
ブリジェットがイタリアに住んでいたとき、ばあやもそこへやってきて、太陽のあふれる国イタリアについてのさまざまなお話をしてくれました。グリーナウェイ賞をうけたアーディゾーニのさし絵が楽しい。

1970年、石井桃子訳で刊行。原書は1925年刊行。昔のヨーロッパの愉快な話、考えさせられる話などが11話。巻末に訳者によるあとがきで、作者と翻訳者の交流なども紹介されている。
挿絵(エドワード・アーディゾーニ)が素晴らしい。行ったこともない国の、見たこともない時代の人たちの様子を生き生きと、美しく描いている。雰囲気満点。
お話は、もちろん大人が書いたものだが、まるで好奇心にあふれた純朴な少女が見聞きしたことをそのままお話しているよう。あとがきに作者ファージョンの生い立ちが簡単に紹介されているが、それを読んで納得した。年齢不詳の、永遠の少女だったらしい。
訳者は昭和の時代にこれらの作品を翻訳し、インターネットなど便利な道具もなく、今ほど外国のことが知られていない時代に、手間暇かけて苦労して、丁寧に、子どもたちに良いものを提供できるように真心で仕事をした。面白いのは、翻訳で一番苦労したのが「パスタの名前」。パスタが出てくる楽しいお話があるが、その中で印象に残る多くの変わった名前のパスタが出てくる。イタリアには無数の種類のパスタがあるが、いったいどんな形のパスタなのか?
麺なのか?マカロニなのか?平べったいラザニアのようなものなのか?などなど、想像力を掻き立てられる。
パスタがなくて国民全員が困る、という、いかにもイタリアらしい愉快な話は、こういった1つ1つの見知らぬ外国の食品の名前を、あれこれ苦労して翻訳したことで、ようやく日本語版として私たちが読むことができるようになった。
そんな本文に関連したエピソードも楽しい一冊。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
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