悔しいけれど(笑)。
たとえば最初に僕が出した案を、よりシンプルな形にするように提案してくることはよくあります。やはり僕も最初のイメージに思い入れがあったり、イメージが固まっているときもあるので、それをなくすのは勇気がいります。でも、そっか、なくす方法があるのかと。僕、良いと思えばわりと人の意見をちゃんと聞く方なんですよ(笑)。
僕の絵を10年以上ずっと見ている編集長にも「やっぱり絵が変わったねえ」と言われました。11年間色々経て、今の絵や物語になっているので、今回『こびと桃がたり』を描けてすごくよかったなと思います。
───子どもたちの反響が楽しみですね。
楽しみですね〜! 子どもに限らず大人の方たちの反応も聞きたいですね。夏以降にはあちこちで原画展を行う予定です。今回、この『こびと桃がたり』の原画も初公開したいなと思っています。作品がどういうふうに描かれているのかみなさんにお見せできたらなと思っています。原画を見ないとわからないようなことがいっぱい発見できると思います。そして原画の持つパワーを感じてほしいですね。
───最後に、絵本ナビ読者にメッセージをお願いします。『こびと桃がたり』をどんなふうに楽しんでほしいですか?
読み物としてはもちろんですが、この絵と世界観を楽しんでほしいなというのが一番の思いです。物語としては、ちょっと妄想がかき立てられるような、心に残るものになったらいいなと。読んだ皆さんが想像する余地は残すようにしています。
あと意識しているのは「ツッコミどころ」です。「この表情!」とか「またお前かいっ!」と見てるほうが言っちゃう、参加しながら読めることを常に目指して意識してます。
絵を見て大笑いじゃなく、クスッとしたり、ニヤニヤ笑って見られるものにしたいと、1ページ1ページ気にしながら描いています。
毎回僕は、新作が「最高傑作」でありたいと思っているのですが、おかげさまで今回も「最高傑作ができたな」と思っています! 見てくださった方からどんな感想がもらえるのか僕自身がすごく楽しみにしています。
───ありがとうございました。
なばたさんの愛犬、パグのツーちゃん。
●コビトに会いたい方は石川県へ!
インタビュー内でも触れたなばたとしたかさんの出身地、石川県白山市のつるぎ地区では、2018年3月に「こびとづかんの町つるぎ」宣言をし、「こびとづかん」を核とした町おこしを行なっています。
「つるぎこびとマップ」でたどる「スタンプラリー」や、カクレモモジリをかたどった和菓子の販売、郵便局では「こびと消印」、鶴来信用金庫では「こびとづかん通帳(2種)」まで!
「コビト」に出会いたい方は、ぜひチェックしてみてください。
http://kobitos.com/ja/tsurugi/
「つるぎこびとマップ」(左)と、鶴来信用金庫の「こびとづかん通帳始めます」のお知らせ(右)。
●桃味のお酒も…
左は、あらごし桃限定樽 300ml(梅乃宿酒造)
「こびとづかん」10周年コラボレーション企画の桃のお酒だそう。大人はちょっぴり飲んでみたくなりますね。

インタビュー:掛川晶子(絵本ナビ編集部)