絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  新潟の老舗書店が出版した知育絵本「ろっぺいブックス はじめてのえほん」刊行記念インタビュー

地元の定番絵本として長く愛されるシリーズに育てていきたい

───「ろっぺいブックス」は、親子で絵本を楽しむための工夫がいっぱいだということが、お話でよくわかりました。実際に発売した後、店頭での反応はいかがでしたか?

中山おかげさまで、新潟では「萬松堂が作った絵本が欲しい」というお客さまが多く、「地元の書店が作った絵本はどんなものだろう」と思って手に取ってもらえています。

───住んでいる地域ということで関心を持ったり、応援したりする方も多いんですね。

中山全国規模ではロングセラー絵本はたくさんありますが、新潟の地元定番絵本というのは、これまでなかったんです。だから「ろっぺいブックス」という名前の絵本を、新潟の子どもたちが読んで大きくなり、それが次の世代へと繋がっていくような絵本になったらいいなと思いますね。

───実際に絵本を制作してみた感想はいかがですか?

中山作り手の苦労がとても良くわかりました。内容に関して「こういう風にしたい」という意見を出したときに、子どもに読んであげるための工夫をしなくてはいけないとか、著作権の問題をクリアしなければいけないなど、「そんな細かい所まで気を遣っているんだ」ということに、気づくことができたんです。
本を作る前は、お客さまに対して「この本は売れています」くらいのセールストークしかできなかったのですが、内容に一歩踏み込んで「この本はこういう人が作ったんですよ」とか「こういう人たちが買っていますよ」という風に伝えやすくなりましたね。
直接お話して説明できなくても、チラシやポップを作って、とにかく作り手の思いを伝えようという気持ちが前面に出てくるようになりました。

───売り場のスタッフの反応はどうでしたか?

中山売り場のスタッフも同じ気持ちですね。コーナーづくりやポップも、みんなで考えて作りました。第1弾を作ったら、次は第2弾、第3弾と作るごとに不思議と熱が出て来たので、挑戦して良かったなと思います。
書店員として、出版社の人とは長い付き合いがあるのに、実は作り手と売り手では大きな隔たりがあったことにも気付けました。その結果、「ろっぺいブックス」シリーズ以外のすべての書籍に対して、作り手の思いを汲み取った売り場を作ろうという明確な目的と、熱意が芽生えて。そんな風に、作り手の立場に立てるようになったのは、大きな収穫でした。

───そうだったんですね。先ほど第2弾、第3弾制作のお話が出ましたが、それぞれの内容について教えていただけますか?

中山第2弾のラインナップは、写真図鑑の『どうぶつの おやこ』と『しんかんせん だいしゅうごう!』、知育絵本の『かばくん いま なんじ?』と『はじめての A・B・C』です。

───写真を使った絵本がありますね!

中山そうなんです。図鑑は、第1弾との繋がりを意識して、イラストから本物の写真へステップアップするイメージで作りました。『かっこいい のりもの』を読んだら、次は『しんかんせん だいしゅうごう!』という風に、「ろっぺいブックス」シリーズの中でより成長できるように作っています。新潟駅は上越新幹線の発着駅ですし、今はいろんなデザインの新幹線がたくさんあって話題になっているということも、考慮しました。また、親子での会話も重視して、イラストキャラクターも登場させています。

───時代の動きも、積極的に取り入れているんですね。動物の方は「親子」というテーマになっていますが、これはどうしてでしょうか?

中山第1弾の『どうぶつえん だいすき』でこんな動物がいるんだと知ってもらった後、第2弾の『どうぶつの おやこ』で、実物の迫力や質感、生態を知り、さらに動物と人間も、親と子や家族は同じような暮らしやしぐさをしているということを、伝えたいと考えました。人間も動物も、お母さんのおっぱいを飲んで大きくなって、仲良くしたりときにケンカをしたりしながら成長していくことを、動物の親子の写真で感じてもらいたいなと。

───動物たちの親子のいろんな表情が楽しめる1冊ですね。 次は知育絵本の『かばくん いま なんじ?』ですが、時計の読み方と1日の暮らしのリズムがテーマなんですね。

中山『かばくん いま なんじ?』は、朝起きて、お昼にはごはんを食べてといった、1日の生活の流れを紹介し、そこに時計の読み方と時間の観念を組み合わせる内容になっています。かばくんの1日を絵本で見ながら、「かばくんは2時にお昼寝しているけれど、自分は何時にお昼寝しているのかな?」と、時間と時計を意識しながらおしゃべりして、時計の読み方もわかるようになるといいですね。
また、夜8時に寝ているかばくんより遅い時間に寝ていると、「ちょっと夜更かしさんかも」と、親子で1日の生活時間や習慣の見直しをする材料になればいいなとも思います。

───最後は、英語の絵本『はじめての A・B・C』です。第1弾の『かぞえてみよう 1・2・3』では、英語は要素の1つでしたが、第2弾で絵本のテーマにしたのは、なぜでしょうか?

中山萬松堂は、昔から学校の教科書も取り扱っているので、「萬松堂は教科書販売店」というイメージを持っているお客さんがたくさんいらっしゃいます。また、教科書販売を通じて、これからの学校教育で英語が重要になってくるという流れを強く実感しています。2020年から導入される小学校3年生からの英語学習の準備として、英語の絵本を読み始めるお子さんも出てくるはずですので、絶対に英語の絵本を作りたいと思っていたんです。
そうは言っても、あまり難しい内容には踏み込めないので、イラストを見ながら英語の単語を想像して言葉に出してみることで、アルファベットに親しむ「ファーストブック」をあえてラインナップに入れました。

───良く見ると、左のくまくんがいるイラストの中に、右で紹介している2つの絵が入っていますね。

中山そこも工夫したポイントです。単語は1つではなく2つ出すこと。また右ページを隠して、左ページの絵から同じものを探すという遊びもできます。また、左ページのくまくんとくまこちゃんがキャラクターとして子供たちと同じような日常生活をしながら、英単語が登場する点にもこだわりました。身近な物や行動を題材にして、会話に出てくるカタカナ言葉を英語にすると覚えやすいかなと考えた結果です。

───第2弾の4冊にも、それぞれ本の使い方を意識して作っているんですね。
第3弾の発売も年内ということで、今後は出版社としてどんな本を作って行きたいと考えていますか?

中山もちろん、シリーズを長く続けて行きたいですね。それと、「ろっぺいブックス」を作った理由としても挙げたのですが、子どもたちが「ろっぺいブックス」を読んで大きくなって、本好きとして書店に戻ってくるというサイクルを作っていきたいですね。まずは新潟から、そして全国へ広げていけるように、がんばりたいです。

───最後に、絵本ナビ読者へのメッセージをお願いします。

中山地方の小さな書店でも、出版社を立ち上げて、自分たちで本を作ることができました。そのチャレンジができたこと、売り手と作り手双方の経験ができたことは、すごくありがたいことだと思っています。私たちがチャレンジしたように、ほかの地方の書店さんも出版を手がけることに繋がり、業界全体が盛り上がってくれるとうれしいなと思っています。

───ありがとうございました。


萬松堂本店1階の児童書売り場に作られた、「ろっぺいブックス はじめてのえほん」のコーナー。ポップやチラシには、作り手と売り手両方の熱い思いが詰まっています。

取材・文 中村美奈子(絵本ナビ)
写真 所靖子(絵本ナビ)




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