じーっ
- 作:
- 中山 信一
- 出版社:
- 偕成社
外を「じーっ」と見つめている男の子。いったいなにを見ているのでしょう? ページをめくると……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『じーっ』。登場するのは、ささやかだけれど記憶にのこる場面の数々。いったいどんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
「じーっ」。
この言葉から思い出されるのは、日常のほんの些細な隙間の時間に訪れる、自分だけの幸福感。
本人は意識しているのか、していないのか。視線の先にある爽快な景色に読者も思わず惹きこまれます。
ああ、子どもの頃は、こんな風にただぼーっと、好きなものを好きなだけ、気が済むまで見ていられる……という感覚を持っていたんだなあと改めて思うのです。
実体験からもイメージされているという、作者の中山信一さんが絵本の中で描く景色には、気持ちいいほどシンプルだけれど丸みのあるフォルムがあたたかく、いつまでも見ていたくなる心地良さがあります。子どもたち4人でじっと水たまりを囲んでいる様子の愛らしさといったら!
この尊い時間を決して邪魔してはいけないのだと、私たち大人は絵本を読みながら決意するのです。
上を向いたり、下を向いたり
「ぼーっ」とも、「じっと」とも、ちょっと違う「じーっ」。そこには、ずっと見ていられる心地良さ、観察していたくなるような変化、あるいは想像がふくらんでいく要素みたいなものがあるのかもしれませんよね。絵本を読んでいて思い出すのは、例えば母が来ていたワンピースの柄、車の窓ガラスの水滴の形、アリの巣の入口付近の忙しさ……案外、今でもその光景をくっきりと思い出せるから驚きです。上を向いていたり、下を向いていたり、みんなで一か所を見つめていたり。今度そんな子どもたちを見つけたら、そーっと一緒にのぞいてみようかと思うのです。
この書籍を作った人
1986年神奈川県生まれ。イラストレーター。広告や書籍、アパレルグッズなど幅広い分野のイラストを手がける。絵を担当した絵本に『うそ』(主婦の友社)、『音でよむ昔ばなし1 ももたろう』(文響社)などがある。またラッパーとしても活動しており、HIPHOPユニット「中小企業」やソロによる音源、アルバムも発表している。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。