朗読詩 ひろしまの子
- 詩:
- 四國 五郎
- 絵:
- 長谷川 義史
- 出版社:
- BL出版
絵本紹介
2025.10.06
「あなたのとなりを見てください ひろしまの子がいませんか」。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは『朗読詩 ひろしまの子』。戦後80年の節目の年、長谷川義史さんの絵により完成したこの絵本。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
絵本の中からこちらをじっと見つめる、「ひろしまの子」。私たちが喜びにあふれ、歌いたくなるような時も、何もかもうまくゆかず、うちしずんでいる時も。すんだひとみでじっと見つめているのです。
終戦後80年、世界では今も争いが続いています。この節目の年に絵本作家長谷川義史さんが「今を生きる人たちに伝えなければ」と決意し、絵本化。詩の中で繰り返し登場する被爆死した子どもたちを描くために取材やスケッチを繰り返し、完成させた渾身の一冊です。
「ひろしまの子は 丸顔です
すんだひとみを しています
あなたを じっと見つめています」
登場するのは、被爆前の子どもたちの笑顔。戦争が始まる前、原爆が投下される前には、それぞれの人の生活があり、子どもたちも日常を生きていたのです。それが一瞬で奪われてしまうのが戦争なのです。
「戦争は絶対にしてはいけない」
私たちは、すぐ隣にいるひろしまの子を思い出し、そのひとみを見返し、約束しなければなりません。あやまちは決して繰り返さないこと、決して許さないこと。絵本だからこそ届く、強い思いというものがあります。広く読まれていくことを願います。
当事者ではないからこそ
詩の中で、繰り返し描写される子どもたちの死。広島に原子爆弾が落とされ、多くの人が被爆死したことは誰もが知る事実。けれど、そのことをどう捉えればいいのか、当事者ではない自分たちにできることはあるのだろうかと、茫然とした気持ちになってしまう人も多いはず。その思いの一端を引き受けてくれるのが、この絵本なのではないでしょうか。子どもたちの笑顔を見ながら、何を思い、何を考えていかなければならないか。バトンを受け渡されているような気持ちになるのです。
この書籍を作った人
画家・詩人。1924年広島県三原市生まれ。10歳より広島市に暮らす。20歳で徴兵され、満洲で従軍、敗戦後は3年強にわたりシベリアに抑留される。帰国して最愛の弟の被爆死を知る。以後、生涯をかけて、反戦平和のために絵と詩で膨大な作品をかき残す。主な活動に、峠三吉らとの「われらの詩(うた)の会」による「辻詩(つじし)」や『反戦詩歌集』『原爆詩集』に絵や詩で参加、「広島平和美術展」の創設、「市民が描いた原爆の絵」プロジェクトへの全面協力などがある。著作に『四國五郎平和美術館 @A』(汐文社)、『広島百橋』(春陽社出版)、『戦争詩』(藤原書店)、戦争とシベリア抑留の1000頁にわたる貴重な画文集『わが青春の記録』全2巻(三人社)など。また『絵本おこりじぞう』(金の星社)をはじめ多くの絵本の表紙・挿画を手がける。2014年永眠。
この書籍を作った人
1961年大阪府藤井寺市生まれ。『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』(BL出版)で絵本デビュー。『いいからいいから』(絵本館)『へいわってすてきだね』(ブロンズ新社)『おならまんざい』(小学館)など、ユーモラスでおおらかな絵本が大人から子どもまで大人気。また、社会派なテーマにも意欲的に取り組んでいる。『おたまさんのおかいさん』で第34回講談社出版文化賞絵本賞、 『ぼくがラーメンたべてるとき』で第13回日本絵本賞と第57回小学館児童出版文化賞、『あめだま』で第24回日本絵本賞翻訳絵本賞、第2回やなせたかし文化賞など多数受賞。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。