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2025.10.06

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日常の記憶から見る戦争『いま、日本は戦争をしている ―太平洋戦争のときの子どもたち―』【NEXTプラチナブック】

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2025年8月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

太平洋戦争中、子どもたちは、日々、何を感じ、どのように暮らしていたのか……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは『いま、日本は戦争をしている ―太平洋戦争のときの子どもたち―』。子どもたちの語りを通して、戦争の理不尽とリアルを生きた声で伝える65篇、どんな内容なのでしょう。

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

日常の記憶から見る戦争『いま、日本は戦争をしている ―太平洋戦争のときの子どもたち―』

10歳のおれ、12歳のわたし、7歳のぼく……

  • いま、日本は戦争をしている  ―太平洋戦争のときの子どもたち―

    みどころ

    お気にいりのABCのもようのワンピース。でも、戦争がはじまって、ABCは敵の言葉だから、といって、禁止になった。だからって、こんなへんな色にそめちゃうなんてぇ。(太平洋戦争時の静岡にて「わたしの毎日」より)

    「とにかく防空壕へ!」お母さんに急かされて家の横の防空壕に、はいろうとした。そのとき、妹が、ちがう方向に走りだしたんだ。「そっちじゃない!」低空飛行の戦闘機がこっちにむかって飛んでくる。「ノブちゃん、あぶない!」(1945年樺太にて「妹と機銃掃射」より)

    10歳のおれ、12歳のわたし、7歳のぼく……。太平洋戦争中、子どもたちは、日々、何を感じ、どのように暮らしていたのか。

    「いま聞かなければ、無かったことになる戦争体験がある」

    そんな思いから2022年にスタートしたというこの企画。子どもの頃、沖縄、広島、長崎、満州、樺太、北海道、東京、岩手、静岡、三重、長野、茨城、山梨の各地で、空襲、原爆、地上戦、引き揚げ、疎開を経験した方々、中国残留邦人の方、総勢17名にインタビューを実施。戦争中に見た光景や経験を、当時の口調そのままに、絵と文章で紹介。生きた声を伝える65編。

    一つのエピソードが一つの見開きに収まり、総ルビ対応、それぞれのページに注釈も入り、どのエピソードからも読むことができるようになっています。

ぽつっ。
ひたいになにか落ちてきた。
「お母さん、雨ふってきた」
「雨じゃないわ、これ、油よ。町がよく燃えるようにアメリカ軍が油をまいているって聞いたわ」

(1945年(昭和20年)3月10日「東京大空襲」より)

お気にいりのABCのもようのワンピース。でも、戦争がはじまって、ABCは敵の言葉だから、といって、禁止になった。だからって、こんなへんな色にそめちゃうなんてぇ。

(太平洋戦争時の静岡にて「わたしの毎日」より)

「戦争はおわったんじゃないのか? なのに、なんでおそうんだ?」
「とにかく防空壕へ!」お母さんに急かされて家の横の防空壕に、はいろうとした。そのとき、妹が、ちがう方向に走りだしたんだ。

(1945年(昭和20年)8月22日樺太「妹と機銃掃射」)

この絵本の表現のもとになっているのは、戦争の記憶が日常の記憶だったという子どもたちの声。

終戦から80年、取材をされた方々は80代後半から90代。現地で何度も確認をとりながら完成させていったという場面の数々からは、「何としても証言された方々の記憶の風景を再現させたい」という作者堀川理万子さんの気迫が伝わってきます。と同時に、どんなに理不尽で困難な状況でも生き抜く子どもたちのパワーや、親しみやすさを感じることもできるのです。

あの日あの瞬間に、誰かと交わした会話。目の前に繰り広げられる光景を見ながら感じた気持ち。自分が得意だったこと、苦手だったこと。そこには子どもたちの等身大の心の声が存在しています。

今を生きる私たちが、戦争を「自分ごと」として捉え、考える。その入口として、この一冊が大きな役割を担ってくれるに違いありません。

 

編集長のおすすめポイントは……

平和が失われるということは

終戦後80年。それはそんなに遠い昔ではありません。言うまでもなく、戦争を歴史として理解することは大事なことですが、同時に、多くの子どもたちが戦争を目撃し、言葉にならない体験をしてきたという事実も忘れてはなりません。平和が失われるということは、日常が一変するということ。大切な人がいなくなってしまうかもしれない、ということ。子どもたちの想像力をもってすれば、この絵本に描かれていることから、きっと多くのことを読みとっていってくれるのではないでしょうか。

この書籍を作った人

堀川 理万子

堀川 理万子

1965年、東京都生まれ。東京芸術大学美術学部デザイン科卒業、同大学院修了。絵画作品による個展を毎年開催するほか、グループ展、出版など幅広く活躍。絵本に『ぼくのシチュー、ままのシチュー』(ハッピーオウル社)、『おへやだいぼうけん』(教育画劇)、『げんくんのまちのおみせやさん』(徳間書店)、『権大納言とおどるきのこ』(偕成社)、挿絵作品に『バレエ名作絵本 くるみわり人形』(石津ちひろ/文、講談社)など多数。

堀川 理万子 作品一覧

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

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