えがお みつけた
- 訳:
- おがわ ひとみ
- 出版社:
- 評論社
せかいいち、笑顔が素敵な人がいました。その人は……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは『えがお みつけた』。女の子がもう一度笑顔をとりもどすまでを描いたこの絵本、どんな内容なのでしょう?
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
その人の笑顔は、かわいくて、優しくて。
愛にあふれている。
イギリス出身で、子どもの本の編集者でもあるフェイ・エヴァンズさんの絵本デビュー作となるこのお話は、大切な人を失い、何を見ても、どこに行っても、心から楽しむことができなくなった女の子が、もう一度笑顔をとりもどすまでを描いています。
世界に残した大きな穴。
言葉はとてもシンプルだけれど、描かれるその笑顔が明るく豊かであればあるほど、見つめる女の子の表情が嬉しそうであればあるほど、その悲しみの深さを実感してしまいます。ベルリン在住の画家アイシャ・クリンガさんが描く二人の様子は、それほど魅力的なのです。
でも、だからこそ、まわりの大人たちが、ゆっくりと時間をかけて、あたたかく見守っていくことが大切なのでしょう。笑顔というのは、こんな風に、ふいにやってくるものなのかもしれません。
前を向いて歩けなくなったことがある人に。この世界に自分は一人だと感じてしまった人に。どうしても忘れたくない時間がある子の元にも。この明るく力強い一冊が届きますように。
忘れないでいられること
大切な人をなくした時、その悲しみとどう向き合えばいいのでしょう。これは大人になっても答えが出ない問題です。ましてや、小さな子どもたちの心を思うと、想像するだけで胸が痛みます。けれど、何よりも大事なことは、大切な人の思い出やぬくもり、そして大好きだった表情をいつまでも忘れないでいられることなのではないでしょうか。その上で、ゆっくり少しずつ、自分の中から生まれてくる新しい感情と向き合っていくことができれば……。「グリーフケア」の絵本の存在が、少しでも子どもたちの心に寄りそってくれることを願います。
この書籍を作った人
イギリス出身の作家・編集者。子どもの本の編集者として働きながら、絵本を執筆。本書『えがお みつけた』が、デビュー作にあたる。
この書籍を作った人
ベルリン出身の画家。何作もの絵本やコミックを発表している。『えがお みつけた』のほか、読み物のさし絵にKami und Mikaシリーズなどがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。