お気にいりのABCのもようのワンピース。でも、戦争がはじまって、ABCは敵の言葉だから、といって、禁止になった。だからって、こんなへんな色にそめちゃうなんてぇ。(太平洋戦争時の静岡にて「わたしの毎日」より)
「とにかく防空壕へ!」お母さんに急かされて家の横の防空壕に、はいろうとした。そのとき、妹が、ちがう方向に走りだしたんだ。「そっちじゃない!」低空飛行の戦闘機がこっちにむかって飛んでくる。「ノブちゃん、あぶない!」(1945年樺太にて「妹と機銃掃射」より)
10歳のおれ、12歳のわたし、7歳のぼく……。太平洋戦争中、子どもたちは、日々、何を感じ、どのように暮らしていたのか。
「いま聞かなければ、無かったことになる戦争体験がある」
そんな思いから2022年にスタートしたというこの企画。子どもの頃、沖縄、広島、長崎、満州、樺太、北海道、東京、岩手、静岡、三重、長野、茨城、山梨の各地で、空襲、原爆、地上戦、引き揚げ、疎開を経験した方々、中国残留邦人の方、総勢17名にインタビューを実施。戦争中に見た光景や経験を、当時の口調そのままに、絵と文章で紹介。生きた声を伝える65編。一つのエピソードが一つの見開きに収まり、総ルビ対応、それぞれのページに注釈も入り、どのエピソードからも読むことができるようになっています。
現地で何度も確認をとりながら完成させていったという場面の数々からは、「何としても証言された方々の記憶の風景を再現させたい」という作者堀川理万子さんの気迫が伝わってきます。と同時に、どんなに理不尽で困難な状況でも生き抜く子どもたちのパワーや、親しみやすさを感じることもできるのです。
あの日あの瞬間に、誰かと交わした会話。目の前に繰り広げられる光景を見ながら感じた気持ち。自分が得意だったこと、苦手だったこと。そこには子どもたちの等身大の心の声が存在しています。
今を生きる私たちが、戦争を「自分ごと」として捉え、考える。その入口として、この一冊が大きな役割を担ってくれるに違いありません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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太平洋戦争中、子どもたちは、日々、何を感じ、どのように暮らしていたのか……。子どもの頃、沖縄、広島、長崎、満州、樺太、東京、北海道、静岡、三重、長野、山梨、茨城などの各地で、空襲、原爆、地上戦、引き揚げ、疎開などを経験した方、中国残留邦人の方にインタビュー。子どもたちの語りを通して、戦争の理不尽とリアルを伝える絵本。数年後には失われるかもしれない、生きた声を伝える65篇。
ひとつのエピソードを絵と文章で1見開きで紹介。どのページでも、興味を持ったエピソードから読むことができる。注釈を同一ページに記載。総ルビ。
著者メッセージ……17人の子ども(だった方々)が見た光景や経験をかきました。その困難な時代を生き抜いた彼らは、生きるパワーに満ちていて、勇気を与えてくれます。でも、戦争が「現在」の問題でもあるいま、私たちはどう考え、どう行動したらいいのか、この本とともにいっしょに考えてくれませんか?
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